BOREDOMS in東京 @品川Prince stellar ball 2012.5.19

”骨を折る”
とか、
”骨をくだく”
とゆうが、今晩の夜のアイちゃんはジャンプして本当に骨を折った。最初の曲の最後の方で、大所帯のバンドのメンバーのひとりが突然、飛び上がるみたいにして舞台の上手に消えて、スチールパイプ椅子と氷の入ったビニール袋を持って飛んで返して、全然まだふつうに歌ってる山塚アイの足下にしゃがみこんだので、折ったかなとは思った。

舞台正面に天照大神みたいな感じでヨシミちゃんのドラムで、そっからアイちゃんがいて、一直線に客席の後方から光を当てて、舞台中央の壁一面に大きな金冠月食ができた。一人の強いメディシンマンを円陣と八の字型で囲んでの演奏法は、小さい頃から馴染みのある御神楽の上演や念仏舞に近い。アジア人ならこの形態で打楽器が叩かれるのを聞いて血が騒がないはずはないと思う。今日、足を折ってもなんも関係ないみたいなアイちゃんたちを見ながら、島根に住んでたころ、近所の神社のお祭りで初めて西日本の御神楽を見て、それまで馴染んでいた東北地方の澄み渡ったように洗練された神楽とあまりにも違う、荒々しい神様たちの汗や大蛇の血しぶきのこちらまで飛んでくるようなやりかた、見てる子供たちがじっとしていられずに椅子から立ち上がって踊ったりアイスを持って走り回って興奮するような御神楽を思い出した。大黒天が面を取って踊っていて、「そんなのありなのか!?それでは人間だってばれちゃうではないか、それともこっちでは”人間で、同時にかみさま”ってのがありなのか!?」ってびっくりしたっけ。そしてアイちゃんは髪型もヒゲもあの大黒天や日本武尊そっくりだ。

まさかアンコールまでやるとは思わなかった。もーいいからはよ誰か病院につれてけー!!と思ったのはわたしだけじゃあるまい。でもアンコールはじまって、本当に全部の音が鳴り終わって、捕まえられた宇宙人状態で左右に抱えられて「骨折しちゃった〜!でもありがとね!」っていつものやさしい声で言ってから舞台上手に四つん這いになって倒れ込んで這いながら幕に下がるアイちゃんを見て、ひとつのパーフェクトなイメージを掴んだ人というのは、完全に、やり遂げたいのだな、身体のことは、苦しむとしても、あとまわし、と、思った。