Hatena::ブログ(Diary)

fold/unfold

折り紙に関するあれこれをメモ的に。
written by 小松英夫(id:origami) from 折り紙計画

折り紙アンテナ計画(Netvibes)
 ・折り紙ブログアンテナ
 ・折り紙作品アンテナ
 ・折り紙情報アンテナ
折り紙ブログリンク集(livedoor Reader)
Flickr: origamiplans

2016-4-9

一枚折り十字手裏剣をつくる

2016/04/16追記あり

『第9回折紙探偵団コンベンション折り図集』(2003年)に「表裏同等一枚折り手裏剣」という作品の折り図を投稿したことがあった。作者は「山田純+笹出晋司+小笹径一+小松英夫」という4人の連名となっているが、山田さんの一枚折り手裏剣の作品に改修案を出していったというモデルだからだ。各アイデアは、折り図と一緒に掲載されている笹出さんの記事「一枚折り手裏剣の研究」に詳しく書かれている。*1

f:id:origami:20160409230141p:image:w300

「表裏同等一枚折り手裏剣」の展開図

f:id:origami:20160409230135j:image:w400

展開図を折ったところ

f:id:origami:20160409230134j:image:w300

「表裏同等一枚折り手裏剣」完成写真


以上が前置き。

一ヶ月前の3月10日に、みずすましさん(@nosiika)がこんなツイートをされていた。

これに対して、sakuさんkawachoさん、なみなみさんtaigaさんらが形状をシンプルに折り出す解答を寄せているが、もっと伝承の手裏剣の特徴を持たせた作品として折るとしたらどうなるだろう、と考えてみた。

そこでまず浮かんだのが冒頭の一枚折り手裏剣であった。ねじり折り部分を即した比率(kawachoさん、なみなみさんの解答)で折ればすぐできるんではないか、と。

実際に折ってみると、それはしかし若干の早計であった。最後の工程で差し込むフラップが根元のところでひっかかるのだ。

f:id:origami:20160409230139p:image:w300

各部干渉することなく、根元部分を中割り折りしつつフラップを折り返せるように調整した結果、無事に思惑のものが折れた。これを「一枚折り十字手裏剣A」とする。

f:id:origami:20160409230137p:image:w300

f:id:origami:20160409230136p:image:w400

「一枚折り十字手裏剣A」展開図(1枚目はフラップを差し込む前)

f:id:origami:20160409230133j:image:w400

1枚目の展開図を折ったところ

f:id:origami:20160409230132j:image:w300

根元を中割り折りしながらフラップを折り返す

f:id:origami:20160409230131j:image:w300

「一枚折り十字手裏剣A」完成写真

少しいじってみると、干渉を避けるための部分構造で数個の別構造が見つかったが、どれが良いかとも言いづらい程に微妙な違いではある。



「十字手裏剣A」は元々の一枚折り手裏剣に比べると、ねじり折りの幅が広くなる分、完成形は小さくなってしまう。そこで、全体構造を22.5度傾ければ、うまいこと不要領域が消えて完成サイズが大きくなるような解を見つけられるのでは、と考えた。

展開図で事前の検討などもせず適当に折り始めたが、単純な比率ですぐにまとまった。「一枚折り十字手裏剣B」とする。

f:id:origami:20160409230143p:image:w300

f:id:origami:20160409230142p:image:w400

「一枚折り十字手裏剣B」展開図(1枚目はフラップを差し込む前)

f:id:origami:20160409230130j:image:w400

1枚目の展開図を折ったところ

f:id:origami:20160409230129j:image:w300

フラップは袋折りで形成する構造になっている

f:id:origami:20160409230128j:image:w300

「一枚折り十字手裏剣B」完成写真

中央のねじり折り部分を直接ポケットにする必要があったため、フチの位置を変えるための折りが追加されている。

完成サイズは、「刃の先を結んだ対角線の長さ/用紙辺長」で、Aの0.54からBの0.58と少し大きくなって、もくろみは一応達成された。他にも、フラップとポケットの形状がぴったりなのは気持ちいい。マイナスポイントは、刃のフチの両サイドとも層が分かれてしまっていること。伝承手裏剣では刃の片側がシームレスになっているが、これは造形的に見て大きな特徴だと思う(刃そのものの見立てになっている)。「表裏同等一枚折り手裏剣」と「十字手裏剣A」ではこの特徴を再現できている。



