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折り紙に関するあれこれをメモ的に。
written by 小松英夫(id:origami) from 折り紙計画

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Flickr: origamiplans

2016-6-22

9鶴の畳み方

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9鶴の畳み方に関しては舘知宏さんが明快な解説記事を公開されているが、本記事では、いくつかの折り畳みテクニックとともに、より具体的なステップの一例を紹介する。

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2016-6-19

新作「サイ」

Rhinoceros

(リンク先Flickrに別アングル写真あり)

パピヨン以来5年ぶりに四つ足獣の作品を作った。足を1対1+2の直角三角形で折り出すというのがアイデアの核になっていて、これ自体は10年以上前に遡る。当時のテーマとして「足のカドを素の22.5度で折り出さない」ということがあり(ポニー、日本猿など)その流れだったのだが、結局途中で放置してしまっていた。この分だと自分が作る前に誰かにやられちゃいそうだなと思っていたのだけど大丈夫だったようだ(多分)。


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全体の基本構成はライオン・オオカミ系統で、造形面はデフォルメ感が少し強めの、カバに近いテイストになった。実のところ自分の中での新味は足の面構成のみであって、後はほぼいつものやり口でまとめあげた感覚(これ以上盛り込もうとすると作品ができない)。

創作過程は足のパターンをはめ込むことがまず最初の課題だったが、前足をはめこんだ段階で想定外の僥倖として「前足つけ根のシワ」を表現できる構造を得た。そこからはこれを如何にして残すかが中心課題となり、こういう予想外の展開が創作していて胸躍るところだ。頭部は予め別パーツとして考えていた候補を、前足〜首との整合性を取りつつ、変形させて使っている。

テーマから言うと足を素のパターンで残したい気持ちがあったが、ちょっと大き過ぎたので四角柱(錐)状に折り込むことにした。その結果「前足つけ根のシワ」の基本形段階での面白さ(少し足からずれるところ)が少し失われてしまったのが心残り。

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2016-4-9

一枚折り十字手裏剣をつくる

2016/04/16追記あり

『第9回折紙探偵団コンベンション折り図集』(2003年)に「表裏同等一枚折り手裏剣」という作品の折り図を投稿したことがあった。作者は「山田純+笹出晋司+小笹径一+小松英夫」という4人の連名となっているが、山田さんの一枚折り手裏剣の作品に改修案を出していったというモデルだからだ。各アイデアは、折り図と一緒に掲載されている笹出さんの記事「一枚折り手裏剣の研究」に詳しく書かれている。*1

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「表裏同等一枚折り手裏剣」の展開図

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展開図を折ったところ

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「表裏同等一枚折り手裏剣」完成写真


以上が前置き。

一ヶ月前の3月10日に、みずすましさん(@nosiika)がこんなツイートをされていた。

これに対して、sakuさんkawachoさん、なみなみさんtaigaさんらが形状をシンプルに折り出す解答を寄せているが、もっと伝承の手裏剣の特徴を持たせた作品として折るとしたらどうなるだろう、と考えてみた。

そこでまず浮かんだのが冒頭の一枚折り手裏剣であった。ねじり折り部分を即した比率(kawachoさん、なみなみさんの解答)で折ればすぐできるんではないか、と。

実際に折ってみると、それはしかし若干の早計であった。最後の工程で差し込むフラップが根元のところでひっかかるのだ。

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各部干渉することなく、根元部分を中割り折りしつつフラップを折り返せるように調整した結果、無事に思惑のものが折れた。これを「一枚折り十字手裏剣A」とする。

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「一枚折り十字手裏剣A」展開図(1枚目はフラップを差し込む前)

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1枚目の展開図を折ったところ

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根元を中割り折りしながらフラップを折り返す

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「一枚折り十字手裏剣A」完成写真

少しいじってみると、干渉を避けるための部分構造で数個の別構造が見つかったが、どれが良いかとも言いづらい程に微妙な違いではある。



「十字手裏剣A」は元々の一枚折り手裏剣に比べると、ねじり折りの幅が広くなる分、完成形は小さくなってしまう。そこで、全体構造を22.5度傾ければ、うまいこと不要領域が消えて完成サイズが大きくなるような解を見つけられるのでは、と考えた。

