とと姉ちゃん」を見るのがつらくなってきた。女学校で、陰湿ないじめに遭い、綾という友と信奉する教師(東堂)を得て、ようやく卒業し(いじめそのものが解決したわけではない)、和文タイピストとして入社したと思ったら、またもや女性だけのタイピスト室で、わざとらしいほどの敵意を受ける。これ、どうだろう。ヒロインに試練を与え、そこから学び成長していくという流れはわかる。しかし、二度は、ちょっと「やりすぎ」ではないか。
定期検診の待合室で、ずっと安岡章太郎『文士の友情』新潮文庫を読んでいた。吉行淳之介遠藤周作について書いた単行本未収録の文章がたっぷり入っている。昭和34、5年頃、安岡は池袋の古本屋の棚に、吉行の『娼婦の部屋』を見つけ「ああ吉行の本もついに古本屋に並んだか」(これは、いい意味)と感慨にふける。つまり、古本屋という選択基準にパスした、という意味だ。吉行が、最近の文壇が、ちょうど新興芸術派が出た時と似ていると指摘、村上春樹竜胆寺雄だ、と言ったという。これもおもしろい見立てだ。そういえば、安岡の「ガラスの靴」は、村上春樹みたいだった。