時子のパタゴニア便り

2018-05-03 「たのしむ焼き物」

パタゴニアに来て始めた焼き物です。

薪窯を作り、粘土釉薬になる鉱物を探しに乾燥地帯を旅し、松薪を準備し窯焚きをして、ブエノス・アイレスで展示会をしました。焼き物は暮らしの一部でした。一人では何も出来なかったけれど、同じ方向を向いて進んで行く人がいました。お陰で私は多くの事を学べました。

時が過ぎ、私を取り巻く環境が変わり、気持ちも変化し、以前の様な体力もなくなって、数年間、焼き物から離れていました。でも全く離れていた訳ではなく、細々と粘土の準備はし、お地蔵さまなど小さな物を作ってはいました。

生活の薪準備、細々した雑用、豆腐や味噌作り、規模の大きくなった日本語教室、持病克服の為の体操…ああ、焼き物に集中できる時間が無い!と焦っていました。そんな時

「嘘つき。そんなの言い訳でしょ。やる気が無いだけじゃない」

私を外から見る私の声が聞こえました。

子供の頃から何をやっても途中で投げ出し、自信を持てるもの、自分を磨いていくものが何もありませんでした。楽しくって大好きだった焼き物も、同じ様に投げ出そうとしていました。

私は土や鉱物の特性も、窯の温度変化も、理論的に何一つ説明出来ません。だから自分に自信が無く萎縮していました。私のやっているのは単に粘土遊びだと自虐していました。

でもやっと、私は私と思える様になりました。笑いたければ笑えばいいよ。馬鹿にしたっていいよ。それが私なんだから、と良い意味で開き直れました。

4月26日大安吉日、一年ぶりに窯焚きをしました。

前日に窯詰し、当日はまだ暗い朝4時半から焚き始めました。予定は12時間。今回は殆どが置物の素焼きなので、ねらしの時間を短くして、暗くなる前の終わろうと決めました。

零度近くまで気温の下がった寒い日で、窯を焚きながら、猫の福のために家の薪ストーブも付け、家と窯場を行ったり来たりしました。

窯焚きはいつだって緊張します。薪の準備だって、作品を作るのだって簡単ではありません。だから絶対納得のいくまで焼こう、反省はしても後悔はしない窯焚きをしようといつも決めています。

今回は10時間で窯どめしました。よし!と思ったのですが、二日後の窯開けで、釉薬をかけた数点がねらし不足で土からの色が滲み出ていませんでした。

でも楽しかったです。

今回は試しに、処理に困っているワインの瓶を窯で溶かしてみました。狙い通り、一本が驚くほど小さくなり、器の中で溶けて割れにくくなりました。次回はもっと大量に溶かそうと思います。

焼き物は結構重労働です。重いものを運んだりします。窯詰めの時、窯どめの時、薪準備の時、焼いている時、窯出しの時、正直しんどかったです。

でも最近思うのです。今私がやれている事、後何回やれるのだろうと。だから今出来る事を大切にやらなければいけない。動く体に感謝しなければいけないと。

焼き上がった作品達。釉薬をかけるものは掛けて次回に焼き、素焼きの物は農場内の切り株に飾ろうと思います。もし誰か欲しいと言ってくれる人がいたら、喜んで養子に出します。

ただ作品を作るだけじゃ無く、粘土を掘り出し、松を切りだして割って薪にし、窯の修理をし、釉薬を作る。そう言った全てのことを楽しい、面白いと思ってくれる人、きっと何処かにいるだろうから、出会えるのを夢見て、私が楽しんで楽しんで、これからも楽しい未来を引き寄せていこうと思います。

f:id:nojomallin:20180507085751j:image

-

f:id:nojomallin:20180507085748j:image

ニッコウニッコウ 2018/05/16 17:12 良く焼けて、良かったですね。
森陶岳先生のサイトです。良かったら見てください。
http://moritohgaku.com/

時子時子 2018/05/17 08:39 ニッコウさま
ありがとうございます。
サイト見させて頂きます。日本の焼き物は凄いですよね。ですから自分が焼き物をやっていると日本の方には恥ずかしくて言えません。

2018-04-19 「みたされる心」

雨や曇りでぐずぐずした天気が続いていましたが、ここ数日秋晴れです。曇り空の下では、今年は山も里も紅葉が冴えないなあと思っていましたが、なんのなんの、今は青い空にアンデスの山の紅葉がくっきり浮かびとても綺麗です。里はポプラや柳やブナやリンゴなどの果樹が黄色く輝いて、パタゴニアの秋を彩っています。