展開図で事前の検討などもせず適当に折り始めたが、単純な比率ですぐにまとまった。「一枚折り十字手裏剣B」とする。

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「一枚折り十字手裏剣B」展開図(1枚目はフラップを差し込む前)

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1枚目の展開図を折ったところ

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フラップは袋折りで形成する構造になっている

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「一枚折り十字手裏剣B」完成写真

中央のねじり折り部分を直接ポケットにする必要があったため、フチの位置を変えるための折りが追加されている。

完成サイズは、「刃の先を結んだ対角線の長さ/用紙辺長」で、Aの0.54からBの0.58と少し大きくなって、もくろみは一応達成された。他にも、フラップとポケットの形状がぴったりなのは気持ちいい。マイナスポイントは、刃のフチの両サイドとも層が分かれてしまっていること。伝承手裏剣では刃の片側がシームレスになっているが、これは造形的に見て大きな特徴だと思う(刃そのものの見立てになっている)。「表裏同等一枚折り手裏剣」と「十字手裏剣A」ではこの特徴を再現できている。



伝承の手裏剣をイメージして作ってきたが、最後の差し込む工程において、「十字手裏剣A」は「他の折りを加えながら折る」必要があり、「十字手裏剣B」は「フラップが完全にはひらかない構造」になっている。今度は、伝承手裏剣のように「ひと折りで差し込める」ようにしてみたくなった。

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目標となるのは、こんな形状となる(この時点で強烈なバカバカしさが漂う……)。今回は左側のものを折った。完成形における十字のアウトラインがかなり露出しているので、その折り出しを優先して折り始める。そのために、用紙中心部に鶴の基本形をはめこんだ(sakuさんの解答を表裏同等にしたものになっている)。これくらい複雑になってくると、層の上下関係やロックされてしまう箇所などがあちこちに現れてくるなど、細かな検討が必要になり、前2作に比べると手こずったがなんとか形になった。「一枚折り十字手裏剣C」とする。

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「一枚折り十字手裏剣C」展開図(フラップを差し込む前)

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展開図を折ったところ

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「一枚折り十字手裏剣C」完成写真

やはり完成サイズは前2つより小さくなる(0.5)。そして「十字手裏剣B」と同じく、刃の両側がひらいている。何よりも「見た目に比してかなり難しい」。これは小松作品のお決まりの形容詞であるが(?)、それを凌駕するアンバランスさで伝承手裏剣の「お手軽さ」は完全に消えてしまっている。


・・・


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以上3つ作ってみたが、どれも当初の目標である「伝承手裏剣らしさ」にはいまひとつ届かない結果となった。「表裏同等一枚折り手裏剣」が伝承手裏剣らしさを大きく残していることとは対照的である。完成形のデザインは、ある意味似たようなものであるのに、折り紙で作った場合にこれだけの違いが出てくるのは面白い。

このことを一般化して考えてみるならば、一見似たようなデザインでも、その構成の合理性/折りやすさ等には形の違い以上の差が現れることがある、という話になるだろう。これは「折り紙で作りやすいデザイン」がある、ということでもある。最終的に作品のどこに重点を置くのかは創作家次第とは言え、創作の際には視点を広く持つためにも念頭に置いておきたい。

……などと書いてみたものの、十字手裏剣でもっとシンプルな折り方があったらどうしよう。


追記(2016/04/16)

記事をアップした後にCタイプの折り線構成でAタイプのフラップの折り出しが出来そうだ、と思いついた。十字の刃を22.5度にすれば根元からフラップを一切の干渉無く生やすことができるはず…という直感に従って試した結果「一枚折り十字手裏剣D」ができた。

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「一枚折り十字手裏剣D」展開図(1枚目はフラップを差し込む前)

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1枚目の展開図を折ったところ

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こういう形状をイメージしながら試行錯誤した

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「一枚折り十字手裏剣D」完成写真

大きさは「十字手裏剣C」と同じ。刃の片側はシームレスになる。ポケットとなるすき間が複数あるのと、完成形の中心部が美しくならないのが欠点。展開図折りはパズル性が高く歯応えがあると思う。


「十字手裏剣D」を少し折り変えると(それぞれのフラップをかぶせ折りのようにひらく)、ちょっと変わった形状の手裏剣になった。これは「一枚折り卍手裏剣」としよう。ポケットへの差し込みが伝承手裏剣のようにスムーズに行って気持ちよい。他にも面白い形の変わり手裏剣を考えてみるのも楽しいかもしれない。

