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2016-08-18

虹色ポンチョのワルツ、文鳥のお宅訪問––––あいちトリエンナーレ2016

昨日、開幕して一週間のあいちトリエンナーレに某新聞の取材で行ってきた。幾つかの作品の見どころをガイドするという記事。

本当は一度全部観ておいてから行く方がよかったのだが、お盆の間はプライベートな用事で動きが取れなかったので、公式ガイドブックで大体の当たりをつけ、当日は朝から名古屋、岡崎、豊橋の各会場を強行軍で回り、ぶっつけで作品について語る(私が喋ったのを記者さんが書き取って記事にまとめる)という、無謀な試み。

今月末に東海版に掲載される特集紙面では、作品写真6枚+絞った内容のガイド記事になる予定。デジタル版に出たらお知らせします。


アートニュースサイトの開幕レポートや、id:zaikabouさんのレポートが、大きな写真入りで上がっている。

あいちトリエンナーレ2016開幕レポート!【名古屋編】- bitecho

あいちトリエンナーレ2016開幕レポート!【岡崎・豊橋編】 - bitecho

一日で全会場を巡る、あいちトリエンナーレ2016 - 日毎に敵と懶惰に戦う


本記事では、個人的に特に強く印象に残った外国人作家の2作品についてのみメモ。写真はやや甘いです。ご容赦を。



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《機械騎兵隊のワルツ - The Machine Equestrians #12》2012 ウダム・チャン・グエン


カラフルなポンチョを纏ったオートバイの隊列が、整然と軽やかにホーチミン市街を走る。そこに被さるショスタコーヴィチのワルツ。

それぞれのポンチョは紐でゆるく繋がれていて、途中で隊列が二手に別れる時に切れる。三会場愛知芸術文化センターB2F、名鉄東岡崎駅ビル2F、穂の国とよはし芸術劇場PLAT 2F)で同じ映像が流されている。


ベトナム最大の都市ホーチミン市。デモの隊列にも軍隊のパレードにも見える「機械騎兵隊」の遊戯的な動き。色とりどりのポンチョの可愛らしさ。レインボーカラーから想起される性あるいは価値観の多様性。市場自由化された社会主義国ベトナム。一党独裁民主化の桎梏。帝政ロシアに生まれソ連で活躍したショスタコーヴィチ。ワルツに漂う憂愁。遠くで反響するコミュニズムの夢の終わり‥‥。

ユーモアのある洗練された手法で、さまざまな連想を重層的に誘いつつ、不思議と感情に深く訴えかける。何度でも見たくなる。DVDがあったら欲しい。


ジャズ・ワルツ第二番」。ちょっと泣きの入ったメロディが有名。

D


N響のサイトの解説より抜粋。

 1940年代後半スターリン体制の末期、ソ連は「反ユダヤ主義」の大キャンペーンを行っていました。その中でショスタコーヴィチは、公には反ユダヤの態度をとりながら、ユダヤ的素材をしのばせた作品を多く書くようになります。公的な顔と私的な顔を使い分けなければ生きられなかったショスタコーヴィチにとって、陽気と哀れが同居するユダヤ音楽は己の境遇に深く重なるものだったのでしょう。

第25回 ショスタコーヴィチ《ジャズ・ワルツ第2番》- ワン・フレーズ・クラシック|NHK交響楽団


ウダム・チャン・グエンがこの曲を選んだ理由が、なんとなく想像された。



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豊橋の駅近く、「水上ビル」という元水路だったところに建っている古い商店ビル。細長く何棟も連なり、営業中の商店はあるものの、どことなく寂れた感が漂っている。

そんな空き家の一つが、全フロア丸ごと鳥のお住まいになっていると聞いて、お宅訪問。金網に囲まれたゲートを通り、階段を上がっていくと‥‥‥


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鳥さんたちはどこ?

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いた♡

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いたいた♪(小鳥好き)。


ブラジル出身のラウラ・リマの作品《Fuga》。すっかり鳥のための空間を作り上げた上で、100羽の文鳥を放してある。


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モビールっぽい。

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芸術的な止まり木で団らんのひととき。

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ちょっとしたところにも可愛らしい止まり木が。

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「鳥の家」なので、あちこちに細密画職人の手による、鳥の描かれた鳥サイズの小さな屏風絵や絵画が飾ってある。しかしせっかくのインテリアに見向きもしない文鳥。

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トイレにも鳥のための絵。

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階段の上。P.ブリューゲルの代表作『雪中の狩人』の超ミニサイズ(鳥用)。

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右の鳥用張り出し窓には金網が張ってある。

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鳥に人気ないのか、なぜか一羽もいない部屋。止まり木の造形がカッコいい。

