児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

性犯罪被害者の住所、「取り調べ中見た」被告証言

 起訴状に被害者の住所が記載されていることもあって(送達しておいて)被告人質問で「それを忘れろ」と迫った検察官がいますが、判決書にも記載されていました。
 これでも謝罪が量刑上有利に斟酌されるのであれば、成功ということになります。

http://www.asahi.com/national/update/1202/SEB200912020042.html
勾留(こうりゅう)中の今年6月、当時の弁護人を通じて謝罪文を郵送していた。被害者代理人の弁護士は「被害者は怖がっている。事実なら警察は注意してほしい」と話している。
 熊本県警は「被告や弁護人に被害者の住所を教えることはないが、取り調べの際に書類を盗み見られる可能性はゼロとは言えない」と説明。「事実なら適切な取り調べを徹底したい」としている。
 被告は被告(28)=懲戒免職。8月まで担当した元弁護人によると、5月中旬に接見した際、被告が「取り調べのときに分かった」と被害者の住所などを示したため、被告の謝罪文を同封して6月に郵送したという。
 被害者代理人の弁護士によると、被害女性は被告との接触を望まず、手紙なども送らないよう被告側に伝えていたという。

12点法

指紋鑑定を争ったことはありません。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091202-00000155-mai-soci
この指紋を改めて鑑定したのは、斎藤鑑識証明研究所(宇都宮市)の斎藤保氏。事件関係者によると、レジ袋の指紋と被告の指紋が、一部合致しない部分があった。斎藤氏によると、指紋が一致すると判断するためには、指紋線にある12の特徴点がすべて一致しなければ完全一致とはならない。一つでも特徴が異なる「矛盾点」があれば不一致とされるという。

新捜査書類全集 証拠法P181
指紋鑑定は,複数の指紋相互の隆線の形状,隆線の開始点や終点・分岐点・接合点、という特徴的な部分の位置関係等を比較対照する方法である。複数の指紋を同一であると認定するためには両者の形状,特徴点が完全に一致することまで確認するのではなく, 12点法が採用されている。 これは,我が国のほか,米国など多数の同で採用されている方法であり,例えば,犯行現場に遺留された指紋と,対照用の被疑者の指紋との間で,隆線の形状や特徴点の位置関係を比較対照し一致する特徴点が12点以上あれば同一指紋であると認定するものである。指紋は, 弾力性のある指が,いろいろな条件のもとで,様々な材質の物に接触することによって遺留されるのであるから,全面的な一致を要求することはできない。しかし,伝統的な研究の結果から,特徴点が12点以上合致するのは,その確率上,本人の指紋以外には有り得ないことが説明されており, 12点法によって同一性を認定することは合理的な判断方法であって,絶対的な証拠価値を持つと認められてきている。

他人から依頼されて自分で撮影・送信する場合、児童は1項提供罪(特定少数)・2項製造罪(特定少数)の正犯にはならない(大阪高裁H21.12.3)。

 受注販売で、有料で販売してた。
 頼んだ方が3項製造罪(姿態とらせて製造)の単独犯。
 製造罪の個人的法益を重視するとこうなると思います。
 神戸地裁の理由付けと違うところが、説明が一定していないところですが。
 児童を正犯として検挙しちゃって これだと困る警察もあるでしょうが、これが判例です。

追記
 本日、弁護人の主張として、×をつけられた見解です。立法者の解説ではうまく回りません。

島戸「児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律について」警察学論集57-08
(3)第1項の罪
ア 前   段
前記のとおり、改正法では、児童ポルノを他人に提供する行為について、その相手が特定の者であるか不特定の者であるかや、多数の者であるか少数の者であるかを問わず処罰することとし、不特定又は多数の者に対する提供行為については、行為が悪質であり、結果が重大であることから、その法定刑を加重するものである。
 本項は、その基本的な処罰の類型として設けるものであり、旧法では処罰の対象とならない特定かつ少数の者に対する譲渡行為、反復継続の意思によらない貸与行為について、本項により処罰されることになる。児童による場合であっても、自己を描写したものであっても、また交際相手に対するものであっても、変わるところがない

