オナニーする老人は実在する

  オナニーする老人は実在する

 週刊ポスト先週号は、画期的な記事を載せた。セックス中の死である「腹上死」というのは、しばしばメディア上に出てくる言葉だが、それと同じくらい実在するもう一つの死、「オナニー死」をとりあげたのだ。検視にたずさわってきた上野さんという方の記事だから、遭遇したいくつもの例はリアルである。
 一人、自室でオナニー(自慰、マスターべーション)をしていて、ショック、突然死してしまうものだ。ボクラの学生のころ、セックス一回は、グリコじゃないが、100メートルを全力疾走するくらいのはげしい運動なのだとよく聞かされた。オナニーだって、興奮という点では同じだ。オナニー死のほとんどが心筋梗塞など血管系がつまる病気が原因だとのこと。当然、中高年、が多い。(でも、若い人もいるのですよ)そして、女性も男性も、両方ある。
 腹上死の場合、相手がいることゆえ、発見や処置はすみやかに行われるが、オナニー死の場合は、一人ですることだから、何日も発見されないことも多い。
 中には、寝たきりになった奥さんがいて、だから、何年もセックスできなかったお年寄りが、奥さんの衣類に不意に欲情してしまい、オナニーをしたところ、刺激が強く、なくなってしまったなどという例ものっていた。
 「腹上死」という言葉が、年をとっても愛人をもてるバブリーな老人の存在を連想させるのとは反対に、「オナニー死」は、普通の中高年、老人、老女の、どちらかというと、さびしい性欲の実在を想起させられる。
 ボクの知り合いの単身の老人からも、その人はむしろ老若男女に人気のある人なのだが、それでも、知り合いの若く魅力的な女性のことを思ってオナニーすることがあると、聞いたことがある。
 今のところ、セックスの問題は、性的欲求の発現していない子供が誤解、偏見、トラウマをもつことのないようにとか、性的欲求が発現してもまだ、コントロールがよくできない青少年男女にたいする「抑制策」の面などなどからのみ論じられている傾向が強い。が、セックスと性欲、そしてオナニーということは、すべての人間に実在する自然として、青少年から老人にいたるまで普通に存在する現象である。

オナニーするお年寄りは実在している。