伝承の手裏剣をイメージして作ってきたが、最後の差し込む工程において、「十字手裏剣A」は「他の折りを加えながら折る」必要があり、「十字手裏剣B」は「フラップが完全にはひらかない構造」になっている。今度は、伝承手裏剣のように「ひと折りで差し込める」ようにしてみたくなった。

f:id:origami:20160409230138p:image:w400

目標となるのは、こんな形状となる(この時点で強烈なバカバカしさが漂う……)。今回は左側のものを折った。完成形における十字のアウトラインがかなり露出しているので、その折り出しを優先して折り始める。そのために、用紙中心部に鶴の基本形をはめこんだ(sakuさんの解答を表裏同等にしたものになっている)。これくらい複雑になってくると、層の上下関係やロックされてしまう箇所などがあちこちに現れてくるなど、細かな検討が必要になり、前2作に比べると手こずったがなんとか形になった。「一枚折り十字手裏剣C」とする。

f:id:origami:20160409230140p:image:w400

「一枚折り十字手裏剣C」展開図(フラップを差し込む前)

f:id:origami:20160409230127j:image:w400

展開図を折ったところ

f:id:origami:20160409230126j:image:w300

「一枚折り十字手裏剣C」完成写真

やはり完成サイズは前2つより小さくなる(0.5)。そして「十字手裏剣B」と同じく、刃の両側がひらいている。何よりも「見た目に比してかなり難しい」。これは小松作品のお決まりの形容詞であるが(?)、それを凌駕するアンバランスさで伝承手裏剣の「お手軽さ」は完全に消えてしまっている。


・・・


f:id:origami:20160409230125j:image:w400

以上3つ作ってみたが、どれも当初の目標である「伝承手裏剣らしさ」にはいまひとつ届かない結果となった。「表裏同等一枚折り手裏剣」が伝承手裏剣らしさを大きく残していることとは対照的である。完成形のデザインは、ある意味似たようなものであるのに、折り紙で作った場合にこれだけの違いが出てくるのは面白い。

このことを一般化して考えてみるならば、一見似たようなデザインでも、その構成の合理性/折りやすさ等には形の違い以上の差が現れることがある、という話になるだろう。これは「折り紙で作りやすいデザイン」がある、ということでもある。最終的に作品のどこに重点を置くのかは創作家次第とは言え、創作の際には視点を広く持つためにも念頭に置いておきたい。

……などと書いてみたものの、十字手裏剣でもっとシンプルな折り方があったらどうしよう。


追記(2016/04/16)

記事をアップした後にCタイプの折り線構成でAタイプのフラップの折り出しが出来そうだ、と思いついた。十字の刃を22.5度にすれば根元からフラップを一切の干渉無く生やすことができるはず…という直感に従って試した結果「一枚折り十字手裏剣D」ができた。

f:id:origami:20160416223419p:image:w300

f:id:origami:20160416223418p:image:w400

「一枚折り十字手裏剣D」展開図(1枚目はフラップを差し込む前)

f:id:origami:20160416223424j:image:w400

1枚目の展開図を折ったところ

f:id:origami:20160416223423j:image:w300

こういう形状をイメージしながら試行錯誤した

f:id:origami:20160416223422j:image:w300

「一枚折り十字手裏剣D」完成写真

大きさは「十字手裏剣C」と同じ。刃の片側はシームレスになる。ポケットとなるすき間が複数あるのと、完成形の中心部が美しくならないのが欠点。展開図折りはパズル性が高く歯応えがあると思う。


「十字手裏剣D」を少し折り変えると(それぞれのフラップをかぶせ折りのようにひらく)、ちょっと変わった形状の手裏剣になった。これは「一枚折り卍手裏剣」としよう。ポケットへの差し込みが伝承手裏剣のようにスムーズに行って気持ちよい。他にも面白い形の変わり手裏剣を考えてみるのも楽しいかもしれない。

f:id:origami:20160416223421j:image:w300

「一枚折り卍手裏剣」フラップを差し込む前

f:id:origami:20160416223420j:image:w300

「一枚折り卍手裏剣」完成写真

*1:なおパズル的なシンプル作品の常だが、「近藤はにわ」さんが後に同様のモデルを発見されている(完全に表裏同等にしていないモデル)。可能性としては、2003年以前に誰かが折っていたことも考えられるだろう

