チャンピオンズ・リーグ予備選三回戦 シェルバーン VS デポルティボ・ラ・コルーニャ

昼間は雨が降ったり止んだりの状況だったにも関わらず、夕方には晴天が戻ってきた。それにだまされるようじゃ、まだまだ修行が足りないのがアイルランドの天気。試合開始前にはもう一雨来そうな雰囲気。案の上、前半10分ぐらいから猛烈に雨が降ってきた。これが結果的にデポルティボの出足を止めたような感じとなった。濡れて滑りやすくなったピッチの上で、シェルボーンの選手の繰り出す強烈なスライディング・タックルが気持ちいいほど決まる。こういう天候には一日の長がある?

ホームのシェルボーンはダブリンのチームである。エアコム・リーグ(アイルランド・リーグ)の覇者だからそれなりの人気チームである。しかし、彼らのホームスタジアムの定員は一万人に満たない。今日はそんなホームグランドに程近いラウンズダウン・スタジアムを間借りしてのゲームとなる。このスタジアムは、アイルランドナショナルチームも使用する、アイルランドでは比較的大きなスタジアム。それでも定員は2万4千。ゴール裏のスタンド席まで解放してだいたい3万人ぐらい収容できるラグビー専用スタジアムである。そうアイルランド・サッカー・協会は自前のスタジアムをもっていないので、こういう国際的な試合のときはラグビー協会所有のスタジアムを借りているのだ。

僕が聞いた限りでは、アイルランドのクラブ・チームがチャンピオンズ・リーグが始まって以来、ここまで残ったことがない。シェルバーンの歴史上もっとも輝かしい夜なわけである。当然満席の2万4千人入った。これはこれまでのクラブ記録を2倍上回る過去最高の人の入りである。メインスタンドの一部にスペイン人が固まっている以外は、チームカラーの赤と白に染まった。赤ければいいやとマンチェスターUのユニフォームを着ている馬鹿ガキが何人かいたのは、ちょっと痛かったけど。エアコム・リーグの他のチームのフラッグも一緒に飾っていたので、たぶん国を挙げて応援する心積もりなんだろう。*1この状況でアイルランド人が燃えないわけがない。選手も客もすごい盛り上がりだ。

無論、デポルティボの選手はうまい。バックスタンド最前列といういい席だったので、目の前でデポルティボの選手が練習しているのを眺めていたけど、トラップとかすごくうまい。遠く同じことをやっているシェルバーンの選手と比べたら雲泥の差がある。もちろん試合中はその差が明確にでる。しかし、その足りない技量を覚悟を決めたタックルと、献身的な運動量で補う。

UEFAのページにもまだスタメンとかの選手情報が出ていないので、確認できないのですが、シェルバーンの方のフォーメーションは4−1−4−1。一方のデポルティボのほうは4−2−3−1。シェルバーンの方は、相手のワントップ(背番号7、誰?)とウィング2枚(ルケとヴィクトルかな)、トップ下(バレロン)に完全にマンマークをつけて、一人完全に余るような感じで対応。そして高い位置でラインを維持しようと試みる。デポルティボの方も最終ラインを高い位置で維持しているので、中盤での潰しあいという感じで試合が展開。ここでアクセントになっていたのが、シェルバーンの11番。たぶんWesley Hoolahanという若い選手。試合のプログラムによると本来はFWの選手らしいけど、今日はセントラルMFの位置で起用されていた。すごい小柄で、アイルランド人にしては珍しく器用でテクニックのある選手。スピードもそこそこある。フル代表にはまだ呼ばれていないけどその下のカテゴリーでは代表歴もあるそうな。彼が、いたるところに顔をだし、パスをつなぎ、展開し、ドリブル突破をしかける。ときおりラストパスも。テクニックで対抗できそうなのは彼ぐらいで、それ以外の選手は文字通り泥まみれになりながら、デポルティボの攻撃を凌ぐ。そして11番を起点にしたカウンターを狙う。前半は意外にも互角の勝負。0−0で折り返す。

後半に入ると雨も上がり、デポルティボのパスもつながるようになる。後半立ち上がりは明らかに彼らのペース。しかし、今日のデポルティボはなんかシュートまで持ち込めない。惜しいシュートが何本かあったけど、本当に数えられる程度のチャンスしかない。なかなか波に乗れない様子。そして、左サイドバックのロメオが明らかに反則のひじうちを喰らったものの、流され、逆にそれに抗議してカードをもらったあたりから、シェルボーン・サポーターの応援もヒートアップし、シェルボーンペースへ。ロメオがボールを持っただけで割れんばかりのブーイング。ボールに近づいただけでブーイング。それ以外の選手にはそんなことないし、ルケとかが下がったときには一応拍手とか出るぐらいだったのに、彼にだけブーイングの嵐。たぶん二度とこんな国に来たくなくなったんじゃないのかな。

シェルボーンも11番、そして後半途中から右サイドハーフで起用されたNdo*2を中心に何度か惜しいチャンスを迎えるもこちらもシュートまでなかなか持ち込めない。そんなこんなで、結果0−0の引き分け。

試合終了直後、電光掲示板には「Well Done」の文字が。そうよくやった。もちろん本戦出場を考えたら、ホームで引き分けは褒められた結果じゃないかもしれない。でも、充分な結果だろう。ジャイアント・キリングとは行かなかったけど、もう一試合夢が見られるのだから。おかげで、スタジアムから出るときとか、帰りの電車の中は大変なことになっていたけど、まあこれはどこでもいっしょ

デポルティボとしては、中盤からのシェルボーンの体を張った守備に予想以上にてこずった印象。ディフェンス・ラインの裏のスペースをもう少しうまく使えないときついかも。特に両ウィングはほとんど印象に残らなかったぐらいの出来だったから、ウィングとサイドバックがいかにしてシェルボーンのDFの裏をつけるのかが、次の試合の鍵なんだろう。

一方シェルボーンは、今日の出来をアウェイでもう一度やれるかどうか。これに尽きるだろう。耐えて耐えて、相手の焦りに乗じれば敵地でも、もしかしたら一点ぐらいだったら、どうにか取れるかも。そんな感じ。

UEFAの信用できるマッチ・レビューはこっち
http://jp.uefa.com/competitions/UCL/fixturesresults/round=1967/match=79367/Report=RP.html
出場選手などはこっち
http://jp.uefa.com/competitions/UCL/FixturesResults/Round=1967/Match=79367/Report=MS.html

*1:もしかするといやがらせにきたのかもしれないけど、そういうそぶりは見えなかった。

*2:カメルーン代表らしい。なんと発音していいのやら

アイルランド的だなぁと思ったこと

上の試合を見に、初めてアイルランドのスタジアムにいって、びっくりしたこと。
スタジアムの中にちゃんとブックメーカーがあった。もちろんこの試合に賭けることも可能だけど、テレビではずっと競馬中継をやっていた。おっさん達は、ずっとそれを見ながら試合開始を待っている。これ楽でいいよね。土曜日とか日曜日とかに、どっちに行くか悩まずにすむもんね。日本でもトトとか競馬とか全部一緒にして、同じ場所で購入できるようになると、だいぶ楽なんだけどな。