*小泉政権について

政治評論家 森田 実先生のホームページで見つけました。興味深い文章でしたので全文載せてしまいます。著作権の問題があれば速やかに削除いたします。   

『2005.6.7
2005年森田実政治日誌[158]

堕落マスコミにもの申す――旧友Y君からの電話

「失敗の最たるものは何一つそれを自覚しないことである」(カーライル)
 この頃、旧い友人からよく電話をもらう。6月5日にも、学生時代の友人のY君から電話があった。Y君はこう言った。
 「森田君。日本のマスコミは、もう『国民のためのマスコミ』ではなくなり『小泉政権のためのマスコミ』になってしまったね。君は、以前、政治権力とマスコミ権力が癒着し一体化したら超巨大権力ができあがると書いていたが、おそろしいことだね。全マスコミが小泉政権の擁護者になってしまったのだから、小泉首相はどんなことでもできるね。どんなひどいことを言っても全マスコミが小泉首相を守れば、それが通ってしまう。
 昔のマスコミはもう少しマシだったのではないかなあ。小泉首相は、2、3年前に、『この程度の公約違反はたいしたことではない』と言ったことがあった。20〜30年前までだったらマスコミが大騒ぎし、内閣総辞職になるような大失言だったのに、マスコミは小泉首相を叩かなかった。というより、小泉首相を救った。1年くらいになるが、小泉首相自身の年金と会社勤務の矛盾をつかれて『人生いろいろ、会社もいろいろ……』と、ふざけた発言をした。これをマスコミはほとんど非難しなかった。このときも小泉首相はマスコミによって救われた。
 最近、郵政民営化法案が国会で審議されているが、小泉首相の発言は、なにがなんだかさっぱりわからない。野党議員の質問に真面目に答えていない。すり替え、駆け引き、開き直りばかりだ。こういうこともマスコミが、正そうとしなければ、国民にはよくわからないのだ。
 マスコミというのは本当におそろしいほどの大権力なんだね。人の心まで支配してしまうのだから。毎日、毎日、4年間も、『小泉首相は正しい。小泉構造改革は正しい。民営化すれば何でもよくなる。官は悪い。橋本派は悪い。小泉首相に反対する者は改革に抵抗する悪い政治家だ……』と全マスコミが言いつづけてきた結果、小泉首相は何をしても人気は衰えない。人気があればマスコミは『国民が小泉さんを支持している』と書く。
 森田君。どうにかならないものかね。君もマスコミのなかにいて、何とかならなかったのか。ぼくには、新聞を買うのをやめるくらいしか、もう抵抗の手段がない。周りの人に、マスコミを信用するな、と言うくらいしかやることはない。
 森田君。君には発言の場があるだろうから、マスコミを正してくれ。正義も道義も常識も捨てて、政治権力の犬になってしまったマスコミを正すために頑張ってくれ。マスコミが小泉政権の手先になってしまったら、小泉首相はどんなことでもできる。独裁者になれる。いやもう独裁者になってしまっている。
 郵政民営化の問題は、どう考えても、日米関係の問題だろう。340兆円の郵貯資金と簡保資金を『民営化』というトンネルを通じて、アメリカの保険会社やハゲタカファンドの餌食にしようとするものではないのか。郵貯簡保のカネは、国民一人一人のカネなのに、おかしいねえ。これに大蔵(財務省)と外務省と通産(経産省)が加担しているのではないのか。ところが、この問題が何も議論されていない。政治家は、何も知らないわけではあるまい。マスコミも何も知らないわけではないだろう。それなのに日米関係の問題はみんなが避けている。これではアメリカの従属国ではないか。アメリカ政府の言うがままではないか。日本は独立国か」

 以上がY君の義憤の声である。
 Y君は切歯扼腕している。歯ぎしりし、腕を握りしめて、怒っている。Y君のように怒りを忘れていない友人がいるのは心強い。ほとんどの知人、友人が、「もうどうにもならぬ。手の打ちようがない。アメリカの植民地にされてしまうのを止めようがない。諦めるしかない」と考えているようにみえる。そんな声も時々耳にする。
 私は、Y君に、「ぼくも君と同じ気持ちだ。大新聞を買うのをやめてくれ。君の息子や娘さんにも大新聞をやめるよう勧めてくれ。テレビ局には、くだらない番組はやめるよう投書してくれ。次の選挙では小泉首相の手先の政治家には投票しないよう働きかけてくれ。千里の道も一歩からだよ」と話したが、Y君の怒りは収まらなかった。