アシガール・第3回「若君といざ出陣!」
第3回のストーリー
現代に戻った唯は、忠清が戦で命を落とすことを知り、再び戦国へ行く決意をする。
弟・尊は「秘剣・でんでん丸」を発明して持たせる。
戦国に戻った唯は、吉乃のもとで農作業を見習う。
戦が再び始まると聞いた唯は、城に駆けつけるが…。
尊の実験室(庭の物置)。
- 尊「もう一度戦国に戻って、その先どうするつもり? その人を助けたいっていうけどさ、素性の知れない人間のいうこと、お城の若君が聞くと思う?」
- 唯「やってみなくちゃ、わからないじゃない」
尊は脇差しで唯を小突きながら言う。
- 尊「どうやって近づくのよ。どうやって仲よくなるのよ。そのためのビジョンある訳?」
唯も反撃する。
高校生の姉弟二人が未来を語る、印象的な場面。
これは、兄・成之 × 弟・忠清の真剣による真剣な闘い、そして幼い兄・三之助と弟・孫四郎の関係をも考えさせられる。
木村先生の社会科準備室。
- 唯「先生、もし先生が戦国時代に行ったら、羽木のお殿様と友達だったら、羽木のお殿様を助ける? そのせいで歴史が変わったとしても」
- 木村「速川っ!」
- 唯「は、は、はい」
- 木村「大事な人は自分の手で助けるんだ! 戦国も今も関係ない!」
- 唯「ですよね!!」
木村先生は、唯の「迷い」を一言で断ち切ってくれた。戦国に向かう唯の背中を押してくれた。
目標が定まったときの人間の変化は凄まじい。食べ物にしか興味が無くアクビばかりしていた唯は、若君を守るために戦国時代の基本を学び猛トレーニングに励む。
速川医院の診察室。
- 尊「お姉ちゃんってさ、なんであんなにバカなんだろう? バカのくせに幸せそうだし」
- 美香子「尊、お前は何にも分かってない。お父さんは家事が好きすぎて会社を辞めました。お母さんは病気とケガのこと以外何にも知りません。あんたは発明、唯は走りが速いだけ。バカは我が家の伝統芸能です!」
- 尊「芸能じゃねえし」
「お姉ちゃんがバカだ」という息子に母は〈 バカ、バカ言わないの 〉などと言わず、「バカは我が家の伝統芸能だ!」と返す。息子の疑問にスパッと応える母のたくましさ。とても筋道立った論理にみえない。
しかし、後に尊はその言葉に深く納得していく。
父と母の関係も深い・ふかい・ふか〜い。
軍議の場。忠清は、高山に奪われた小垣城を取り戻したいと申し出る。
- 忠清「我らだけで…、城を取り戻しましょう」
- 千原「若君」
- 天野「急いてはなりませぬ」
- 忠清「恐れながら、小垣の民百姓を捨て置くことはできませぬ。我が羽木一国で小垣城奪還のご沙汰を!」
- 忠高「では尋ねる。今このとき、お前は高山の動きをどれだけ詳しゅうつかんでおる? 民のためと言いながら、お前はただ陣取りにはやっているにすぎぬ」
敵の動静を把握していない忠清は、言い返すことができない。
忠清の口惜しげな目元、口元、頬、眉。コメカミ。
唯が農作業と足軽暮らしを学んでいるとき、忠清もまた優れた戦国リーダーになるための一つ一つを学んでいる。
忠清は小平太と剣の稽古をしながら、成之と如古坊の特別な絆について話し合う。
- 忠清「絆か。どうであれ、そのような者がいるということは心強いことなのかもしれぬな」
- 小平太「いずれ若君も似合いの姫君をめとられましょう。その方と心が通じ合えばよろしいのでございます」
- 忠清「オナゴと心など通じ合わなくてもよい!」
木刀を振り下ろしながら忠清は笑う。
えーーっ! 若君さま、ほんとに? えーーっっ。ウソだ〜。
あなたはおそらく肉食系でごじゃりまする。
唯が現代から持って来た米を、吉乃は村中に配ってしまう。唯は腹ぺこで不満たらたら。
- 吉乃「村は一心同体じゃ。己だけ生き延びてもダメなのです。とどのつまり、飢えるのは自分じゃ」
- 唯「だから分け合うのか。でもでもでも、みだりに米をみせたらおふくろ様を疑って誰かに言いつける人がで出てくるかもしれないじゃないですか」
- 吉乃「ふふ、それはあるまい」
- 唯「何で?」
- 吉乃「私を責めれば食べたものも同罪じゃ。己に都合の悪いことは皆もらすまい」
- 唯「米を配ったのは口封じも兼ねてたと……、ひえ〜」
- 吉乃「生き残るためには一手も二手も先を読まねばのう」
- 唯「おふくろ様、一体どんな人生送ってきたんですか?」
- 吉乃「たいしたことはない。ほれ」
唯の口に瓜を入れる。
- 唯「ん、甘い!」
戦国の母も、強し、賢し、潔し。
戦場。両軍入り乱れ、容赦なく切りあう。
- 唯〈 これが……、戦 〉
- 忠清「大事ないか?」
敵が唯を襲う。唯をかばう忠清。
- 敵の足軽「大将じゃ〜! 九八郎忠清じゃ〜!」
敵を倒す忠清。
気絶する唯を抱きとめる忠清。
- 忠清「小僧! しっかりせえ!」
戦いのシーンは短い。派手に血が噴き出たり、体が切り離されたりはしない。
しかし、リアルに感じる。なきがらがころがっているのも、足軽が土くれを投げて応戦したりするのもリアル。こんな戦い方をしたのかと。とても恐ろしい。
忠清の腕の中にいるのに、唯は意識がはっきりしないことが多い。たぶん全く覚えていないだろう。「しっかりせえ」と言いたいがここは戦争の恐ろしさを噛み締める場面なのだ。
凄惨な戦場であるが、唯と忠清が一緒であることが観ているものの救いになる。
(つづく)