バルトの楽園

 wowowで「バルトの楽園」を観る。
 捕虜収容所もの。
 捕虜になるのは、第一次世界大戦、青島島で投降した4700人のドイツ兵。
 徳島俘虜収容所所長、のちの板東俘虜収容所所長を務めた松江豊寿(まつえ・とよひさ)の物語である。松江はドイツ人捕虜に対して人道的対応をしたことで有名。物語のクライマックスは、終戦後、松江の扱いに感謝したドイツ兵たちがオーケストラを結成して「第九」を演奏するところだ。だから、「楽園」は「がくえん」と読む。
 ストーリーは松江の人道的な態度がどこから生まれたのかを追っていくが、推測の域を出ていないような気がした。実話に基づくせいか、対立もなく、展開もない。ただただ、理想的な収容所運営が描かれる。

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オーメン 666

 2006年アメリカ。「オーメン」第一作のリメイク。
 06年06月06日世界同時公開をやりたかっただけなんだろうなあ、と思わせるに十分な作品。
 ラストがセコいのは、オリジナルのままだろうか。観ていないからわからないのだった。
 子役のシーマス・デイヴィー=フィッツパトリックは、ダミアンっぽくて良。乳母のベイロック夫人も怖い。総じて悪魔側がよくて、キリスト教側がダメだった。わざと?

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恋せども、愛せども

 wowowのWドラマ、再放送。
 血のつながっていない女ばかりの四人家族を描く。
 女優陣が豪華。「メッセンジャー」で好感を持った京野ことみがいい役で出ているので観た。
 内容はなあ。
 印象に残っているのは金沢の雰囲気と京野ことみの表情だけというと言い過ぎですが、そんな感じです。
 「京野ことみの口元はいいなあ」
 などと思っているうちに過ぎる二時間。
 意外性も仕組まれているけど、「使い古されて驚けない意外性」だったりして。少女マンガでさんざん読みましたよ、こういうのは。
 いい人しか出てこないので、ドラマ的にはなしだと思います。残念。

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イヴの贈り物

 wowowのWドラマ、再放送。
 上のリンク(公式ページ)にこういうコピーが書いてあります。
 「全てを失った男の哀切が胸に迫るピュアなラブストーリー」
 ダメだろ、そのコピーは。
 意地でもラブストーリーにしないところに、このドラマのほとんど唯一の存在価値があるのに。
 館ひろし主演。
 私、石原軍団関係は嫌いです。でも、喰わず嫌いはいかんなと思って、とりあえず観てみて、やっぱりダメだと思った。軍団方面、鬼門かも。
 何ヶ月か前ですけど、村上春樹の新訳で「ロング・グッドバイ」を読んだわけです。ハードボイルドの巨匠チャンドラーの代表作で、私立探偵フィリップ・マーローの物語。あまりにも素晴らしくて感動しちゃったわけですが、感動したものってなかなか感想が書けない。感情が単純じゃないですから。
 それでも、一点だけ挙げるとすれば、マーローのセリフ回し。洒落ていて、タフで、なんて頭がいいんだろうと思わせる。感情も繊細だし。
 「イヴの贈り物」もいちおうハードボイルドの範疇に入る作品のはずなんだけど、頭が悪い。頭の悪いハードボイルドほど空しいものはない。
 あと、ドラマの作り手が逃げすぎ。ステルス性胃ガンが見つかり、余命幾ばくもないと分かったから、復讐を誓う。じゃあ、病気になってなかったら、時間をかけて記憶を風化させた? そんないい加減な動機は認められない。
 途中で、館ひろしの復讐心をかき立てるためだけに、貫地谷しほりを自殺させてしまうのは大失敗。
 反対でしょう。やさしいおじさんを演じる館ひろしを被害者にして、貫地谷しほり自身が復讐しなきゃ。せっかく貫地谷しほりをいい女、強い女に描いたらのに、これじゃあまりにも女を馬鹿にしすぎ。
 役者寸評。

館ひろし 黙ってりゃいいってもんじゃない
貫地谷しほり 極貧故の歪みと優しさを繊細に表現
手塚理美 無難
石倉三郎 いい役。ちょっと前に出すぎかも
宇崎竜童 この作品中唯一ハードボイルドを表現
大沢樹生 ギラギラした存在感が印象的

 ということで、マイベストアクターは宇崎竜堂です。この作品に関しては。

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