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屋上もそのまま鳥のお住まい。


普段は小さな鳥かごの中にいる文鳥たち、当初は慣れない場所に戸惑って、隅にかたまりがちだったらしいが、今は比較的自由に室内を飛び回り、いい声で囀っている。求愛行動をする鳥、既にツガイになったのか寄り添っている二羽、麦わらを咥えて巣作りの準備の様子などが見られた。

鳥の生活圏に過度に侵入して鳥たちに迷惑がかからないよう、一回の入場人数は制限されている。鳥と人間の関係が反転された空間。「お寛ぎのところ、お邪魔してすみませんね」という気分になる。そもそも人間が、自然にとっては「お邪魔してすみません」な存在かもしれない。

そして当然のことながら、先住民/侵略者の関係も連想させる。


●おまけ

名鉄東岡崎駅の「岡ビル百貨店」という昭和汁したたる素敵なビルも、ほぼ展示会場となっているが、その2階の片隅で営業していた「手作りレストランこも」。これは写真に収めずにはいられない。


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オムライス(ミニサラダ付き)を頂きました。普通においしかったです。すごくお腹すいていたので写真は撮り忘れました。

2016-08-13

連載エッセイ「絵を描く人々」第4回のお知らせ

絵を描く人々 第4回 「美大受験狂想曲」- WEBスナイパー


WEBスナイパー(18禁サイト/本エッセイは18禁ではありません)に好評連載中の「絵を描く人々」、今回は美大受験生のほとんどが通り抜けるデッサンについてです。

なぜ日本の芸大、美大では石膏デッサンをはじめとしたデッサンを試験に課しているのか。デッサンはトレーニングすれば誰でも描けるようになるのか。アートにおいてデッサン力はどこまで必要なものなのか。受験生たちはどんな気持ちでデッサンに取り組んでいるのか。

などなど、かつては受験生であり、その後14、5年予備校講師を勤めた体験を思い出して書いています。

もう20年受験の現場には関わっていませんし、各大学の出題傾向や受験生気質も昔とは多少違ってきているでしょうが、受験デッサンの「孤独な闘い」感は変わっていないのでは?と思います。


毎回連載の挿絵として描いている右手&左手デッサン、今回は積み重ねた本。なんか右手まで下手になってきたようで冷や汗です。。。



先日は家で、せっせと頼まれもののイラストを描いていた。


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夫の仕事先である新潟の開志国際高校*1の、男子バスケのコーチの先生の新築祝いということでリクエストされたもの。拙本『あなたたちはあちら、わたしはこちら』に掲載した絵を見て「こういう感じで」ということだった。試合の1シーンを撮った2枚の写真を組み合わせて、鉛筆で描いた。

もとより私はイラストレーターではないので、アレンジしない普通のデッサンのようにしか描けない。もっとこう、サラサラッとクロッキー風に描いたほうが良かったかな。でもチマチマ細かく描くのが好きなんですよね。肩の筋肉描きながら「マルスみたい」と思った。

写真通りだと動きが出ないため、部分の大きさをほんの少し変えている。描き込み過ぎて受験生のデッサンのようになってしまったので、ユニフォームの赤を入れ、輪郭を強めにしてみた。


完全に自由な自分の作品というのではなくて、誰かのためにリクエストに応えて描く。結構楽しい。気に入って頂けると良いのですが。

*1:アスリート養成に力を入れている開校3年目の高校で、今年はバスケの男女が揃ってインターハイに出場し、どちらもベスト8に入った。

2016-08-09

ゴマのお汁粉と甘酒

「昔は、夏に冷たいお汁粉を食べたのか」と、今日の『とと姉ちゃん』を見て思った。

女学校時代、『元始、女性は太陽であった』に感動し、大学進学して出版の仕事に就いた鞠子は、自分より若い世代に同じような言葉を届け鼓舞したいと、平塚らいてうに原稿執筆依頼に行く。

快諾してくれたらいてうの提案はしかし、「夏に頂くお汁粉の作り方について、随筆を書きたい」という意外なものだった。

戸惑う鞠子にらいてうは、「甘いお汁粉を食べられるような平和があって、女性の権利獲得もあるのでは」ということを述べる。


最後の台詞は創作かもしれないが、このエピソード自体は実話に基づいているものらしく、とと姉ちゃん 第19週 鞠子、平塚らいてうに会う|朝ドラPLUSによれば、「リアルの『美しい暮らしの手帖』に平塚ていてうの汁粉レシピ「ゴマじるこの作り方」が紹介されたのは昭和24年(1949年)」。

