イアン・スチュアート『若き数学者への手紙』

曇。のち雨。
音楽を聴く。■モーツァルト:ピアノ協奏曲第八番 K.246(内田光子、テイト、参照)。このモーツァルトのピアノ協奏曲での内田光子は、おもしろいのだかつまらないのだかよくわからないな。立派な演奏なのは確かなのだが。予想していたのより退屈と云えば退屈。でも、聴いて悪いことはないし。■モーツァルト交響曲第三十九番 K.543 (オイゲン・ヨッフム参照)。■C.P.E.バッハソナタ変ロ長調 H.25、ハ短調 H.27 (ダニー・ドライヴァー、参照)。おもしろくて仕方がない。確かに大バッハの息子なのだが、ハイドンにもよく似ている。音楽史的に見ると、かなり重要な作曲家なのではないか。それを措いても聴いていて耳を惹きつけられる。■ラフマニノフ交響曲第一番 op.13 (ウラディーミル・アシュケナージ、コンセルトヘボウ管)。ラフマニノフと云えばピアノ協奏曲第二番、第三番ばかりではつまらない。これは自分の感性になくて、得るところが大きかった。アシュケナージのロシア物は、予想どおり悪くない。蕩けるような柔らかい音で聴かせる。わりと長い曲だがあっという間だった。

Rachmaninov: The Symphonies

Rachmaninov: The Symphonies

  • アーティスト: Tom Krause,Sergey Rachmaninov,Vladimir Ashkenazy,Amsterdam Concertgebouw Orchestra,Natalia Troitskaya,Ryszard Karczykowski,Concertgebouw Chorus
  • 出版社/メーカー: Decca
  • 発売日: 1998/02/10
  • メディア: CD
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イアン・スチュアート『若き数学者への手紙』読了。冨永星訳。イアン・スチュアートは自身が優れた数学者でありつつ、同時に優れた啓蒙家であるという存在である。そう云えば、自分も先日著者の本業に関する教科書を読んだのだった。本書は数学の道に進みたいと考えている若き女学生メグからの手紙に、著者が答えたという形になっている。小説で云うと、連作短篇集みたいなものだ。本書は全部で 20の返信から成っていて、メグのステップアップに寄り添いながら、数学のあらゆる側面(浮世離れしているところから、助教授としての振る舞い方まで)に関するアドバイスが読めるし、それはまた一種の数学論になっている。もちろん数式などはひとつもないけれど、中身はかなり高度なことまで書かれていて、自分のようなオタクにも非常におもしろかった。それで、著者は数学者になるには才能が不可欠であるのを隠さないが、まあ当然のことであろうなと思う。それは、努力で何とかなるものではないと。実際、著者が優秀なのはこういうものを読んでいても明らかで、本書は肩の凝らない本だと言いたいところであるけれども、じつは自分には結構しんどかった。
 それから、特筆すべきは訳者の力で、大変に読みやすく、かついきいきとした文章になっている。冨永星さんというのは、よく知らないが力量のある方のようで、読んでいて感心させられた。まるで初めから日本語で書かれたかのように読める。それにしても、イアン・スチュアート氏のように、一流の学者でかつ一流の啓蒙家というのは欧米に少なくなくて、文化の厚みを感じさせる。日本にも色んな人が居るが、優秀な人は多いけれど、啓蒙家としてのレヴェルでスチュアート氏ほどの人はひとりもおるまい。それは、数学の分野だけに限らないと思う。
若き数学者への手紙 (ちくま学芸文庫)

若き数学者への手紙 (ちくま学芸文庫)


反知性主義3 Part 2: 内田編『日本の反知性主義』:白井聡の文は、無内容な同義反復。他の文は主に形ばかりのおつきあい。 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
まあおもしろかったけれど、御苦労なことだと思う。僕には殆どどうでもいい。しかし、誰かがやった方がよいことを、情理兼ね備えた論理的な文章で展開しているのは、さすがだとは思う。僕にはもちろんできない。しかし山形さん、日本の知識人の「知的堕落」ということをよほど苦々しく思っておられるのだな。よくこの言葉を使っているのが読まれる。頭のよろしい上に、論理的思考のできるための苛立ちであろう。ちなみに僕は高橋源一郎さんは好きである。山形さんほど切れないが、この人なりの知的誠実さはあると思うし、この人は山形さんとはまた別の面で stupid になれる人だから。だいたい、源一郎さんはまず滅多に肯定されることはなくて、これまでどれほど軽んじられ、バカにされてきたことか。僕はそれはあまりにも不当だったと思っている。この人も誰に云われたわけでもなく、誰かがやった方がよいことを黙々とやってきた人だと思っているから。ま、この本では下らない文章を書いているそうですが。
 それにしても、自身「エリート主義」と仰っているとおり、山形さんは知識人の機能というものを信じておられるのだな。まあ自分には関係のないことである。

これまで音楽を聴くのだけは Linux でなく、コーデック強化した Windows Media Player を使っていたのだが、LinuxAlsaPlayer というのを使ってみたらとても好みの音だったので、ここにメモしておきます。OS は Linux Mint 17.2 で、「ソフトウェアの管理」から「alsaplayer-common」をインストールしました。コマンドで sudo apt-get install alsaplayer-common でもいけるようです。しょぼいですが gtk により一応 GUI 化されています。特に何もせずヘッドホンで聴いているだけですが、Media Player よりもいい音ですね。いままでの Banshee や VLC メディアプレイヤーでは聴く気がしなかったのですが、これなら音楽も Linux で済ませられそうです。ただし、使えるコーデックは限定されているようです。そこは残念。