2月最後の日のお薦め書籍

 今日で2月も終わる。暦の上での分類では冬も終わるらしい。
 案内所に事務室カウンターに、春を告げるネコヤナギを誰かが飾ってくれた。
        

 今朝の通勤は散々だった。
 7時から8時までファーム町田店の開店準備に入って、その後、案内所へ向かった。
 いつものように、バスで町田駅まで出て小田急線に乗ったのだが、ダイヤが滅茶苦茶。
 通常の朝なら40分〜45分で新宿に着くのだが、電車に乗ったらノロノロ運転と停止を繰り返して、なんと2時間10分もかかってしまった。
 車内アナウンスによると、その原因がまた冴えない。
 「相模大野駅で、お客さまの車内トラブルがあり、その対応で・・・」ことらしい。
 車内トラブルって、きっと乗客同士のトラブルだろう。一人の「怒り」が、何万人、いや何十万人にも影響を及ぼす。そんな朝だった。


◇文春新書『僕たちが何者でもなかった頃の話をしよう』を読む
 この本を購入したときにも、この本のことをブログに書いたが、この本の著者は5人の名前が入っている。
       
 京都産業大学での講演・対談シリーズ「マイ・チャレンジ一歩踏み出せば、何かが始まる!」の記録本なのだ。
 対談の主は、細胞生物学者でもあり、歌人でもある京都産業大学教授の永田和宏さん。 永田さんが招いて講演と対談相手は、
 ノーベル賞を受賞した京都大学iPS細胞研究所所長の山中伸弥さん。
 将棋界のトップに君臨する羽生善治さん。
 映画『そして父になる』などで有名な是枝裕和さん。
 霊長類学者でゴリラ研究の第一人者であり京都大学総長の山極壽一さん。


 講演と対談の記録なので、やさしい言葉で分かり易く、興味あるエピソードと、含蓄ある話しが随所に飛び出し、各界のトップリーダーの素顔がのぞけて、実に興味深く読ませてもらった。
 書き留めておきたいと思った含蓄ある言葉にたくさん出会ったのだが、ちょっとだけ紹介する。
 羽生善治名人は「相手の立場で考えることの難しさ」を語っている。
 将棋には「三手の読み」というのがあって、その「三手の読み」が実に難しいらしい。   「三手の読み」とは、「自分が指す、次に相手がこう来て、それに対して自分がこう指す」ことだが、「問題は二手目に相手が何をやってくるか」を読むのが難しいらしい。
 羽生さんは「相手の立場に立って、自分の価値観で考えてしまうことがよくあります。一応、盤面をひっくり返して、相手だったらどう指すかと考えてみるのですが、つい、相手のほうから見たときに自分だったらどう指すかというふうに考えてしまう。」と言う。
 「相手の立場で考える」とは、自分の価値観を棚上げして「相手の価値観で考える」ことなのだと言っている。

 もう一つ、山極壽一京大総長の話しを記しておこう。
 ゴリラには「白目」がなく、「白目」を持つのは人間だけという話の中で、
 「皆さんは、相手の目の動きを見て自分がどんな判断をしているか、自覚したことがあるでしょうか。『こういう目だったらこういうふうに判断しなさい』と教わったことはないでしょう。教わらなくても、自然に判断していますよね。おそらくこの能力は、あらかじめ人間が持っている能力だと思います。人間が言葉を使い始める前から備わっていた能力だから、根が深い。人間が言葉でコミュニケーションをとる以前は、目で意思疎通をしていたのではないか。それゆえに、今の時代、対面して会話をする機会が減っているというのは危険ではないかと思うんです。」と語っている。
 そして、「生まれたときから携帯電話がある世代にとって、自分が本当にひとりになった経験がないんですね。目の前に人がいなくても、携帯電話があればつながっている。何か感じたら、携帯かメールで連絡したり、インターネットにアップしたりすれば、すぐに反応が返ってくる。ネット環境を大事にするあまり、目の前の関係を大事にしなくなっている気がします。」と、携帯やスマホに侵された人間関係を危惧している。

 もっと、もっと、興味ある言葉、含蓄ある言葉に出会えるので、一読をお薦めする。