金井美恵子『快適生活研究』

ポール・ギルロイのサイコロみたいに分厚い『ブラック・アトランティック』も読まなければいけないし、図書館から借りた貴重書、ルネ・マランのBatoualaにも目を通さなければいけないし、他にもいろいろあるけど、年末に少しぐらいこういう類を読んだっていいでしょ?
ということで、あっという間に読み終えてしまった。
学期中にちょっと読み始めてみたのだが、老嬢のとりとめないおしゃべりみたいな感じに乗れず、初めのところで中断していたのだ(昔はそんなことありえなかったのに)。
ちょっと妄想じみた初老の女性の、何日分もの日常をつづった一方的な手紙。
どこか狂っていておかしい。
とはいっても…
自分の繊細さを特権的にふりかざして自足している「お嬢ちゃま上がり」な態度、っていうか文藝ガーリッシュそのものな態度って、もはや私はぴったりは共感できないわ。
あの『文章教室』の桜子がこの20年で進歩したのはどうやら料理の腕だけみたいだし、『小春日和』の桃子がようやくフリーターを脱して就職できたのが地方の女子大の英語非常勤講師とは……泣ける(そういうのは就職とはいいません)。
桜子と恋仲だった新人作家・善彦は出てこないんだなあ。
金井美恵子にとって書くべき対象は、フローベール的凡庸さをもった人間だけだものね。
「ジャンスカ」(2000年代の女の子なのに)とか「カフェ・ラ・テ」とか「メルビル」とか「コンプレ男」とかの表記、揚げ足を取るようだけれど気になる。

師走っていうのは本当に追い立てられるようでいやだ。
仕事が済んだら、ごみ出しに買い出し。
バゲットにカフェオレかなんかでさらっと新年を迎えられる、一族ぐるみでインテリな人々がうらやましい。
今日は何軒も回ったのに丸ごと一羽の鶏を買えなかった(すんでのところで買われてしまう)。
こればかりは喜んでくれる人たちがいるので例年焼いているけれど、何が大変ってクリスマスじゃない時期に丸鶏を入手するのが一番大変だ(焼くのは意外と簡単)。