森山野田「よくわかる改正児童買春ポルノ法」P190
Q42 18歳未満の児童が、交際相手に対し、自分の裸体の写真や、その交際相手との性交等の写真を渡した場合にも第7条第1項の罪は成立するのですか。
他人に児童ポルノを提供する行為については、第7条第1項の罪が成立し、これは児童による場合であっても、自己を描写したものであっても、また交際相手に対するものであっても、変わるところがありません。
もっとも、第7条第1項の罪が保護しようとする対象は、主として描写される児童の尊厳にあると考えられますから、当該児童ポルノにおいて描写される児童がその交際相手に対して提供したり、交際相手が当該被描写児童に対して提供する場合のように、提供者、被提供者と描写される児童との関係や被描写児童の承諾の経緯、理由等を考察し、当該提供行為について真摯に承諾し、かつその承諾が社会的に見て相当と認められる場合には、違法性が認められない場合もありうると考えられます。


追記
誰かに翻訳してもらいたいですね。
sextingは not guilty in Japan

阪高裁H21.12.3 
第3控訴趣意中,法令適用の誤りの主張について
論旨は,②(ア)被告人に,被害児童が正犯である法7条1項(提供罪)及び同条2項(提供目的製造罪)の教唆犯が成立し,同条3項の児童ポルノ製造罪に該当しないのに,同罪の正犯とし,(イ)仮に(ア)が認められないとしても,被害児童3と被告人とは同条3項の児童ポルノ製造罪の共同正犯である,のに,被告人の単独犯とし,さらに(ウ)被害児童の正犯性が否定されるとして被告人は教唆犯であるから共犯の従属性により不処罰であるのに,被告人を処罰した原判決には判決に影響することが明らかな法令適用の誤りがある,というのである。
しかしながら,
②については,同条各項の規定は,平成16年法律第106号による改正前の法に規定がなかったものであるが,旧法施行後の状況等にかんがみ,児童の権利の擁護を一層促進するため新たに犯罪化され,処罰の範囲が拡大されたものであるところ,対象となる行為は,いずれも法2条3項各号に掲げる児童の姿態を描写した児童ポルノを前提とするもので,当該児童の心身に有害な影響を与える性的搾取・性的虐待行為にほかならず,しかも,不特定多数の者に対する提供(法7条4項)及びその目的での製造等(同条5項)の罪ではもとよりその流通が予定され,特定少数の者に対する提供(同条1項及びその目的での製造等(同条2項)の罪では流通の危険性が大きく,他人に提供する目的を伴わない製造罪(同条3項)にあっては描写された児童の人権を直接侵害する行為であり,流通性は小さいものの,その危険性を創出するものであるから,このような行為が社会に広がるときには,児童を性欲の対象としてとらえる風潮を助長するごとになるため,児童を性的搾取・性的虐待の被害から擁護することを意図して上記各行為を処罰するものとしたのであって,当該児童は,原則的に,その被害者と位置付けられているというべきである。
そうすると,被告人が,携帯電話のサイトで知り合った被害児童に対し,携帯電話のメールで,被害児童のポルノ画像を買い取る旨執ように働き掛けた上,指示して姿態をとらせた被害児童のポルノ画像を撮影・送信させて,自己の記録媒体に保存させたという本件について,(ア)の点は,被害児童が児童ポルノの提供(同条1項)及びその目的での製造(同条2項)の罪の正犯で,被告人はその教唆犯にすぎないとする点で,(イ)の点は,被害児童と被告人が他人に提供する目的を伴わない児童ポルノ製造罪(同条3項)の共同正犯であるとする点で、(ウ)の点は,被告人が教唆犯にすぎないという点で,いずれも誤っており,所論はいずれも採用することができない独自の見解というほかない。