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2019-01-16

安藤サクラの記念碑的作品『百円の恋』を改めて観る(「シネマの女は最後に微笑む」第29回)

こちらでのお知らせ、数日遅れてしまいましたが。。

映画から現代女性の姿をpickupする「シネマの女は最後に微笑む」第29回は、安藤サクラが数々の主演女優賞に輝いた『百円の恋』(武正晴監督、2014)を取り上げました。話の枕は、この間炎上した西武そごうの広告の件です。


コミュニケーション不全の女が求めた、言葉を越えた熱いやりとり - ForbesJAPAN


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安藤サクラが演じる一子を筆頭に、登場する人々の中途半端なダメさ加減がさまざまなかたちで描かれます。相手役の新井浩文もダメな男。立派な人が一人も出てこない(笑)。

観ているうちに、そうした緩いダメさで構成された空間が、なんとなく心地よくなってきます。私もダメな人間だからでしょうか。


一子は見ていて結構イライラさせられます。後半は見違えるように挽回していくものの、最後でベソベソ泣くんだなぁ。まあキリッとしたらそれはそれで変ですが。

あのラストに被る歌がかなりベタで私の好みではありませんが、安藤サクラの全然きれいじゃない泣き方があまりにリアルなので良し、です。


引きこもり続けて、全力をかけること、そして勝ち負けをはっきりさせることからずっと逃げてきた女が、勝ち負けがもっともはっきりするゲームにトライして、負けた。そのことをとてつもなく「悔しい」と感じる境地に、初めて立った。つまり人との関係性をそのようなかたちで受け止めることで、自分の生に改めて向き合った。

‥‥‥というのが王道的解釈と思いますが、そういう批評はわりと多そうなので、少しずらした観点から書いています。どうぞよろしくお願いします。

2018-12-23

ドヌーヴの貫禄と多面的な魅力が光る『ルージュの手紙』

映画から現代女性の姿をpickupする「シネマの女は最後に微笑む」第28回は、カトリーヌ・ドヌーヴとカトリーヌ・フロが共演した『ルージュの手紙』(マルタン・プロヴォスト監督、2017)を取り上げています。原題は『Sage femme』(助産婦)。


セーヌの流れに交錯する生と死、出会い直す二人の女 | ForbesJAPAN


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ドヌーヴがとにかく素晴らしい!

助産婦のシングルマザー(フロ)と彼女の亡き父親の恋人だった女性(ドヌーヴ)との、微妙な関係性の変化を描きつつ、それら人間模様を大きな世界の中の点景として、遠くから眺める視点を時折挿入しているところも秀逸。


再生産に関わる女と関わらない女の生き方の対比はやや類型的ではありますが、それをカバーして余りある女優の演技で見せています。私は人間のタイプとしては前者に近いですが、子供がいないことと、ドヌーヴの演じる女性の多面的な魅力もあって、後半は後者に感情移入していきました。

単なる和解のハッピーエンドで終わらない、若干ビターな余韻も深く、平凡な言い方ですが「ああ大人の映画だな」と感じ入ります。


実際の出産シーンが何度かあるので、そういうのが苦手な人は要注意かもしれません。

あと邦題がやはり今ひとつの感じ。『助産婦』では難しいとは言え、「ルージュの」ときたら日本では「伝言」ですよね。

2018-12-08

共同体によって殺され、共同体によって生かされる(「シネマの女は最後に微笑む」更新されました)

映画から現代女性の姿をpickupする連載「シネマの女は最後に微笑む」第27回は、アメリカ移民格差問題を枕に、2010年の『ウィンターズ・ボーン』を取り上げてます。ジェニファー・ローレンスヒルビリースコッチアイリッシュ系移民)の少女を演じて注目を集めたサスペンスドラマ。


アメリカの「知られざる移民」 掟に抗う少女のサバイバル | ForbesJAPAN



本文では触れていませんが、ヒルビリーの生活のひとこまとして、人々がカントリーミュージックを楽しむシーンが挿入されており、全編を覆う殺伐としたトーンの中でそこだけが人間臭さと温かみを感じさせ、印象に残りました。

