2017年よく聴いた音楽 番外編その2

 その1の続き。
bouillabaisse d'enfer『URBS』

http://hellsbb.com/:フリーダウンロード
 よく分からない名前の…プロジェクト? 突如現れた「地獄のブイヤベース」なる名前のサークル?による「仮説都市」というちょっとしたSCP的な概念をコンセプトに作られたコンピレーション。明るい農村計画で見かけるメンツにQuarta 330、Silvanian Familiesという自分のお気に入りのアーティストも加わった6人が1曲ずつ提供している。軽快で涼し気な音でまとめられたエレクトロニカで夏の終わりによく聴いていた。自分は田舎で育ったので別段この音にノスタルジーを感じたりしないけど、あと半年もすれば感じるようになるだろう。アートワークがいい。








Toiret Status / Nyoi Plunger

Toiret Status - Nyoi Plunger | Noumenal Loom
 注意力散漫というかなんというか……せわしない。トランプのスピードとか、超高速のマジカルバナナみたいな音楽で、いやまあちゃんと構築されてるなーと感じる瞬間もあるけれど、それでも半分以上は反射でなんとかついていくみたいな感じになる。00年代前半のAutechreが頭も身体も軽くなった感じだろうか。ぶっちゃけそんな聴いたわけじゃない、すぐお腹いっぱいになるから。でもこれからもこれを聴きたくなるタイミングは何度もあるだろうなー。サウンド自体はとてもフレッシュで魅力的なので(気分的に合わないときはとことん合わないだろうけど)。よく晴れた日に早歩きしながら聴いたらすごく気持ちよさそう。








Vinicius Cantuaria / Indio De Apartamento

アパート暮らしのインヂオ(Índio de apartamento)
 昔はカエターノ・ヴェローゾとか、近年はビル・フリゼールとかと一緒にやっていたらしい。基本はほとんど弾き語りみたいなミニマルな編成のボサノヴァなんだけど、音色とか処理の部分でポストロック的な感覚が顔を覗かせる。悪い訳ないじゃーん。レンタル屋でフィーリングで借りてきたものなので上のリンク先くらいのことしか知らないんだけど、これが良かったので他の作品も聴いてみようと思う。








内田勘太郎 / マイ メロディ

 憂歌団のギタリストのソロアルバム(98年)。なんか今作の製作前に沖縄に移住したらしく、「美らフクギの林から」やら「ていんさぐの花」やらその地からの影響を受けた曲もいくつか収録されている。全体に漂う空気ものんびりとしたもので、細野晴臣の初期のソロ作と同じような感じで楽しめないこともない。まあでも基本はブルースのフィーリングを湛えたギターが主役です。良盤。








伊藤真澄 / ユメのなかノわたしのユメ、Wonder Wonderful


伊藤真澄 | Lantis web site
リスレゾ – リスアニ!WEB – アニメ・アニメ音楽のポータルサイト
 女性SSW…だけどアニメ関連での仕事の方が有名だと思う。自分が意識し始めたのはかなり最近で、2017年の始めに彼女が音楽に関わったアニメ『フリップフラッパーズ』『小林さんちのメイドラゴン』を続けて観たことが音源を集めるきっかけとなった。一応、その前に布石として『人類は衰退しました』があったけど…(2012年……高校時代だ) 「FLIP FLAP FLIP FLAP」、「OVER THE RAINBOW」、「Chant」と2016〜17年は本当に傑作ばかり出してましたね(実際はそこに劇伴などが加わる)。この音のセンス、コードのセンス、そしてダメ押しにこの、この声質… toi toy toiのメンバーを始め、アニメ関係の人には大きな影響を与えていると思うけど、アニメを観ない方にも彼女の音楽が届けばいいなと思う。








Yoshino Yoshikawa / The Cats - EP

The Cats - EP | Yoshino Yoshikawa
 2017年も自分のツボでありつづけた芳川よしの… そんな大きなリリースはないけど、ツイなどを見ると安定して活動されてるようで喜ばしいことです。すずしろさんの『プラネットパティシエール』に提供した「ゆめのカケラ」、今までで最高の出来なのでは。猫のEPも良かったし、今後も自分のペースでがんばってほしい。








Primary Perception / Podcast Slow life 2016

Slow Life | Free Listening on SoundCloud
RA: Slow Life: 絆という強み
 ベルリンのハウス・レーベルSLOW LIFEのアーティストによるミックス。RAのレビューで見かけた2016年のコンピレーションが良さげで(未入手だけど)、それ以来たま〜にチェックしているSLOW LIFE。今度はRAのおすすめミックスでその名をたびたび見かけるようになったので聴いてみたら普通にいい。ここで挙げたのは個人的なきっかけになったものでそれ以上の理由はなく、本当にどのミックスもいい。基本的に音が柔らかめで、またコードのチョイスがかなり好み。もう少し遊び心があればなーと思わないこともないけど、この安定した品質を前にしたら何も言えないですね。あとは流通だけなんとか…なんとかして……








As One / Reflections

As One - Reflections [Limited Edition] (Spiral Records:XQAW-1012) | Tokyo Experiment
 音楽性についてはリンク先が詳しいですが、一応書くと90年代初頭のピュア・テクノとデトロイト・テクノを掛け合わせて、リスニング向けにバランスを取った感じです。聴いていて自分が連想する名前はB12とかBlack Dog Productionですが、彼らの同時期のアルバムと比べるとこちらが頭一つ抜けてよくまとまっているように思います(他と違ってソロだからというのもあるかも)。代わりに驚きが少なく、人によっては退屈に聴こえる可能性もありますけど… なんで同じくらい有名になっててもおかしくないのでは〜?と思っているのだけど、単に自分の観測範囲に入ってないだけかもしれない。