今夏は雨が多く、例年よりも大地に湿気があったのか、キクイモが2メートル以上伸び、小さいですが花が咲きました。キクイモはこちらではトピナンブルと呼ばれており、我が家ではあちこちで増え自生しています。とても強い植物ですが、寒く乾燥気味の我が家で花が咲いたのは20年のうち3回か4回くらいです。

このキクイモ、何もせずにどんどん増えてくれるのは有り難いのですが、正直主食となるものではありません。それはとても癖があり、煮ても焼いても炒めても揚げても茹でても生でもあまり美味しいとは思えません。しかも食べるとお腹にガスがたまり、それが気持ちよく出てくれたらまだ許せるのですが、何時迄もお腹の中に留まっているので、結構苦しいものがあります。

けれども1年以上味噌に漬けておくと、そのガス問題も無くなり、キクイモの甘みと味噌の味が絡み合って、べっ甲色のそれはそれは美味しいお漬物が出来るのです。

この時期は収穫した乾燥そら豆で味噌を仕込みますが、同時に少し干して水分を取ったキクイモを底に漬け込みます。

このキクイモ漬けはそのまま頂いても美味しいですが、私はくるみと向日葵の種と黒ごまとネギと生姜とキクイモ漬けを全てみじん切りにしたものに、少量の黒砂糖、時に白ワインを入れ、それらを完熟味噌に混ぜ合わせ「NAMEMISO」なる物を作って楽しんでいます。

この「NAMEMISO」。ご飯にもパンにもよく合い、友人にも結構人気があります。

そしてこの時期は梅干しの天日干しの時期でもあります。梅は気候的に育たないので、プラムで作る梅干もどきです。ただプラムの収穫が夏。作り方は梅干と同じですが、水分が上がってそれから干す時期になると、秋の雨の多い時期にかかってしまいます。今年は天気が悪く、晴れの日が3日と続かなかったので、天日干しが出来ないかとやきもきしましたが、今週は快晴が続き、結構良い感じに仕上がりました。

収穫時期も良かったのか、味も口当たりも私には最高の出来に思えます。でもまあ、味音痴の私の言うことですから、自画自賛で「NAMEMISO」も梅干もどきも、美味しいと言ってくれる少数の友人と自分だけで楽しむ事にします。

旅行したり、登山したり、何かの行事に参加したり、誰かに会いに行ったり、外に向かって行動する事が無くなりました。でもこうして自分なりの暮らしのリズムの中で過ごせる事を、とても幸せだと感じます。

私は私らしく居ることしか出来ないと気づきました。私らしく居れば、例えどんなに時間が掛かっても、私らしさを受け入れ慕ってくれ、見つめる方向が同じの人達が集まってくると信じています。それをドキドキワクワクしながら思う事ができます。

秋の光の中で、自然の恵みを口にして、今までいろんな人達に支えられ、助けられて来たんだなあと感謝の気持ちで一杯になっています。

そんな穏やかな気持ちにさせてくれるパタゴニアの秋。今を大切にしたいです。

f:id:nojomallin:20180423090604j:image

-

f:id:nojomallin:20180423090451j:image

tachinontachinon 2018/04/29 00:02 パタゴニアは実りの秋ですね。梅干しの梅がないのでプラムとは、なるほど・・ですね。多分梅も北海道でも育つようなので植えれば育つのでしょうね。
でも、「樹」は時間がかかりますね。
うちの裏に柚子の食べ残しを埋めておいたら、目が出てましたが、・・・実のなる頃は彼岸の彼方にいるのでしょうね。私は植物のそういうところが好きなんですが。
 株分けしたルバーブのとうがたって、花が咲き始めました。・・・何年か前、鉢に植えられていて、枯れる寸前だった苗を地植えしたら根付きました。でも場所が悪かったりして、数度の植替えしたので、まだ、一度しかジャムにしてないので、今年はルバーブジャム作りたいです。

時子時子 2018/05/03 08:51 tachinonさま
5月ですね。日本はいかがですか?こちらは本当に雨の多い、寒い秋です。
梅は木が育っても実を結びません。気候だけの問題じゃないのでしょうね。
果樹のタネを撒きながら「ああ、この子達が育ち実を結ぶのを見たい!」と思ってしまいます。
以前なら「実を結ぶ日が楽しみだな」とそれが当たり前に来る時に感じていました。
来た道よりもこの先後何回と数える様になったのは、それだけ歳をとったという事でしょうか?