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「一枚折り卍手裏剣」フラップを差し込む前

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「一枚折り卍手裏剣」完成写真

*1:なおパズル的なシンプル作品の常だが、「近藤はにわ」さんが後に同様のモデルを発見されている(完全に表裏同等にしていないモデル)。可能性としては、2003年以前に誰かが折っていたことも考えられるだろう

2016-4-8

カニと重なり制御の話

「カニ」の折り図を『日本折紙学会第26期会員特別配付資料』2016年3月配付)に寄稿した。2年半ほど前にJOASホールで講習をした際に配付した折り図に、多少の加筆をしている。

本作は、自分がこれまでほとんど発表してこなかった「カド出し」的な作品だ。不満な点も多々あるにせよ、全体としては割かし気に入っている方かもしれない。JOASの会員向けという限定的な発表媒体ではあるけれど、折り図が手元に届いた方にはぜひ折っていただければと思う。


カニと言えば、小学生のときに吉澤章さんの不切正方形一枚の「かに」を見て(NHK出版『創作折り紙』所収)おおいに興奮した思い出がある。口絵写真のカニは、当時田舎で採集して遊んだサワガニのイメージそのものであった。中学生のころは『トップおりがみ』のモントロールさんのオサムシを改造してカニもどきを量産していたものだった。折り紙設計登場以前の折り紙からこの世界にハマった人の例に漏れず、カニという題材で作品を作ることはやはり1つの憧れだった。*1

本格的に創作を始めてからは、哺乳類モチーフで自分のスタイルを模索することに傾倒し、昆虫をはじめとした節足動物は国内外に名手が何人もいたこともあって、自分の創作としてチャレンジする機会は少なかったが、ここ数年は哺乳類以外の題材に手を出す流れになっていて*2、そのなかでふとしたきっかけで生まれたのがこのカニだった。


さて拙作カニの推しポイントの1つとしては、形状保持のための糊付けが不要というところがあると思う。丁寧に折れば15cm折り紙用紙でもいける。これをもって優れているということでは勿論ないが、小さく折れるというのは1つの価値だとは思う。

この糊付け不要の性質は「紙の重なり・厚みの制御」という技術/設計思想から来ている。

重なり制御の技術というと、厚みの「分散」がよく俎上に載せられるが、カニでは「不要領域をまとめて邪魔にならない場所に持っていく」「厚みによる固さを形状保持のために活用する」と分散とは逆方向の操作となっている。理想としては「厚みを味方につけた作品」を作りたいところだが、本作においては「厚みを敵に回さない」といった感覚だろうか。


作品における重なり制御の問題は、形状保持だけでなく、「作品が自立するための重心の調整」や「重なりによるボリューム感(陰影による視覚的効果や密度による重量感など)」などにも関わりがあるし、紙に余計な負荷をかけないということは、折る過程にも影響をもたらすはずだ。折り手が抱く紙の負荷への意識を減らせば、より折りの変化の側面を楽しむ余裕が出てくる。言い換えればリラックスして折れる。(かもしれない)


なるべく糊付けは回避したいし、特殊な用紙にも頼りたくない、というスタンスなので、自作品ではいつも重なり制御に気を遣ってきたつもり……だったけど、HPギャラリーページを振り返って眺めてみたらそんなに徹底していなくてちょっとずっこけた。「みみずく」などは、紙の重なり的には相当危うい*3

ただ作品集で「改修」した部分では、重なり制御に対しての意識が多かったようだ。多くは細部の工夫で目立たないものだけれど、リスの上半身、馬の後半身、うさぎの前足、トラの尻尾…などがそうだ。そう言えば「気軽にはじめる22.5度系創作法」の第5回*4で重なり制御の話題に触れているが、これも作品の推敲に関しての言及だった。「安定した構造」という目標が明確であることから、改修時の指針として有効に働くのかもしれない。これは今回改めて気付いたことだ。

*1:例えば西川さんが『季刊をる』のインタビューで、小学生の頃にカニに挑戦していたエピソードを語っておられる

*2:これは少なからず意識的にそうしていた

*3:それでも目の部分の厚みを形状保持に使うのは「カニ」と同様の例になっている

*4折紙探偵団マガジン130号