生物多様性条約締約国会議のボイコットを強く呼びかけるシー・シェパード

 今秋名古屋で開催予定である生物多様性条約締約国会議への出席ボイコットを呼びかけるシー・シェパードの声明が出たので、和訳を付した上で、クリップします。

 生物多様性条約は、(1)生物多様性保全、(2)生物多様性の構成要素の持続可能な利用、(3)遺伝資源の利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分、を目的とする国際条約であり、条約加盟国は、生物多様性保全と持続可能な利用を目的とする国家戦略を作成・実行する義務を負います。日本はこの条約を平成5年に批准しており、条約に基づき、2007年11月に「第3次生物多様性国家戦略」を閣議決定しています。

 今秋には、日本政府がホストとなり、名古屋で第10回締約国会合を開催します。ちなみに、歌手のMISIAさんが「生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)名誉大使」として、国連事務総長から任命されています。

シー・シェパード生物多様性条約締約国会議のボイコットを強く促す


 10月に、日本は生物多様性条約締約国会議を名古屋にて主催する。


 シー・シェパードは非政府組織(NGO)に対して、生物多様性保全することに対し真摯な態度を取ろうとするなら、この会議をボイコットするべきと、強く促しているところだ。
 

 「私たちは、名古屋の締約国会議において、先般カタールで開かれたワシントン条約締約国会合で行われたことと同様のことを、日本に絶対させてはいけない」と、シー・シェパード創始者ポール・ワトソン*1が語っている。「日本は経済合理性を優先したえせ科学の実践に成功し、(ワシントン条約上における)提案された、海洋動物の絶滅危惧種への掲載を止めさせる投票を強行することによって、ワシントン条約の信頼性を失墜させた。私たちは、条約議定書の内容を牛耳ることになる、名古屋の締約国会議を信頼することが出来ない。日本は生物多様性保全に関心はない。日本の関心は、生物種の減少と引き換えに経済的利益を享受することにある。」と語っている。
 

 数週間にわたる集中討議と6週間にわたる準備を終え、今週、「遺伝資源へのアクセスと利益配分(ABS)」に関する議定書原案*2が、コロンビアのカリで開かれた、生物多様性条約の作業部会において、作成された。この原案は、名古屋で間もなく開催される締約国会議において、採択を目指すものだ。


 このことが意味するのは、(条約議定書が目指すのは)公平な利益配分であり、減少や絶滅から生物を守るものでない、ということだ。


 条約議定書原案は、まだ公開されていないが、「アクセスと利益配分(ABS)」を取り扱うものであり、経緯としては、製薬業、農業、園芸業、バイオテクノロジーといった開発途上国のセクター間で、対立してきたテーマだ。


 ABSは、植物にせよ、動物にせよ、あるいは、細胞等生物の微小要素にせよ、遺伝資源へのアクセス方法、及び、研究機関、大学、私企業が遺伝資源を利用することにより生み出される利益を、資源を提供する人や国とどのように共有していくかについて、規定するものである。


 このサミットなるものは、生物種からの搾取に焦点を充てるものであり、保護と保全にまったく関心が払われていない。


 環境問題を取り扱う国際会議は、1972年のストックホルム会議*3に始まり今日に至るまで、何か成果を挙げるのにことごとく失敗している。1992年のリオ*4は失敗した。コペンハーゲン*5も失敗した。ワシントン条約締約国会合も失敗したし、名古屋会議は、生物多様性の減少を食い止める意味では完全に意味をなさない結果になるだろう。

 
 「この会議は、生物からの過剰な搾取に対し最も無責任であると断定でき、国際約束を忠実に履行できず、ワシントン条約締約国会合や国際捕鯨委員会の投票の工作を図る、日本に対してある種のお墨付きを与えるものだ。」とポール・ワトソンは話す。


 この会議に参加するすべての非政府組織(NGO)は、絶滅危惧種保全に対して責任と権限を持つ機関を牛耳ろうとする日本の取組に対し、支援と支持と承認を与えるだけの結果になる。


 「私は、グリーンピース世界自然保護基金(WWF)、コンサベーション・インターナショナル等の規模が大きな非政府組織に対し、会議に出席せず、また、名古屋で行われる言葉遊びに正当性を与えることのないよう、主張する」とポール・ワトソンは語る。「今まさに、地球と絶滅危惧種に対して何も意味のない会議に出席を止めるべき時である」

 

*1:シー・シェパードの代表。過去に国際環境団体グリーンピースに在籍するも、脱退

*2:毎日新聞の報道によれば、遺伝資源の原産国に利益が確実に配分されるよう、各国が法律などを定めなければならないと規定。企業や研究機関が資源を探索する際には、原産国の事前了解を得るとともに文書で契約を結ぶよう求める。不正利用に対しては、資源の利用国と原産国が協力して取り締まる。また、得られた利益については、生物多様性保全と持続可能な利用に使うことを促進するよう各国に求める。

*3:「かけがえのない地球 (Only One Earth)」をキャッチフレーズとして、国際環境法の基本文書とされる人間環境宣言の採択や、国連環境計画(UNEP)の設立を決定

*4:ブラジルのリオ・デ・ジャネイロで開催された環境と開発に関する国際連合会議(UNCED)(国連地球サミット)のこと。「環境と開発に関するリオ宣言」が採択。地球規模で環境と開発を調整する持続可能な開発の概念が中心である

*5:ポスト京都議定書について議論した、第15回気候変動枠組条約第15回締約国会合のこと