*多田富雄先生〜医療棄民

昨日(3月2日)の朝日新聞朝刊「私の視点」に多田富雄先生の手記が載っていました。以前から、我国の医療制度が崩壊しつつあることを危惧しておりましたので、興味を持って読み進めましたが、実体験に基づいた視点は鋭く、苛烈さを極めるリハビリテーションにまつわる環境の崩壊を端的に現しておられます。
中でも、文末にある『リハビリ医療の度重なる制度改悪は、最弱者である患者の最後の希望を打ち砕き、医師や療法士のやる気をなえさせ、病院を疲弊させた。
 医療は崩壊ではなく、破壊されたのだ。
 最弱者を狙い撃ちするような非人間的な制度は、即刻撤廃するべきである。』
胸に突き刺さる程の言葉でありながら、徒に市場原理至上主義に走った国の末路を思うとき、虚しさと言いようの無い恐怖を感じました。
 小泉改革は様々な“改革”を断行し、市場原理に忠実に国家のシステムを作り変えました。効率性や能率性のみに着目すれば、確かに、リハビリを受けている人々は生産性に乏しいと言わざるを得ません。
 しかし、それを理由に回復の可能性のある患者を見捨ててよいはずがありません。
 奇しくも、今週のサンデープロジェクト亀井静香代議士と竹中平蔵氏が郵政民営化の是非に関して、改めて討論をしていました。竹中氏の主張は「民営化して、郵便局は利益を上げている。」ということに集中していたように感じました。同氏の指摘のように郵便局は納税するようになりました。しかし、それは郵便事業によって生じた利益ではなく、マネーゲームによって得たあぶく銭のような利益を基にした納税なのです。
 そんな、あぶく銭のような利益を得るために、私たち日本人は明治の時代から守られてきた“権利”を失ったのです。田舎の郵便事業や貯金、保険事業は崩壊しています。多田先生の言葉を借りるならば破壊されてしまったのです。
 いくら、竹中さんや小泉さんが正当性を主張してみたところで、行過ぎた市場原理主義は健全な資本主義経済を瓦解させるのです。行政による適切な指導が必要なのです。
 私たち有権者が目覚めねばなりません。

※参考までにご一読下さい:日本リハビリテーション病院・施設協会http://www.rehakyoh.jp/data03-16.php