Blue Iverson / Hotep


BLUE IVERSON / HOTEP / DEAN BLUNT参加・プロデュースのバンド | diskunion.net CLUB / DANCE ONLINE SHOP
 普通にDean Bluntが演ってるのかなと思っていたら違ったらしい。いやなんか巧すぎるなーと思っていたんですよ。。 しかし内容は普通にいい。真っ当だ… 聴いててD'AngeloとかFrank Oceanとか浮かんでくるもん。1曲目「Coy Boy」のギターのカッティングが本当に鮮烈で… しかし本当に何をしてくるかわからん奴、既にこの路線に相当期待しているんだけどこれで終わりという可能性もぜんぜんあるのでぐぬぬ。期待してるけど期待しないで待ちます(?)。








Fp-Oner (A.K.A. Fred P) / The Incredible Adventures Of Captain P、5、6、7
Black Jazz Consortium ‎/ Structure

FP-Oner - 5 (Mule Musiq:mule musiq cd 48) | Tokyo Experiment
RA: Fred P: I can feel it
 ツイで仲良くしてもらってる人から教えてもらったアーティスト。非常に活発に活動している人で、気づくと新譜が出ている。複数の名義があるけどそこまで音楽性は変わらず、デトロイト・テクノから影響を受けたと思われるコード感覚が特徴な、アンビエント色の強いディープ・ハウス。基本的にシンプルな曲が多くて……なんというか、基本に忠実という感じがする。精進料理みたいな味わい(ちゃんとしたものは食べたことないけど)。この音楽を嫌いという人、まじでいないんじゃないか。ディープ・ハウスの王道、と言っておきます。本当の本当に余計なことを言わせてもらうと、「As Oneの1stから何が変わった?」








Chiquita aka. isis Giraldo / CHIQUITA MAGIC

CHIQUITA MAGIC | Chiquita Magic (Isis Giraldo)
 『サウンドは… なんというか、「The Magic Place」の時期のJulianna Barwickが軽やかな3分間ポップに挑戦したとでもいうか… Julianna BarwickとDirty Projectorsが組んだらこういうサウンドが出来るかも、という感じ。』と2017年3月に自分で書いていました。人間の声がサウンドの大部分を占めていて、聴いててやっぱ声って情報量多いなーと思う。4曲目「Juntos」なんかお気に入りで、ハーモニーの美しさにうっとりする。








Radiohead / OKNOTOK

 え・え・や・ん・け〜。さんざん好いておきながらアルバム以外聴いてなかった自分には普通にクリーン・ヒットした。精神的に辛い時期に作られた曲たちのように思うが(彼らの場合常に辛くない時期がなさそうだが…)出てくる音はめちゃくちゃキラキラしていてなんだかよくわからなくなってくる。やはりこの『OK Computer』の時期の彼らのサウンドは、ポップミュージックの理想形の一つだと思う。








Standing On The Corner / Red Burns

safe:フリーダウンロード
 そんな回数聴いてないんだけどね、聴くたびにいいなと思ってる。アブストラクトなブラック・ミュージック。ヒップホップやR&Bのアルバムなどでよく見かけるインタールード的な曲が延々と続く感じ…と書くと失礼ですか? なんというか焦点の定まってない感じの音が多くて、隣の部屋で鳴っている音楽を開けた窓越しに聴いているような感覚がする。チャートに載るような音楽とは真逆の方向性だと思うけど、これがまたぼーっと流しておく分には最高の距離感なのだ。特にSide X(始めの30分)はスカスカなビートとビンテージな音色のエレピという軽い編成がメインで、休日の朝なんかによく似合うサウンドだと思う。








V.A. / Remixes


Remixes | Central Processing Unit
 こっちはもはや開き直ってるような… もろに90年代の音なんだけど、似てるとかいうレベルではなく"そのもの"なので余計な感情は生まれない。驚くのが楽曲のクオリティの高さで、こちらは時間を経ている分ちゃんとアップデートされているような気がする。このサウンドが90年代に多く存在していたのは事実だろうし、これを聴いて古臭いと感じる聴き手もいるだろうけど、それらは作品の完成度とは関係ないですからね。まったくもって魅力的な作品。








 音楽作品、無限に増えていってますしその増えるペース自体も加速していってますが、自分が音楽を聴く時間はそんなに増やせるわけではありません。もし増やすことができても、自分の自然なペースを超えて音楽を聴いているとその行為自体に飽きてきますし(他の人は分かりませんが…)。自分の場合、良くて年に30枚くらいお気に入りの作品が見つかればいい感じなのかなーと。
 年間ベストで挙げられる作品が重なることも少なくなってきていて、いよいよカオスになってきたなというか… ただ音楽のジャンルというか、もっと細かいレベルでのニュアンスの違いというか、そういったものは確実に多様化してきていて、それを探す労力はかかるかもしれないけど、今まで以上に自分の好みにフィットした音が見つけられるようになったと思う。ゲームで言えばワールドめっちゃ広がったし解像度も高くなってきたけど道しるべが少ないとか、道が舗装されてないとか、そういう感じになってるのかなあと。

 毎回似たようなこと書いてますけどね、結論としては今年もいい音楽に出会えますように、ということなんです(?)。 今年もよろしくお願いします。