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2018-02-10

ケイト・ブランシェットの「手負いの雌ライオン」ぶりに胸がシクシクとなる『ニュースの真相』(「シネマの女は最後に微笑む」更新)

映画から現代女性の姿をピックアップする「シネマの女は最後に微笑む」第7回が公開されてます。


真実とデマの間で抗った女性ジャーナリストの最後のプライド | ForbesJAPAN


今回取り上げたのは、2016年のアメリカ映画『ニュースの真相』。2004年の米大統領選前、ブッシュの経歴詐称を暴き出そうとして陥穽に嵌り、メディア界から放逐された有名女性ジャーナリストの手記の映画化。

ケイト・ブランシェットとロバート・レッドフォートの共演で話題になりました。


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実話ですがメディアの内幕ものとしては若干食い足りないところがある分、脚本と俳優の演技でしっかり見せている作品だと思います。何より、男社会で敗北する女の物語ですので刺さります。

自信と決断力に溢れ、やや強引だけれど必ずネタをモノにする、誰もが一目置く切れ者の女性ジャーナリスト。追求心、正義感、仕事で成果を出したい気持ち、いろんなものがないまぜになった中で、ちょっとした油断や慢心が大きなミスに繋がった時、ヒロインは二度と立ち上がれないほどの総攻撃に晒される。


「うわぁ、これは気の毒」と、「でもこの人、ちょっとヤな女だったよね」という気持ちが交錯しますが、ヒロインの内面に「悪い父」と「良い父」がいるとわかるあたりで、ああなるほどなぁ‥‥と。

必死で闘って上昇してきた女性の中に、こういうタイプは結構いるのではないかと感じました。

2018-01-27

キャリア優先の娘と専業主婦の母の葛藤を描いた『母の眠り』(「シネマの女は最後に微笑む」更新)

映画から現代女性の姿をピックアップする「シネマの女は最後に微笑む」第6回が公開されてます。

今回取り上げたのは、1998年のアメリカ映画『母の眠り』。メリル・ストリープレニー・ゼルウィガーが親子を演じています。


介護と離職、葛藤を通じて見直される「親子のかたち」|ForbesJAPAN


親の介護。いつかは来ることと頭では思っていても、いざその時になるとうろたえるものです。

まして、まだ若い時に突然親が倒れて、仕事を中断し介護せねばならなくなったら。親も子も考えたくない事態ですが、ふりかからないとも限らない。


この作品は、そうした思いがけなく生じた親の介護を通じて、娘が母親の姿を再発見していく物語です。

母と娘では、生き方も価値観も文化も違います。特にこのヒロインは仕事が大好きで、専業主婦の母親の生き方に内心反発しているタイプだから、最初はかなりしんどい。

また、尊敬していた父親の実像も、再発見されていきます。サム・シェパードが演じる作家で大学教授のこの父、インテリ男性の一類型として興味深いです。


夫の両親含めて三人の親を大した介護の機会もなく見送った私ですが、これまで別々に暮らしてきた年老いた親と改めてつき合うということは、親の生活文化に足を踏み入れ、それを理解はしないまでも、寄り添ってみようとすることだと実感しています。

そのことを通じて、彼/彼女の生きてきた時間、時代や環境を想像してみることは、決して無駄ではないと思います。


母の眠り [DVD]

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2018-01-13

仕事と生活ののっぴきならなさを描いた『サンドラの週末』(「シネマの女は最後に微笑む」更新)

映画から現代女性の姿をピックアップする「シネマの女は最後に微笑む」第6回、更新されました。

今回取り上げたのはベルギーフランスイタリア合作映画『サンドラの週末』(2014)。マリオン・コティヤールアカデミー賞主演女優賞にノミネート、他数々の賞レースに登場した佳作です。


同僚の解雇かボーナスか、働く人々それぞれの事情 | Forbes JAPAN


サンドラの週末 [DVD]