黒ゴマをから煎りしてからペースト状になるまで摺ったものに、ぬるま湯を加えて伸ばし、鍋で煮立て黒砂糖と塩少々、仕上げに葛を混ぜて、茹で餅を落としたものらしい。

今なら瓶入りの黒ゴマペーストがあるので、わりと簡単に作れそう。冬でもお汁粉をあまり食べたいと思わない私だが、ゴマのお汁粉は食欲の落ちる夏に冷やして食べたら美味しそう。来週の友人宅のパーティではデザート担当なので、餅を白玉に変えて一度家で作ってみようと思った。


甘いものと言えば、ここ最近はずっと甘酒に嵌っている。だいぶ前に『ガッテン!』か何かで甘酒の効用が紹介されて売れるようになったらしく、各メーカーがたくさん出しているが、私の好きなのはかねこみそ株式会社のコレ。


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甘味が丁度良い。生姜入りが爽やかな味だがいつも早くに売り切れてしまうので、生姜を摺って入れることも。午前中、家でデスクワークをする時は、朝食代わりにする。グラスに一杯で、結構お昼まで持つ。固形物をお腹に入れた時よりも、仕事が捗るような気がする。

甘酒なんて子どもの頃は、正月やひな祭りにちょっと飲むだけのもので、大人になってからは「甘」の取れた方の酒ばかり飲んで見向きもしなかったが、本来は夏バテ防止の飲み物らしい。夏の季語だということを最近知った。

2016-08-02

小池百合子

ウンコ味のカレーカレー味のウンコを選べと言われてるみたいで、都民は大変だなー」などと人ごとで見ていた東京都知事選のニュースが、ようやく一段落した模様。

インタビューに答える新都知事の映像に、ずっと前、その人についてチラッと書いたことを思い出した。

 〇七年の夏、小池百合子議員が防衛大臣退任の挨拶で、「女子の本懐」という言葉を使ってちょっと話題になったことを覚えている人もいるだろう。「『男子の本懐』があるなら『女子の本懐』もございます」という気張りと、「男社会の政治の世界で大臣にまでなったけれども、やっぱり男どもの画策には敵わなかった」という悔しさと、「女だからって甘く見るなよ。必ず帰ってくるから覚えておけ」という野心が滲み出ていた。同年十月にこのタイトルで本も出しているので、本人としてはかなり狙ったフレーズだったはずである。日本の女性政治家の中では結構「女子力」も高いほうに見える小池議員のことだから、「女子」という言葉を使って自らをアピールした時の効果も計算済みだったと思われる。

(『「女」が邪魔をする』(2009、光文社) 第二章 女子という自意識 より)


国政にいても総理大臣はもう無理そうだし、同格の男たちと足を引っ張り合うのも疲れたので、とにかくトップの、上に男が一人もいないポジションに就きたかった、ということなんだろうと想像。胸の拳の硬さが後の二人とは違った。

小池百合子は「女子力」を使う”男”だ。この社会で女が権力を握るにはコレしかない感。いやコレしかないのかという絶望感。

真綿でやんわりじわじわ首を締めに来るようなあの笑顔は、少し苦手だ。

2016-07-31

映画レビュー『親子でもなく姉妹でもなく』第七回がアップされています

サイゾーウーマンに連載中の映画レビュー、今回は、新潟造り酒屋を舞台にした宮尾登美子の小説が原作の『藏』(降旗康雄監督、1995)です。


「文化」という階級が女を苦しめる? 『藏』に見る、女たちが手を取り合う困難さ


母親を失い盲目となった蔵元の一人娘、烈(一色紗英)と、その叔母、佐穂(浅野ゆう子)との疑似母子関係を軸に描かれる本作ですが、レビューでは二人の濃密な関係から弾き出される後妻のせき(夏川結衣)を加えて、異なる文化に属する女性たちの三角関係について考察しました。


公開当時は、浅野ゆう子の評価が高かったと思います。W浅野と言われたトレンディドラマの常連女優のイメージから脱したとも評された演技力。ただこの後、それほど映画で活躍したという印象は個人的にはありません。『大奥』の滝川役のようなコスチュームプレイが嵌る感じはあります。

宮沢りえが降板してヒロインになった一色紗英はなかなか熱演ですが、ビジュアル的にはやはり宮沢りえの方がはまっただろうと想像させてしまうので、少し気の毒。顔が時々「西洋人」に見えるのです。


印象的なのが、芸者上がりの若い後妻を演じた夏川結衣。大正〜昭和初期の着物や、こてを当ててウェーブを作ったヘアスタイルが、とてもよく似合っています。

この後、TBSのテレビドラマ『青い鳥』で豊川悦治と共演し、人気を不動のものに。最近は年相応の貫禄がついて、かつてのはかなげなイメージとは違いますが、大好きな女優です。

イラストとともにお楽しみ下さい。


藏 [DVD]

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