【読書日記】外資系金融の終わり

外資系金融の終わり―年収5000万円トレーダーの悩ましき日々

外資系金融の終わり―年収5000万円トレーダーの悩ましき日々

金融日記の藤沢氏の最新作。
「年収5000万円トレーダーの悩ましき日々」のサブタイトルに惹かれて購入。

前半はマクロな話で、主に「Too big to fail」(大きすぎて潰せない)がどんな問題を抱えているのかを解説。
経済危機は資本主義の失敗という事ではなくて、「Too big to fail」の原理を利用して投資銀行が(実際は政府が補填するから存在しない)リスクを取りまくってリターンを得ればいいっていうモラルハザードが起きてるからなんだよという話。
しかしトレーダーが初任給で1,000万円〜の給料をもらって、トップクラスはその年の稼ぎに応じて年収100億円とかそんな大盤振る舞いしてたらそら潰れるだろ。
本書でも言及してたけど、トレーダーのリスクなんて最悪クビになるだけだけど、会社のリスクはポジション次第で数千億円に膨れてるとかみんなリスク取りに行くって。

中盤からはギリシャ危機とかの部分を「Too entangled to fail」(絡みあいすぎて潰せない)というフレーズで解説。
一つがバンザイしちゃうと連鎖的に全部潰れちゃう構造になってしまっているから輸血し続けないといけないけど、それだけだと結局借りたもん勝ちで何も改善されないよねっていう。
逆にギリシャも開き直って「潰したらどうなってるのかわかってるのか」ばりに脅しに来てるっていうならず者国家っぷりを発揮してるとか。
そうそう、EUに加盟する条件で「財政赤字GDP比3%位ならいーよ」って言うのをクリアしてたはずなのに、新首相のパパレンドウさんが「前政権が粉飾してました実は13%ありました\(^o^)/」って暴露したせいでギリシャ・ショックの引き金を引かれたということなんだけども、実はこの粉飾にゴールドマン・サックスが大きく関与してましたっていうのは初耳で面白かった。
どう関与してたかというと、特殊なクロスカレンシースワップ(異なる通貨間の元本と金利を交換する取引)で何だけども、普通は1億ユーロをギリシャがGSに、100億円をGSがギリシャに渡してその間の金利をそれぞれが受け取り、償還するときに元本の1億ユーロと100億円を再度交換するわけ。(よく分からなかったら図解をググってください)
これをメチャクチャな形で発展させた商品をGSが作ってて、最初に例えば2億ユーロをGSからギリシャが受け取り、100億円(等価じゃないことがポイント!)をギリシャがGSに渡す。そしてその間の金利を交換しあい、最後に元本を戻すと。
これがギリシャのB/S上に乗ってくれば別に問題はないと思うんだけど、EUの財務データ開示ルール上、最初に入ってきた2億ユーロを現金収入として処理して、差額の1億ユーロを債務残高に加えなくてもいいという!

なんだってー(AA略

完全に借金じゃん!デリバティブの将来支出は計上しないとか、これ完全にただのローンじゃん!

とまぁ金融業界と政府に絶望しますよね。
他にもサブプライムCDSの解説とか、外資系の人たちの実態を分かりやすく書いてあって読み物としてよかったと思います。

面白かったのはトレーダーはケチが多いっていう件で、年収5000万稼いでるのにかたくなにデートは割り勘を貫いているという筆者の友人とのやり取りで、

「しかしだよ、山田くん、たった1万円、ふたりで合計2万円ぐらいだよ。この2万円だけでその後にセックス出来る確率がグーンと上がるなら、高くないと思わないのか。場末のソープランドに行って受付においてある写真とは似ても似つかないモビルスーツみたいな女と一発やるのに3万円ぐらいするご時世だよ。ディナーをおごるのは戦略として全然悪くないんだ」僕は少々語気を強めて言った。
「藤沢くんの言うことはもっともだよ。一理も二理もある。でも、本当に大切なことは、割り勘を要求することによって、金が目当ての女が向こうから去っていってくれることなんだ。僕はこうやって女をスクリーニングしているんだよ」山田くんは誇らしげに答えた。


これはちょっと見習いたいな・・・。