2016-4-8

カニと重なり制御の話

「カニ」の折り図を『日本折紙学会第26期会員特別配付資料』2016年3月配付)に寄稿した。2年半ほど前にJOASホールで講習をした際に配付した折り図に、多少の加筆をしている。

本作は、自分がこれまでほとんど発表してこなかった「カド出し」的な作品だ。不満な点も多々あるにせよ、全体としては割かし気に入っている方かもしれない。JOASの会員向けという限定的な発表媒体ではあるけれど、折り図が手元に届いた方にはぜひ折っていただければと思う。


カニと言えば、小学生のときに吉澤章さんの不切正方形一枚の「かに」を見て(NHK出版『創作折り紙』所収)おおいに興奮した思い出がある。口絵写真のカニは、当時田舎で採集して遊んだサワガニのイメージそのものであった。中学生のころは『トップおりがみ』のモントロールさんのオサムシを改造してカニもどきを量産していたものだった。折り紙設計登場以前の折り紙からこの世界にハマった人の例に漏れず、カニという題材で作品を作ることはやはり1つの憧れだった。*1

本格的に創作を始めてからは、哺乳類モチーフで自分のスタイルを模索することに傾倒し、昆虫をはじめとした節足動物は国内外に名手が何人もいたこともあって、自分の創作としてチャレンジする機会は少なかったが、ここ数年は哺乳類以外の題材に手を出す流れになっていて*2、そのなかでふとしたきっかけで生まれたのがこのカニだった。


さて拙作カニの推しポイントの1つとしては、形状保持のための糊付けが不要というところがあると思う。丁寧に折れば15cm折り紙用紙でもいける。これをもって優れているということでは勿論ないが、小さく折れるというのは1つの価値だとは思う。

この糊付け不要の性質は「紙の重なり・厚みの制御」という技術/設計思想から来ている。

重なり制御の技術というと、厚みの「分散」がよく俎上に載せられるが、カニでは「不要領域をまとめて邪魔にならない場所に持っていく」「厚みによる固さを形状保持のために活用する」と分散とは逆方向の操作となっている。理想としては「厚みを味方につけた作品」を作りたいところだが、本作においては「厚みを敵に回さない」といった感覚だろうか。


作品における重なり制御の問題は、形状保持だけでなく、「作品が自立するための重心の調整」や「重なりによるボリューム感(陰影による視覚的効果や密度による重量感など)」などにも関わりがあるし、紙に余計な負荷をかけないということは、折る過程にも影響をもたらすはずだ。折り手が抱く紙の負荷への意識を減らせば、より折りの変化の側面を楽しむ余裕が出てくる。言い換えればリラックスして折れる。(かもしれない)


なるべく糊付けは回避したいし、特殊な用紙にも頼りたくない、というスタンスなので、自作品ではいつも重なり制御に気を遣ってきたつもり……だったけど、HPギャラリーページを振り返って眺めてみたらそんなに徹底していなくてちょっとずっこけた。「みみずく」などは、紙の重なり的には相当危うい*3

ただ作品集で「改修」した部分では、重なり制御に対しての意識が多かったようだ。多くは細部の工夫で目立たないものだけれど、リスの上半身、馬の後半身、うさぎの前足、トラの尻尾…などがそうだ。そう言えば「気軽にはじめる22.5度系創作法」の第5回*4で重なり制御の話題に触れているが、これも作品の推敲に関しての言及だった。「安定した構造」という目標が明確であることから、改修時の指針として有効に働くのかもしれない。これは今回改めて気付いたことだ。

*1:例えば西川さんが『季刊をる』のインタビューで、小学生の頃にカニに挑戦していたエピソードを語っておられる

*2:これは少なからず意識的にそうしていた

*3:それでも目の部分の厚みを形状保持に使うのは「カニ」と同様の例になっている

*4折紙探偵団マガジン130号

2016-2-24

非対称的モデルについて

これまで「サンタクロース」「ピュアランド・ウィザード」「カタツムリ」「へび」「大きな帽子のサンタ」「ATCのためのサンタ」「魔女の面」といった「非対称」の要素を持つ作品を作ってきた。ウェブサイトの作品解説でも書いたことがあるが、非対称的な要素は折り工程の面白さ(途中形の豊かさ)を実現できそうだということに気付き、近年は特に関心を持っている。