あこあこ 2018/05/05 09:37 こんにちは(*^^*)
私はよく、時子さん今何してるんだろ?テレビの続きみたいなぁ。時子さんってほんと可愛らしくて、でもほんとに凄いな。
ってよく思ってますよ。お世辞じゃなくて。

時子さんって、あのポールさんて人はお友達ですか?前に写真載ってたような?
そして何回もパート11のテレビを見て気づいたのですが、ポールさんの奥さんらしき方が、スタッフの中の方にチラッと写ってますよね?笑
(パート10でポールさんやってたもんで)

日本は、今、山の新緑がきれいです。

空豆でお味噌作れるんですねぇ。
私も、お味噌作ってみたいけど
夏にカビ生えたりしないのか?
それが怖くて挑戦出来ずにいます。


時子さんほんとに文章、可愛らしい(*^o^)

時子時子 2018/05/10 08:53 あこさま
書き込みありがとう。
ポールさん?チリのラフンタのポールさんですか?私はお名前は存じていますが、お会いした事はありません。
2度目のテレビ取材から4年。その後の私の状況は、大きく変わりました。一番大きな変化は、私の覚悟です。今まで自分が如何に人に頼って、何もできず、感謝せず、文句の多いイヤーな人間だったかと反省できた事です。
しんどい事も増えましたが、これからが本番と自分を楽しむ気持ちも持てました。
味噌は殆どの豆でできますよ。今我が家には空豆とえんどう豆、大豆の味噌があります。是非食べに来て下さい。

2018-04-05 「くりかえす季節」

1月に藪の中に咲くブラックベリーの花を見つけました。勿論野生です。街では日当たりの良い道の脇には大きな株になって育っていて、花も実も大きいです。

でも我が家は日陰で寒いので大株はありませんし、数も少ないです。それでも新しい家の西の斜面に少しずつ増えてきています。昨年は実も甘く大きく、摘んでジャムにするほどはありませんでしたが、満足するまで食べる事ができました。

今年は花にも勢いがなく、実も小さく、殆どが熟す前に寒さが来てしまいました。

此処に住み始めた頃は、ブラックベリーの存在に気がつきませんでした。それがどういうきっかけでか最近少しずつ増えて目立つようになってきました。

大きな棘がありますが、ローズヒップと違い毒がなく、小さい棘が皮膚に入り込んでズキズキ痛むなんて事もないので助かります。

花の時期に「ああ、今年も咲いたんだな」と感動し、今「あの花がこうして実を結んだんだな」とまた感動しています。そして時の流れを感じています。

私は人に感動や喜びを与えてもらいますが、同時に心を傷つけられ、虚しさや悔しさも感じてしまいます。どうしようもない虚しさ、悔しさのやりきれない思いの時、自然や生き物を見つめると、その力強さ、優しさ、温かさに心を打たれ、駆け引きのない素直さに元気をもらえます。

今年は花も実も小さかったですが、「そういう時もあるよ。でもそれが何んなの?私の価値はそんな事で決められるの?今年も新しい空やお日様や雨や虫達に出会えて楽しかったよ。それで良いじゃない。」と教えてもらいました。

そうだね。人からどう評価されても、今ある事を素直に受け入れていれば良いんだね。

私を冷たく弾き返す世界もあれば、温かく迎えてくれる世界もあります。そして私を認め、私を温かいと感じてくれる世界もあるはずなのです。

繰り返す季節の中で思います。

今此処にいる事の有り難さ。美しさ。

命というのは本当に素晴らしいと思います。


f:id:nojomallin:20180409002733j:image

-

f:id:nojomallin:20180409002729j:image

tachinontachinon 2018/04/09 20:05  エルボルソンは「実りの秋」なのですね。
 こちらは、スイセンが咲き、コブシも咲き、サクラも咲いて、フキノトウはとうがたってしまいました。
「花粉症」の季節も間もなく終わり、さあ、外に出て歩くぞ・・・です。
 ブラックベリー 写真を見ると、桑いちご、バラいちご、みたいにも見えますよね。・・もちろんこちらでも植えているところありまずが・・・柿も、柚子も「当たり年」とかってありますから、「毎年たわわに実がなる」訳ではないので仕方ないですよね。

