児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

手が滑ったのか、わいせつか―行き過ぎた医療訴訟が現場を疲弊させる―

 刑事事件なので、故意なら強制わいせつ罪、過失なら犯罪不成立ということですね。
 故意ではないという前提で語っておられるのですが、それなら、単に、「事実無根」「えん罪だ」ということで十分だと思いますが。

http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/opinion/mric/200905/510902.html
大腸内視鏡検査の際にカメラを挿入する肛門と陰部は数センチしか離れていません。そして、人の体は千差万別で、毛深い人もいれば、脂肪の多い人もいます。検査前の緊張で肛門が固くしまっていた場合には、痛み止めのゼリーを塗ります。そのゼリーのせいで周辺が滑りやすくなっていて、故意ではなくても陰部に内視鏡が入ってしまうことはあり得るのです。
 そうはいっても「プロなんだから手が滑って間違えたりするはずがない」と思われる人は多いでしょう。確かに99%間違えることはありません。でも、年間1000件行なう医師であれば、1年間で1〜2件の割合で起こし得る不可避な偶発症です。
 私の意見を言わせてもらえば、報道されている状況下において、故意で入れることは「全くあり得ない、考えられないこと」です。「謝罪する必要がない」とは言いません。
・・・・・

○行き過ぎた医療訴訟は現場を疲弊させるだけ
 それを考えると、逮捕という手段がこれほどまでに、特に「医療行為上どうしても起こりうる偶発症」の範囲にまで広げて、行なわれるのは、少し行き過ぎの気がしてなりません。繰り返しになりますが、謝罪する必要はもちろんあるでしょう。でも、それは民事であって、刑事ではないと思うのです。

「児童だとは知らなかった」と弁解する児童買春被疑者を「児童買春犯人も、県民には条例で年齢確認義務があるから、知らなかったとは言えない」と追及した事例数件

 青少年条例違反は知らなくても処罰されますが、知らないものは処罰できないのが児童買春罪です。条例への配慮を欠いています。
 児童買春罪に青少年条例の知情条項を組み込んで(存在しない条文を作って)送致しても検察官が受け付けるわけはなく、結局、こういう理詰めの圧迫の一種です。間違った理屈なので、詐欺自白とも言えます。
 こう責められると観念して認めて「知ってました」と供述する人も多く、供述過程は通常証拠として出てこないので、記録上は、「児童であることを知りながら」を認めたことになり、有罪になります。
 被疑者ノート等を活用して、その辺を監視して証拠化して、弁護人がすかさず文献等で反論すれば、知情無しで通る可能性があります。
 この辺の執拗な取調状況は、気の毒です。在宅の被疑者がヘルプの電話を掛けてきたときに、背後で刑事が怒鳴ってることもあります。
 児童買春罪の法定刑はまた上がりそうな雰囲気ですが、過失買春罪を作ろうという人はいないようです。重い法益侵害だというのなら、過失でもだめだということにしてもいいような気がします。