旧・無印吉澤

昔はてなダイアリーに書いていた記事のアーカイブです

SkypeとGoogleの類似点 / Skype for Business

Skypeに関する最近のトピックを見ていて、「SkypeGoogleはかなり似たもの同士なのではないか」という印象が強くなってきました。最近ニュースサイトで取り上げられたSkypeのトピック2つを取り上げながら、そのあたりについてだらだらと書いてみます。

VoIPの新星Skype、間もなくAPIを公開(日経BP)
http://nikkeibp.jp/wcs/leaf/CID/onair/jp/flash_rss/337070

このニュースを最初に見たときは驚きましたが、Skype Technology社のビジネスモデルを考えてみれば、これはもっともな方針です。

Skypeは今まで宣伝らしい宣伝は行わず、クチコミとプレスの効果のみで、ソフトウェアのダウンロード数が2千万を超えるほどに普及してきました。日本では、最初はインターネットに興味のある人にしか知られていなかったSkypeが、その後朝日新聞に取り上げられたのがきっかけで、中年層の人達にもかなり知れ渡ってきました(サンプルが僕の周りの人=技術者に偏ってますけど……)。派手な宣伝は行わずに、このようなバイラルマーケティングのみで普及していくところは、GoogleAmazonのそれと似通っています。

そして、ユーザのタダ乗りを許す事でとにかくユーザベースを増やし、そのユーザの一部が落とすお金によって利益を上げる仕組みを持っている、という点でもGoogleSkypeは似ています。

で、ここまでは他のサービスにも共通する部分ですが、一番大きな共通点は、この両者はそのように集めたトラフィックを処理するために独自の分散処理技術を持っている点だと思います。Googleの場合はユーザ増加によるトラフィックを、自社で設置している大量のLinuxサーバで分散処理しています*1し、Skypeの場合はユーザ増加によるトラフィックをユーザ自身に分散処理させています。

そう考えると、GoogleGoogle Web APIを公開するように、SkypeSkype APIを公開する事は全く不思議ではありません。むしろ設備投資が増えない分、Skypeの方がAPI公開に対するデメリットが少ないのではないでしょうか。

しかし、分散処理がコア技術である、という点で両者が共通しているところは面白いですし、あちら側でもこちら側でもないところ(強いていうなら「われら側」?)でGoogleと同じビジネスモデルを使えるケースがある、と考えると、個人的にはちょっと面白いと思うのですが……どうでしょうか。JXTA Searchの夢再び!

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Skypeが企業向けVoIP市場に参入へ(CNET Japan)
http://japan.cnet.com/news/com/story/0,2000047668,20075045,00.htm

一方、こちらについては正しい方針なのかどうか、今のところ僕にはよく分かりません。業界でのプレゼンスを増すための単なるアピールなのではないか、という気すらします。

最初はこの件についてもGoogleとの類似点で考えようとしたのですが……これはちょっと違いすぎますよね。Googleの企業向けアプライアンスGoogle Search Appliance」は売り上げを伸ばしているらしい*2ですが、Skypeはどちらかというと、コンシューマでのシェアを足がかりに企業向けIMに参入しようとしたYahoo、MSN、AOLに近そうです。ちなみに、Yahoo*3とAOL*4は既に企業向けIMの提供をやめてしまっています。

で、少し考えてみたのですが、やはり企業向けIMを導入するような規模の企業で企業向けSkypeSkype for Business)を採用する可能性はあまりなさそうな気がします。きっちりとファイアウォールなどを運用しているところでは、システム管理者はきちんと管理できるソフトを望むでしょうし、外部のスーパーノードに頼るSkypeのようなシステムを有り難がるとは思えません。

一方、コンシューマに近い小規模な企業からはそれなりにお金を取れるかもしれません。SkypeInが実現すれば、それを自宅でも会社でも使える電話番号として(携帯電話のように)個人的に導入する人はいそうですし、Siemensが開発中のコードレス端末と電話番号、それと企業用のSkype名前空間*5をセットで売るなどして工夫すれば、ある程度まとめて購入してもらえそうな気がします。

ここはコンシューマも同様なのですが、企業向けSkypeが普及するかどうかは、結局のところどれだけSkypeの周辺機器が揃うか次第なのではないでしょうか。コードレス端末などは恐らくスペック的にスーパーノードにはなれないので、Skype周辺機器からはライセンス料を徴収するようにし、不足分のスーパーノードをSkypeが固定運用して……と考えると、今後小規模な企業を相手にする過程で少しGoogle寄りになる可能性も考えられます。

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うーん。企業向けSkypeの件については、もう少し考えが整理できたらまた書きます。