 人には「期待しなければ失望もしない」のかなぁ・・でも、それは寂しい生き方なのかもしれないけれど・・・まぁ「しゃぁないか・・・」(仕方がないか)・・ですね。
 そのほかの生き方できないし・・・なんて・・私は思っています。
パタゴニアからの季節の便り、毎回とてもたのしく読ませてもらっています。「憧れの地」は、遠くにありて・・・なのかもですね。

時子時子 2018/04/16 08:37 tachinonさま
いつもありがとうございます。
私は勝手にブラックベリーと訳しましたが、桑いちご、バラいちごの仲間なのかもしれません。と言っても、私、そのどっちらも知らないんですが…。
アンデスの山には雪が被り、いつもより寒い秋を迎えています。
若い頃は寒いのが大好きでしたが、最近ではあまり厳しい冬は嫌だなあと思ってしまいます。
日本は新緑の美しい過ごしやすい季節ですね。

2018-03-22 「うけとる自然の恵み」

春先低温で雨が多かったせいか、花は咲いても実を結ばなかったプラムやリンゴの木が沢山あります。加えて、かっかっと照る太陽の眩しい真夏日も数えるほどしか有りませんでした。

果樹の木を見ながら、今年は寂しいなと思っていましたが、今頃になって紫に色付いたプラムの実が目につく様になりました。例年より3週間以上遅れました。実を結んだのは数本ですが、実の重みでしなった枝を見上げて自然の逞しさを感じています。

その場でパクパク食べるのが一番好きで美味しいです。我が家のワンコ達も果実が好きです。私の手から食べるのが好きで、美味しそうに目を細めて食べる姿を見ると、「幸せをありがとう」と思わずにはいられません。収穫初めの頃は争って食べていましたが、落ちた実が地面に転がっている今では、まだ若い物、甘く無い物をあげるとぺッと吐き出します。その姿が可愛くて、時々若い実をわざとあげて意地悪をしてしまいます。

生食だけでなく、梅干しも5キロ程仕込みました。そしてジャム作りもしています。甘い物が大好きですが、持病の関係で食事療法をしていて甘いものは制限しています。ですから自分ではあまり食べませんが、せっせと作っています。それは自慢できるものがあまり無い私の、数少ない自慢がジャムだからです。

私のジャムは、2キロしか果実が入らない厚手のホーロー鍋で作ります。まず種を取った実を薪ストーブの上でゆっくり煮詰めます。決して直火にかけません。実が煮崩れて水分が無くなり、焦げ付く寸前に果実の重さの80%の砂糖を入れます。そして再びゆっくりかき混ぜながら煮詰め、固すぎず、柔らかすぎずの時に、洗ってストーブの上で温めておいた瓶に熱いうちにジャムを詰め、直ぐにきっちり新しい蓋をして、冷めたら食料庫に保存するのです。

瓶を湯煎にかけて殺菌した方が良いのかもしれませんが、この方法で今まで問題なく保存出来たので、ズボラな私はした事がありません。

一度に大量に作れませんから、シーズンには何回も作ります。収穫して、ゴミを除いて、種を取って、時間をかけて煮る。この一連の作業が楽しくて仕方ありません。

私の料理は不味いと言って食べない人もいますが、ジャムだけはみんなが「美味しい」と言ってくれます。

けち臭いかもしれませんが、友人達へのお土産はいつもこのジャムです。

この子は誰のところに行くのかな?どこへ行くのかな?そしていつ、そんな風に食べてもらえるのかな?と楽しい想像をしながら作っています。

重い物ですし、あげられる人もあまりいませんから、一年で無くなる程度の数しか作りませんが、ジャム食べに来たよ!と言ってくれる人が増えて、ここが賑やかで気持ちの安らぐ場所になっていったら、きっと楽しいだろうと思っています。

まだまだプラムの実は木についていますが、プラムジャムは結構作れたので、次はりんごのジャムを作ろうと思います。これこそ完全無農薬、無肥料、野生の果実のジャムです。

パタゴニアの自然の恵みを受け取って、私の幸せ作業は続きます。

f:id:nojomallin:20180323090310j:image

-

f:id:nojomallin:20180323090307j:image

tachinontachinon 2018/03/25 10:03 毎回楽しく読まさせていただいてます。
パタゴニアは、実りの秋なのですね。
 おいしそうなプラムですね。「ほわったらかし」に近い状態でこの位の実がなるの・・・・ということは、土地や気候があっている、ということなのでしょうね。
プラムのジャムも美味しそうですね。
 パンにつけたり、ヨーグルトにまぜたりしたら・・・涎が出そうです。
 しかし、時子さんも携帯電話を持っているというそういう時代なんですね。・・・私は携帯電話を手放すにはどうしたらいいか?思案するものの・・・それは、一寸無理なようですね。
 車のほうはやめてスクーターのみにして、なんとか1年経つのですが・・・・
 時子さんのところは、自転車(マウンテンバイク)は使用可能な環境・・道路の勾配とか・・なのでしょうか?携帯電話の通じるところまで歩いて30分は大変ですよね。

