日韓の65.6.22ー15.6.22

日韓基本条約」締結の頃は日韓を行き来する人は、1年に1万人だったのが、今では1日1万人(外務省HP)。 こんなこと1つとっても 半世紀がもたらす変化はすごい。
共同声明などによく出る「共通の価値観を共有する国」なるーーー先日は安倍政権が自分の談話から捨て去ったーーー紋切り型にいう「共通の価値」が「民主主義」のことなら、韓国でまともな選挙により大統領に非軍人が選ばれたのが93年金泳三김영삼が最初であることに鑑みて「価値観」共有の歴史はまだ22年、半世紀のうちの半分未満ということになる。
だから、とは決めつけるのは控えるが、日韓の国交は起伏の連続だった。
日本人と韓国人の一番の溝は、
“絶対消せない過去”と、“拓くべき未来”、
この2つがどう連関するのかに関する認識ギャップでは?と思っているが、加えて、両国国民の多くの反対の声を押し切って結ばれたこの基本条約自体も、元凶の一つである。
そしてもし、この50年の最大のエポックを選ぶならば、故・金大中氏が「内乱陰謀罪」で言いがかりのような死刑判決を受けながら17年後に大統領に当選し、日本文化の解禁に着手した事を挙げたい。元・侵略国だからといって、その国の歌を放送できない、映画・アニメを上映できない、というのは、どう考えてもおかしいことであった。
日本文化開放の背景には、韓国側の自国コンテンツに対する自信ないし、戦略面も隠然とあったろう。「これから韓流を外貨稼ぎの柱に据えるのに、『輸入』だけ禁止しているわけにいかない」という。
それを証明するように、開放政策と前後して『シュリ』JSA』と、韓流映画の大ブレイク。そして、ドラマ『冬ソナ』『チャングム』の記録的視聴率へとつながっていった。『Newsweek』が「韓国をうらやむ日本人」という特集を組んだ程だ(01.5.16号)。


現在、 若者の交流、スポーツの共催、大衆文化の消費は、 政治家同士の未成熟なさやあての とばっちりで停滞するケースもありながらも、概ね定着した感があるのは、「政治は政治、文化は文化」と考える人が多数派になったからだとも言えようし、その素地を作った金大統領の仕事は、やはり大きかったと思う。国策としての戦略的開放であった側面を割り引くにせよだ。
私は、朴槿恵という人は、姜尚中さんで さえ厳しく批判する通り、非常に稚拙な政治家だと思うし、安倍晋三の傲慢さと、批判への耐性の無さも相当なものだと思うが、個々の為政者の資質・欠点のせいだけには解消しきれない「宿命」によって、今の日韓の外交的試練があるのだ、と考える。宿命とは、日本の植民地支配はもちろんの事ながら、それを清算する筈だった基本条約が、弱者や犠牲者を置き去りにした欠陥条約であり、その欠陥の結果は早晩露呈すべきさだめだったという意味だ。
私は、全斗煥政権下の82年に初めて、韓国一周旅行をし、NHKが『ハングル講座』をスタートさせて間もない時分に韓国語を勉強し始め、中年にもなってから語学留学も1年間(釜山、ソウル合計)だけ体験した。今でこそTVで毎日見られる韓国映画も、80年代初め頃は『桑の葉(原題:뽕)』程度のB級が最大の話題作だった時代。韓国映画が日本でも見られること自体珍しく、初級の韓国語学習者向けの辞書もほとんどなかったそんな頃から、(素人なりに)韓国をウォッチしてきたつもりの私は、どんな日韓関係の潮流も10年以上続いたものはほとんど無い、ということを経験的に知っている。なので私は「外交的試練」に対してもあまり悲観視しない。膠着状態もまた、そうそう永くは続くまい、とタカをくくっていられる。
日韓は、“価値観”はさておくとして、むしろ高齢化、成人病、自殺者、貧富の拡大、非正規雇用、離婚率増加、女性の社会的不利益など、極めてたくさんの、社会問題や課題を共通に抱えている。「日本と存立と日本人の幸福追求権を脅かす」ものをいうなら、ホルムズ海峡に “これから撒かれるかもしれない”機雷だの 中国の軍事力だのより、それらの方がより深刻かも知れず、そこに立ち向かう知恵の結集に、国境もナショナリズムもへったくれもない。そこらへんに、日韓関係改善の突破口が見えないだろうか?
世界遺産登録問題で折り合ったが、ああいう件で嫌でも応でも高官が会わざるを得なくなった事情を、むしろ奇貨と考えて、次につなげるくらいの大人な隣国関係が望まれる。