さて、折り紙作品における「非対称」というと

がまず思い浮かぶと思う。が、他に押さえておきたいタイプとして、

  • c:(基本構造は対称的だが)パーツ配分が非対称的

というのがある。というわけで、これらa〜cの組み合わせによって、非対称性のある折り紙モデルは以下の5つに分類できる。

以下にそれぞれの概要と具体例となる作品を挙げていくが、a〜cの対称/非対称性の定義やその程度によって分類が揺れ動くような場合もあると思われる。ここではシビアな定義はひとまず置いておき(めんどくさいので)、なるべく明快な例を挙げていくことにするけれども、良い例となるのにも関わらずこちらが失念している作品もあるだろうことをお断りしておく。


A:造形も基本構造も非対称的

非対称的造形を折るために非対称的構造を用いる、という正攻法。

この分類グループはシンプルからコンプレックスまで作例も多いが、とりあえず4作品の例を挙げた。前川さんの「ホネガイ」は『ビバ!おりがみ』掲載作で設計的折り紙の非対称作品としては最も早い時期の作品だろう。


B:造形が非対称的だが基本構造もパーツ配分も対称的

非対称的造形ではあるものの非対称であるところが部分的な場合などに、構造を対称的にすることで全体をシンプルに構成できる。典型としては、左右で仕上げ方を変化させたり、あるいは一次的な基本形を二次的基本形へと折り進める際に左右で折りを変えたりするといった手法が挙げられる。

どちらも、一次的な基本形として折り出された長いカドを、一方はそのまま(イカロスの翼、ヨーダの杖)、他方は指へと折り込み、非対称的造形に仕上げている。


C:造形が非対称的で基本構造が対称的かつパーツ配分が非対称的

Bのように左右で異なる折り込みをするだけでは不可能な非対称性を持った対象の場合は、先ほども書いたとおりAが正攻法ではある。しかし条件が噛み合えば対称的な展開図構造からでも、対象の各パーツの割り当てを工夫することで可能になるケースがある。Aと比較してのメリットとしては、構成の明快さによって折りやすさが期待できることだろうか。

ラングさんの旧作のシオマネキは、展開図構造としては対角線対称だが、パーツを変則的に割り振ってハサミの非対称性を実現している。仮にBの方法論でやろうとすると、短いハサミも長く折り出した上で、折り込んで縮めることになるが、これは言うまでもなく効率がすこぶる悪い。

「暫」は、本来は繋がっている「刀」の部分を2つに分解して捉えることで左右対称の配置としている。仕上げの折りで2つのカドを片側に寄せれば非対称的造形のできあがり、という仕組みだ。


D:造形も基本構造も対称的だがパーツ配分が非対称的

対象の造形的特徴などによっては、パーツの配置を正方形の2つの対称軸に対して非対称的にすることで、より効率の良い展開図を得られることがある。また、効率のことを除いても「対称的な造形をあえて非対称で折り出す」というのはトリッキーな魅力を生むだろう。Dは全体の折り線構造では対称性を持つケースだ。

目黒さんのクモは例として非常に分かりやすい。円図がリンク先に載っているので見てほしい。

前川さんのフランケンシュタインは、足が用紙の対角カドから折り出されていて、前後に重なっているカドを互い違いに折って両足に仕上げている。今井さんのワタリガニも同様の考え方に基づいてハサミの配置が通常の並びとは異なる変則的なものになっている。

E:造形が対称的だが基本構造が非対称的

基本的な特徴はDと同様であるが、こちらは(Aと同様に)非対称的な折り線構造を用いたケースとなる。

「龍神」は鱗部分の大胆な配置や、頭部だけ45度傾いた対称軸等、見所が多い。今井さんのカマキリは頭部と前脚のカドの並びが通常「脚—頭—脚」となるところが「脚—脚—頭」となっている。このような変則的な並びは仕上げにおいてデメリットになりがちだが,そこさえクリアすればカド配置の自由度が増す。

上3つの作品はどれもボックスプリーツ(蛇腹)だが、矩形領域を配置するという設計方法(横分子蛇腹法)からして非対称構造を取り入れやすい技法と言え、作品例は結構あるようだ。対して角度系となると見つけるのが難しくなる。各務さんの「オスカー」は展開図を一見しただけではヒレの配分がどうなっているのか読み取れないまでに変則的な配置となっている。魚類は形状の特徴から非対称的な構造・配置で折りやすい題材であるが、現時点で他に類例のない作例と思われる。同じく各務さんの「チョコクロさん」も面白いが、Eの例というよりはAの例に入るかもしれない(分類が難しい例)。