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従業員を分断支配しようとする雇用者側、それぞれ自分の生活第一の従業員たち、どこにでもある職場や家庭の、どこにでもありそうな話の細部。いつクビになるかビクビクしながら暮らしている者としては、実に身につまされるドラマです。

応援したいんだけど少しイライラさせられる感じまで含めて、うつ病上がりの若干不安定な女性を、コティヤールがとてもうまく演じています。「これは私の物語だ」と感じる人も、結構いるのではないでしょうか。


この連載はかなりストーリーを紹介していますが、最後のオチだけは明かしていません。

「この結果はいったいどうなるのか?」という、登場人物たちと同じ問いに私たちは牽引されていきますが、それも最後は宙に浮きます。そこで起こされたヒロインの、「侠気」とも言うべき思いがけない意思表示に私は打たれました。なかなか重苦しい話ですが、後味は爽やかです。

2017-12-23

レズビアン・カップルの闘いを描いた『ハンズ・オブ・ラヴ 手のひらの勇気』(連載コラム更新のお知らせ)

時事的話題に絡めて現代女性の姿を映画からピックアップする連載コラム「シネマの女は最後に微笑む」(ForbesJAPAN)、更新されました。実話が元になっている作品、『ハンズ・オブ・ラヴ 手のひらの勇気』(2015、ピーター・ソレット監督)を取り上げています。


平等の権利を求めて立ち上がった、レズビアン・カップルの闘いの行方 | Forbes JAPAN


主人公の警察官を押さえ気味の落ち着いた演技で見せるのがジュリアン・ムーア、そのパートナーとなるのがエレン・ペイジ。ボーイッシュな役柄がぴったりで可愛いです。

二人の、girl meets girlな感じの出会いから関係が深まっていく過程の描写が、歳の差カップルということを除けば特別なことはなく、わりと普通なんだけど、その普通さがとてもいいです。


死期を悟った人が、唯一の家族であるパートナーに自分の遺産を残し、遺族年金を受け取ってもらいたいと願う。異性愛夫婦であれば何の問題もないそのことが、同性愛者のカップルではすんなりいきません。

州のパートナーシップ法を郡に適用してほしいという彼女たちの願いを軸に、ホモソーシャルな世界の同性愛者差別、そこに介入する同性愛者の団体、周囲の人々のさまざまな思惑が描かれていきます。

エレン・ペイジはこの撮影の前後でレズビアンであることをカムアウトしたようです。


2017-12-09

『マダム・イン・ニューヨーク』に見る主婦の学び(「シネマの女は最後に微笑む」更新)

時事的話題に絡めて現代女性の姿を映画からピックアップする連載コラム「シネマの女は最後に微笑む」(ForbesJAPAN)第三回がアップされています。


「学べなかった女」を勇気付ける、自尊心回復のストーリー | ForbesJAPAN


「学び」をテーマに、最近のインド映画のヒット作『マダム・イン・ニューヨーク』を取り上げています。英語が喋れないインド人の主婦が、一人で初めて行ったニューヨークで試行錯誤するドラマ。結構話題になったので観た人も多いのではないでしょうか。



脚本が良いのと、主人公のシュリデヴィという女優さんの演技が素晴らしく、英会話教室の先生も生徒たちもキャラ立ちしていて楽しいです。もちろんミュージカルシーンも。基本、コメディなので悪い人は出てきません。

また、ニューヨークを主な舞台にしたことで、さまざまな人種、国籍の人が描かれているばかりではなく、同性愛者もごく自然に登場しているところがいいです。笑いに包みながらも、いろいろな細部に丁寧にスポットを当てているところに好感がもてます。


初めての海外、通じない言葉、滑稽な自分の振る舞い‥‥‥という点は私にも覚えがあり、苦笑しつつ共感をもって観ました。幾つになっても真摯に学ぶことで世界が開けていく。勇気づけられる作品です。

そして、主婦という立場に押し込められがちな女性の葛藤や愛情や洞察も見事に描かれています。最後は涙せずにはいられません。未見の方は是非!