しかし音楽に流れる血は、主人公のリーが殴られて流した血でもあります。


暴力と救済が、表裏一体のものとして描かれています。

ヒロインの窮状を救った金は、彼女への制裁を帳消しにするものであり、一種の口止め料の役割も果たす。一応はハッピーエンドになっていますが、諸手を上げて喜んでいいのかどうかわからない微かな息苦しさも孕んでいます。

途中まではどことなくアンティゴネーっぽい構図。しかし最終的に、無力なヒロインは共同体の残酷さを受容するかたちになります。むしろそれを自身も次第に身につけて大人になっていくのだろう、彼女がここにいる限りは‥‥などと考えさせれます。


ジェニファー・ローレンスの骨太感がとてもいいです。ハスキー犬のような瞳と、田舎のタフな女の子を演じられる鼻柱の太さが魅力的。

2018-11-25

イカれたヴァレリア・ブリーニ・テデスキが最高に輝いている(「シネマの女は最後に微笑む」第26回、更新されました)

映画から現代女性の姿をpickupする「シネマの女は最後に微笑む」第26回は、イタリア映画『歓びのトスカーナ』(パオロ・ヴィルズィ監督、2016)を取り上げてます。


束の間でも「今、ここ」で生きる歓びを ワケありな二人の逃走劇 | ForbesJAPAN



例によって、ズレた邦題です。トスカーナの豊かな自然の中に育まれる人間愛‥‥みたいなほっこり系を想像してしまいますが、原題は「La pazza gioia(狂気の歓び)」。治療施設から逃げ出した「普通」ではない二人のロードムーヴィー。さまざまな出来事が次々と起こり、イタリアンのフルコースなテンコ盛り感が満載。


陽気で破天荒な女を演じているヴァレリア・ブリーニ・テデスキが、最&高です。最初は「何だこのウザい女」と思いますが、だんだんと、いい加減さと繊細さと剛胆さのバランスが絶妙で尚かつ強烈なそのキャラクターを、愛さずにはいられなくなります。

内容としては、死ななかった「テルマ&ルイーズ」という感じでもあり(実際そっくりの場面がある)、女性の生きづらさを正面から見つめる視線が根底にあります。「幸せが見つからない」という台詞も心に残ります。そして、どんな境遇にいる女も自分の幸せを求め、人生を謳歌していいのだという力強いメッセージ。

見終わった後は、細かいことでクヨクヨするな、ちょっとくらいちゃらんぽらんでも大丈夫、今をとことん楽しめ‥‥!という気分になれる作品です。

2018-11-10

トランスジェンダー女優ダニエラ・ベガの歌に震える(「シネマの女は最後に微笑む」第25回、更新されました)

映画から現代女性の姿をpickupする「シネマの女は最後に微笑む」第25回は、トランプ大統領が先月示したトランスジェンダーを実質排除する方針のニュースを枕に、『ナチュラルウーマン』(セバスティアン・レリオ監督、2017)を取り上げてます。


恋人の死によって表面化したトランンジェンダー女性への逆風 | ForbesJAPAN


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法的にパートナーシップを認められないことでトランスの人が被る不利益や理不尽さが描かれますが、それを包む大きなテーマは「愛の喪失をどう生き抜くか」です。

トランスジェンダーの女優で歌手のダニエラ・ベガの細やかな演技と、終盤にちょっと意外な展開があるのが秀逸。最後のオペラ歌唱は鳥肌が立ちます。


去年、ForbesJAPANにて月2(第2・第4土曜)でスタートしたこの連載も、2年目に入りました。

毎回、映画の内容にわりとしっかり触れていますが、読んだ上で観ても楽しめるように、また既に観た人が読んでも再度楽しめるように‥‥と心がけて書いてきました。

今度ともどうぞよろしくお願い致します。