パーツにおける使用例

折り紙創作では、対象をパーツ分解しておいて、独立して扱えるような部分構造として作っていく、という考え方がある。非対称的要素においても、作品全体で捉えるよりはパーツ的な一部分だけに注目した方が理解しやすいケースがある。この辺りも厳密な分類が難しい事例と言えそうだ。

以下はDの部分構造における展開例である。

神谷さんのニワトリは、通常であれば対称軸上に並べる嘴と肉垂れを、左右の辺から折り出している。SHUNさんが「半ブリル式」と呼ぶ恐竜頭部の構成も、同様に上あごと下あごを左右から折り出す構成のようだ。

どちらの作品も、全体構造での解釈としても変わらずDの分類となるが、例えば「片足だけで立っているニワトリ(曲げた方の足は見えないので短く折り出す)」であれば、Aなどに当てはまってくることになる。だとしても、頭部だけ見ればそれはDとして解釈した方が適切だろう、という意味だ。


***********

最初に挙げた自作品を上記の分類で分けると、「ピュアランド・ウィザード」「大きな帽子のサンタ」「ATCのためのサンタ」「カタツムリ」がA、「サンタクロース」「魔女の面」がB、「へび」がC、となる。実は個人的にずっとやってみたいと思っているのはE(造形が対称的だが基本構造が非対称的)の作品なのだが、「部分から広げていく」という普段自分が使っている作り方だと難しい側面があってちゃんとした形で実現はしていない。アイデアだけはぽつぽつあるのだけど、そもそもあんまり実作してなかったりする……。

それでも今回の記事を書くにあたって、2002年に作った4つ足動物の基本形の習作をいじってキツネにしてみたので、現時点ではこれでお茶を濁すことにしたい。展開図のとおり後半身がBook型対称だが、前半身が「頭—前足—前足」の並びになっていて頭部は用紙カドからの折り出しになっている。

f:id:origami:20160224224912j:image:w400

f:id:origami:20160224224911j:image:w200

f:id:origami:20160224224910j:image:w200

f:id:origami:20160224224909p:image:w300

これは元々、同年(午年)の正月にキノシタゴウさんから頂いた年賀状に描かれていた「ユニコーン」に触発されて試したものだ。「ユニコーン」は対角線上に順に「頭—尾—ツノ」が配置され、左右のカド周辺から足が折り出されているのだが、普通は片側で前足・後ろ足となるところを、片側から前足2本、反対側から後ろ足2本が折り出されているという作品だった。展開図では前足・後ろ足の折り込みに差があったがほぼ対角線対称なので、Dの分類となるだろうか。

自分がこういった非対称的なモデルというものを知って関心を覚えたのは、造形に関しては北條さんの影響が大きい。構造については、1999年の第5回折紙探偵団コンベンションで川畑さんが折り紙設計についての講演をされたのだが、円領域配置の話をするときに通常の2種の対称配置のあとに「こんなのも可能です」と対称軸がちょっとだけ傾いたような円図を紹介されたのだった。そのときに、なるほど…と思った記憶がある。


***********

というわけで、非対称モデルについての記事だったが、造形面と構造面ではちょっと考え方も違うのでごっちゃに扱うのも問題かもしれないが、クロスする側面もあるため、分類という形でまとめてみた。対称性の特徴によってもっと詳しく分析してみたかったのだが、例を考え始めたらドツボにはまりそうになったため諦めてしまった。ざっくりとした見取り図ということでご勘弁いただきたい。

なんにせよ、まだいろいろな試みの可能性がありそうだと思っている。「変則的な並びの配置」や「折る対象の変則的なカド解釈*10」等も組み合わせると、より造形と構造の関係が見所になり、鑑賞者の驚きにも繋がるだろう。

ちなみに記事を書いている間にも、若手の大雅さんが本記事分類のEタイプの22.5度系作品を作っていて、やはり何か暗黙の共通理解があるのだろうなと感じた次第だ。もはや先を越されるかも…などと焦る時期でも無いと思うし、この記事をきっかけに他の人の新作が見られれば嬉しい。

