世界の島々:異なる起源

 研究室のRさんもKさんもサンプリングに世界のいろいろな島を訪れているみたいです。私は出不精なので、今後、そんなにたくさんの島を訪れないとは思うのですが、いろいろ思いをめぐらすだけでも楽しいものです。

 考えてみれば、地球上の7割が海なので、陸地はすべて島といえます。6つの大陸を定義してはじめて私たちが普段「島」と呼んでいるものになるわけです。世界地図を広げると、いろいろな島があるのがわかります。それぞれの起源もさまざまです。それでも、その起源を大きく区分することから、島の生物学がはじまります。とりあえずその基本をここで整理しておきたいと思います。


海洋島(大洋島)
1) Oceanic islands 
 一度も大陸やその他の陸地と接したことがない、主に火山起源の島々をよぶ。プレートの境界から吹き出すマグマによって形成された島(Plate boundary islands)と、プレート上のホットスポットと呼ばれるマグマの吹き出し口から形成された島(Intra-plate islands)がある。例えば、前者には大西洋海嶺上にあるアイスランドが、後者には、太平洋上にあるハワイ諸島がある。
 大陸からの隔離度が高いほど、独自の進化が起こり、その生物相は高い固有種率を示す。


大陸島
 海洋島とは異なり、大陸やその他の陸地と接したことがある(もともと大陸の一部であった)。おもに二つのタイプの大陸島がある。


2) Continental islands
 大陸棚上の陸地で、氷期後の海水面の上昇によって、大陸から離れた島をいう。ブリテン島(イギリス)や、琉球列島、フォークランドスマトラ島、ジャバ島、ニューギニア島など、多くの島がこれにあたる。海水面の下降によって陸地が接することで種の移入がおこるため隔離度は低く、固有種率は海洋島よりは低い。


3) Continetal fragments
 古く(古生代から中生代)現在の大陸は大きな一つの超大陸であったが、その後、大陸に割れ目が生じ分裂が起こり、各プレートに乗せられ、現在の7つの大陸に分かれた。その超大陸の断片で、古くに大陸であったものの、その後は長期間にわたって隔離された島をいう。そのため、海洋島と同様、高い固有種率を示す。マダガスカルセイシェルニュージーランドニューカレドニア、フィジーキューバ、ジャマイカプエルトリコなどがこれにあたる。


 以上は、ウォレス(Alfred R. Wallace)による区分に基づいて定義された。



赤い数字は海洋島を示す。


1. Iceland(アイスランド
2. Azores(アゾレス)
3. Canary(カナリー)
4. Ascension(アセンション
5. Saint Helena(セントヘレナ
6. Tristan da Cunha(トリスタンダクーニャ)
7. Madagascar(マダガスカル
8. Mauritius(モーリシャス
9. Seychelles(セイシェル
10. Moldives(モルジブ
11. Christmas(クリスマス)
12. 琉球
13. 小笠原
14. Guam(グアム)
15. New Caledonia(ニューカレドニア
16. Fiji(フィジー
17. New Zealandニュージーランド
18. French Polynesia(フレンチポリネシアタヒチ、ソシエテ)
19. Hawaii(ハワイ)
20. Cocos(ココス)
21. Galapagosガラパゴス
22. Easter(イースター
23. Juan Fernandez(ファンフェルナンデス)
24. Falklands(フォークランド
25. Bermuda(バミューダ


参考文献


Whittaker RJ, Fernández-Palacios JM (2007) Island Biogeography: Ecology, Evolution, and Conservation. Oxford University Press.


伊藤秀三 (1994) 島の植物誌—進化と生態の謎. 講談社選書メチエ.


 ニュージーランドニューカレドニアなど、それらの生物相は、海洋島なみに高い固有率をもつため、海洋島の解析には含められることが多いようです。しかし、厳密には、その固有種の形成過程も異なります。次回に続く・・・。