T 2018/03/27 00:51 メールしました。

時子時子 2018/03/29 08:40 tachinonさま
いつもありがとうございます
今はリンゴジャムを作っています。私はこちらの飲み物マテ茶に少しジャムを入れて飲んでいます。
ガソリン代が上がり、若い人は自転車を利用する人が増えました。砂利道で坂ですから大変です。

時子時子 2018/03/29 08:59 Tさま
残念ながらメール届いていません。
もう一度送って頂けませんか。お願いします

T 2018/04/01 11:09 何度かメールを送ったのですが、配信できないと連絡がきます。こちらでは、原因がわかりませんので、以前いただいた違うアドレスに再度おくりました。
届かないようでしたら、連絡下さい。

2018-03-07 「そまる指先」


動物は好きでした。子供の頃から犬や猫を飼っていました。日本では観光牧場で牛や馬、小動物の世話をする仕事をしていました。とても楽しかったです。でも植物には余り興味がありませんでした。花を育てたり、野に咲く花を愛でたり名前を覚えたりする事はありませんでした。

でもパタゴニアで緑に囲まれた暮らしの素晴らしさを知りました。植物の心を少しは感じられる様になりました。共に過ごす時間の安らぎ、楽しさを知りました。

パタゴニアは秋に向かい始めています。昨年は果樹の大豊作でしたが、今年は春先の低温でか実を付けていないものが多いです。勝手な解釈ですが、植物達が実を余りつけないのは、無理して子孫を残さなくても安心して繁栄していける環境だと判断したからで、きっと豊かな冬と春が訪れると思っています。

リンゴやプラム、桃や花梨は毎年ジャム、ドライフルーツにしています。以前はリコールにつけて果樹酒にしたり、発酵ジュースを作ったりもしていましたが、今は飲まなくなったので作っていません。

果実以外にも生食出来る実を付ける自生の木があります。その代表が「マキ」と呼ばれる木です。

一本が大きく真っ直ぐ育つのではなく、株の様に何本もの幹が出て、大木にはなりませんが、5m6mと伸びていきます。強いのか弱いのか、枯れてしまうものも多いですが、株が死んでしまうことはなく、何本かは必ず残り、新しい芽を出していきます。

枯れた幹は私でものこぎりで引きやすい太さで、薪にしてもシプレスの様に爆ぜる事はなく、松の様に煤が溜まる事もなく、ポプラや柳の様にあっという間に燃え尽きてしまう事もないので、とても扱いやすい木です。

この木は春に葉が紅色に変わり、春の紅葉を楽しませてくれます。そしてこれはチリ人の方に教えてもらったのですが、葉はお茶にもなります。そのまま葉をかじると口の中で粘って、多少渋みはありますが天然のガムの様です。花は小さく白く、よほど気にしていないと見過ごしてしまいます。けれどもそれが実になると、一気に注目を集めます。

鮮やかな紫色の小さな実は、熟すととても甘くて美味しいのです。野鳥も大好きです。そして紫の鮮やかな色のフンを車の窓ガラスなどに残していきます。村の子供達も口や手や服を染め食べていました。ただここパタゴニアでも最近の子は室内でコンピュータばかりしていて、以前の様に泥んこになって遊ぶ子がいなくなって寂しいです。

種が大きくジャムにすると少し食べにくいので、私は蜂蜜に漬けて紫の天然ジュースを作っていました。この液を使うと薄紫色の綺麗なスポンジケーキが作れました。

歳をとり、小さな実の収穫が大変になって来たことと、ケーキを焼く事もなくなったので、ここ数年は散歩の途中に実を摘んで口に放り込むだけになってしまいました。

今年は熟す時期が2週間ほど遅れ、今が最盛期です。

実を摘むとそれだけで指先が紫に染まります。染まった指先を見ながら、いつまでもこうして、何の躊躇もなく木からそのまま実を口に入れられる環境をこれからも残していくべきだと、それが私たちの義務だと感じています。


f:id:nojomallin:20180308224034j:image

-

f:id:nojomallin:20180308224031j:image