*1:『ビバ!おりがみ』に展開図

*2:『折紙探偵団マガジン』67号に折り図

*3:『神谷哲史作品集』に折り図

*4:『折紙探偵団マガジン』140号に展開図

*5:『Origami Sea Life』に折り図/『Sea Creatures in Origami』に再録

*6:『ビバ!おりがみ』に折り図

*7:『折紙探偵団マガジン』102号に展開図

*8:『折紙探偵団マガジン』145号に展開図

*9:『折紙探偵団コンベンション折り図集vol.19』に折り図

*10:本来繋がっている物を分割したり、逆に本来離れている物を繋げたり

2016-2-20

折り図における層のずらし描画による歪みの問題

genさんの以下のツイートに絡めて少し書こうと思ったら文量が増えてしまったのでブログの記事にすることにした。


形状の歪みが起こる理由としては(1)ずらし描画が図の拡大によって単純に増幅される、(2)工程内容に対応して新たなずらしを足していくうちに基準となる(正確な)形状が失われる、の2つが考えられる。(1)は、折り進めるうちに段々と図が小さくなってしまうので、見づらくならないように図を拡大していくわけだが、その際にずれの大きさも同じだけ大きくなってしまう。(2)の方は文章だとよく分からないに違いないので図で説明する。

f:id:origami:20160220183347p:image:w350

ずらし描画では、どの層を歪ませるかという選択が生じる。上の図は最も単純な例を示した物だが、A・B・Cの図が実際の折り図として出てきた場合、ほとんどの愛好家はその差を意識することはないだろう。でも折り図制作者にとってはこれらの差は意味がある。

実際の折り図を想定するならば、Aはあまり使われない…と思う。最も目に付く表側の形状が歪んでいるからである。ほとんどの人はBで描くのではないかと思う。Cもありだがこのケースではわざわざ両方の層とも歪ませる理由は見出しにくい(載せる工程内容による側面もある)。

さて、この例では層の数が2つしかないから話は簡単だが、複雑に折り畳まれた形状になると一気に描画のバリエーションが増加して大変になる。そうした図を描くときには、(a)全体形状の歪みがなるべく大きくならないようにする、(b)その工程において注目する部分の形状を正確な物に近づける、というのが基本的な考え方になるだろう。ただ厄介なことに(b)の「工程において着目する部分」というのが工程毎にころころと変わる場合があって、そうすると「前の図を複製して、部分的に描き直す」というデジタル作画の作業工程とあいまって、あっと言う間に「基準となるべき正確な形状」を見失ってしまう。歪んだ形状を基にずらして更に歪む…ということが起こるわけだ。これが(2)の問題である。

先の例のCのように、実際は描かれていなくとも基準とすべき形状が念頭にあった上で作図されているのであれば問題はないので、よって対策としては(a)の「全体形状を意識する」ことが有効となる。「ぱっと見」の印象が実物とかけ離れたものになっていないか、目立つ部分の角度が本来のものから外れすぎていないか、こういう部分に注意しつつ描くことで、大きな歪みを抑えることができるだろう。

genさんが書いているように、時々1から描き直すことで歪みをリセットするのもとても有効だ。これは(2)だけでなく(1)の「ずれの増幅」についても対策となる。


アマチュアの作家にとって折り図は速く描く必要は全く無い。自分の経験からは「急がば回れ」の言葉通り、妥協無く1つ1つ描き進めていくことを強くお勧めしたい。デジタル作画の「前の図を複製していく」ことは「ミスした部分や適当に描いた部分も丸ごと継承されていく」ということでもある。いくら速く描いたとしても、後になって要修正な部分が見つかれば今度は1つ1つ直していかなければならず、結果としてじっくり描いていたときよりも時間がかかったりすることがありうる。

特に、「ぐらい折り」や変則的な角度を多用した作品では、さくさく描き進めていたつもりがふと気付くと「なんでこんな変なバランスになっているのだろう…」という事態がままある。これについてはぼく自身も過去に何度も痛い目を見てきたため、実際に折ったものを目視しただけでは心もとない場合などに「ORIPAの折り畳み推定図をガイドにする」ということをやるようになった。対応する展開図を用意する手間は増えるが(個人的には計算するよりはずっと楽)安心して描き進めることができるので、ORIPA様々という感じだ。先月発表した「イルカ」の折り図でも、78の折り返し等でORIPAの推定図でフチの位置をチェックしている。

f:id:origami:20160220183346p:image:w400

f:id:origami:20160220183345p:image:w400