wowowで「バルトの楽園」を観る。
捕虜収容所もの。
捕虜になるのは、第一次世界大戦、青島島で投降した4700人のドイツ兵。
徳島俘虜収容所所長、のちの板東俘虜収容所所長を務めた松江豊寿(まつえ・とよひさ)の物語である。松江はドイツ人捕虜に対して人道的対応をしたことで有名。物語のクライマックスは、終戦後、松江の扱いに感謝したドイツ兵たちがオーケストラを結成して「第九」を演奏するところだ。だから、「楽園」は「がくえん」と読む。
ストーリーは松江の人道的な態度がどこから生まれたのかを追っていくが、推測の域を出ていないような気がした。実話に基づくせいか、対立もなく、展開もない。ただただ、理想的な収容所運営が描かれる。
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イヴの贈り物
wowowのWドラマ、再放送。
上のリンク(公式ページ)にこういうコピーが書いてあります。
「全てを失った男の哀切が胸に迫るピュアなラブストーリー」
ダメだろ、そのコピーは。
意地でもラブストーリーにしないところに、このドラマのほとんど唯一の存在価値があるのに。
館ひろし主演。
私、石原軍団関係は嫌いです。でも、喰わず嫌いはいかんなと思って、とりあえず観てみて、やっぱりダメだと思った。軍団方面、鬼門かも。
何ヶ月か前ですけど、村上春樹の新訳で「ロング・グッドバイ」を読んだわけです。ハードボイルドの巨匠チャンドラーの代表作で、私立探偵フィリップ・マーローの物語。あまりにも素晴らしくて感動しちゃったわけですが、感動したものってなかなか感想が書けない。感情が単純じゃないですから。
それでも、一点だけ挙げるとすれば、マーローのセリフ回し。洒落ていて、タフで、なんて頭がいいんだろうと思わせる。感情も繊細だし。
「イヴの贈り物」もいちおうハードボイルドの範疇に入る作品のはずなんだけど、頭が悪い。頭の悪いハードボイルドほど空しいものはない。
あと、ドラマの作り手が逃げすぎ。ステルス性胃ガンが見つかり、余命幾ばくもないと分かったから、復讐を誓う。じゃあ、病気になってなかったら、時間をかけて記憶を風化させた? そんないい加減な動機は認められない。
途中で、館ひろしの復讐心をかき立てるためだけに、貫地谷しほりを自殺させてしまうのは大失敗。
反対でしょう。やさしいおじさんを演じる館ひろしを被害者にして、貫地谷しほり自身が復讐しなきゃ。せっかく貫地谷しほりをいい女、強い女に描いたらのに、これじゃあまりにも女を馬鹿にしすぎ。
役者寸評。
館ひろし | 黙ってりゃいいってもんじゃない |
貫地谷しほり | 極貧故の歪みと優しさを繊細に表現 |
手塚理美 | 無難 |
石倉三郎 | いい役。ちょっと前に出すぎかも |
宇崎竜童 | この作品中唯一ハードボイルドを表現 |
大沢樹生 | ギラギラした存在感が印象的 |
ということで、マイベストアクターは宇崎竜堂です。この作品に関しては。