北の国から2011/フィンランド的憂鬱 @渋谷WWW

「明日ボアダムスの”77BORDORAMS"のメンバーだったうちの3人が渋谷でやるからいこー」
とともだちからメールが。無論いくことにする。六本木でエスプレッソマシンをしめ金をしめモップなどかけた後、チャリンコ立ちこぎで渋谷へ。

昔から渋谷で一番のシャレ映画館、シネマライズには何度も来たことがあったけど、その地下の、おそらく試写室を活用してのクラブ営業部には初めて来た。行ってないけどベルリンみたいでとてもいいと思った。旅つながりのともだち3人と、こないだからその仲間に加わっている、場違いに王子様みたいなフィンランド人のLがいて、相変わらずぜんぜん浮かない顔をしている。ドラムが始まってやけにオシャレ率の高い客層が60年代っぽくノリだすが、ボアドラムにつられてやってきたアホちゃんなわたしらにはどうしてもこのダーキーで、なんつーかガレージでけだるい感じのリズムがいまいち合わず、踊るつもり満々で短パンにサンダルでスミノフアイスを2本あけてもタラとも汗かかない自分もみんなと一緒に途中で出て、そのへんで飲み直すことにする。

ところで自分はこの夏失恋したが、ふられた相手が勉強中で、東京から北の国へ行ってしまった。Lは、やはし北の国のムーミンのふるさとから一体なんの因果かその学生のいたとこへ入れ替わりにやって来た交換留学生である。先ほどのDJセットの時も、踊ってるかと思えば棒立ちになって、どーした、と言うと「(日本に)何しに来たのか、分かんなくなってしまった・・・」などと唐突に呆然としている。24さいなんて誰だってそんなものだ。何がしたいかハッキリしてる人なんてごく少数だよというと、「でも大学では、日本の学生達は猛烈に研究をして熱心にその話ばかりしていて、留学生は留学生同士でグループを作ってやはり熱心で、お互いに交わらず、みんな頭良くて話むづかしいから自分はそのどちらにも入れないのだ・・・」とすげえ流暢な日本語で悩んでいる。ガールフレンド作ってデートでもすれば?というと、「実は先週クラブで会った赤いスカートの女の子と、週末デートなのだが、顔を覚えていないのだ・・・彼女が青いスカートをはいてきたらどうしよう・・・(真剣)」えーとえーと、じゃあ勉強に精出すのはどう?専門なんだっけ?
「室内の空調の制御方法・・・エアコンとか・・・」

当人はほんとに悩んでるのだろうが、はたから見てると笑えることってある。「エアコンとか・・・」のあと堪えられず大笑いしてしまったが、何を一体笑われているのか理解できずにいる憂鬱な王子は、この日みんなに「スナフキンフィンランド語の名前は”のーしゅか・もいっくねん”。”のーしゅか”は嗅ぎタバコ、”もいっくねん”は小さい魚のこと!!」と説明してるときが一等たのしげであった。なんか似てるもの前に見たことある??と帰り道で朝日を浴びながら甲州街道を立ちこぎしていたらそれがアキ・カウリスマキの映画の登場人物の表情なんだとわかった。そういえばムーミン谷の仲間たちだっていつも無表情で微かに憂鬱そうだ。あの、見てる分にはユーモラスな絶望的な途方に暮れ方というのは、かの国の民族的特質なのだろうか。明け方ヒッチハイクの話を順番に披露してるとき、「”日本語はなせます”って大書きした段ボール持って国道沿いに立ってたら、けっこう乗せてくれた・・・」というイメージも、みんなでお腹抱えて笑いながら、今Lがするのはエアコンの研究とかでなくて映画の主演兼監督だと思いついたのだが。おろおろしながら。見たいな〜