友人から届いた『デンマーク読本』

 九州福岡市で〝家庭や学校、職場、地域の中に、対立や反目の無い、心豊かな「なかよし社会」を創る〟ことを目的とした「教育文化研究所」を主宰している友人から、『デンマーク読本』という冊子が届いた。
 彼は十数年前までは、大手企業で新規プロジェクトなどを手掛けていたバリバリの企業戦士だった。
 その彼が、家族の介護のために退職したのを境に、人と人が仲良く支え合う社会を創りたいと、彼自身の生き方の舵をその方向に大きく切って、研究会や講演会、講座などを精力的にやっている。
 その彼が、幸福度世界一と言われるデンマークに魅せられて、毎年のようにツアーをコーディネートしてデンマークを訪れている。
 そこで感じ、考えたことをまとめたのが、今回届いたデンマーク読本』である。
             
 デンマークの概要を記した後に、「幸福度世界一の国デンマークから学ぶ」として(1)〜(11)の章立てで、如何に福祉国家デンマークには学ぶべき点が多いかを記している。
 これからの社会をどのようにしたら、みんなが幸せに暮らせる社会が出来るのだろうかと考える上では、大いに一読に値する、僕にとっては勉強になった冊子であった。
 こうして、学ぶべきデンマーク福祉国家として具現化した政策の基には、人間の生き方の哲学があり、それが国民一人ひとりに浸透した経済優先でない民度の高さを感じる。

 いろいろと勉強になった事を抜粋紹介したいが、それも出来ないので一つだけノーマライゼーションというのだけ記載する。
 福祉の世界ではよく使われる言葉らしいが、僕ははじめて知った。
 ノーマライゼーション」とは、障害の有無にかかわらず、普通の暮らしが出来ることを保障する事だとある。
 誰もが、病気や事故、加齢が原因で、体力や知力が普通の暮らしを維持出来なくなっても、その人の意志を尊重して〝その人らしく〟暮らせることを保障する考えなのだ。
 このような考え方を具現化すると、ここ数年、日本の各地に増えた「特別養護老人ホーム」などの施設は、新規の建設はないし、既存の施設も閉鎖してしまったという。
 経済優先、効率優先、それが社会発展に不可欠だと思って、高齢者や障害者を健常者から隔離しての社会システム。その運営さえも費用対効果という基準で尻を叩く。
 そんな政策をしている国とは、対極の政策を進めているのがデンマークなのだというのを知った。

 この冊子を読み終えて、そう言えば、介護関係の活動をしている妻は、以前、しきりに「デンマークに行ってみたい」と言っていたことを思い出した。
 妻は、「経済大国」でない「福祉大国」としてのデンマークに触れたかったのだろう。
 そんな妻に、
 「ふらんすへ行きたしと思へども ふらんすはあまりに遠し・・」と詩に書いたのは、中原中也だったか萩原朔太郎だったか記憶は定かではないが、妻にも、せめてもの「デンマークは遠いから、まずは、これを読んだら?」と渡して、読んでもらおうと思う。