*1267967910*映画 Before sunset & Before sunrise
以前 続編「Before sunrise」だけを観た.パリの街並みを背景に2人の男女(イーサン・ホーク,ジュリー.デルピー)の対話だけで進行する映画だった.正直何だかよく分からなかった.今回,第1作「Before sunrise」を観て,続けて続編も観てよく分かった.
 第1作ではヨーロッパを横断する列車(オリエント急行なのだろうか?)で,2人が出会い,1晩だけウイーンでともに過ごし,語り合う.アメリカ人のジェシーとフランス人のセリーヌの会話が魅力的.ヨーロッパ人とアメリカ人の価値観の違いも興味深い.アメリカ人に対する固定観念「知性も教養もなく,英語以外をしゃべれない」ということを自虐的に語るジェシー.しかし,語り合ううちに,互いが魅かれ,美しいウイーンの街を歩きながら,1晩を明かす.しかし,互いの連絡先を知らせず,半年後にウイーンの駅で再会することを約束して二人は別れる.今なら当然携帯でmail addressを交換するだろう.でも14年前の映画ではそれはない.誰しも二人の再会に興味をもつだろう.そして.その続編が「Before sunrise」である.
 
 再開まで9年の時間が経過している.男は小説家として,9年前の思い出を小説として描き,パリにその本のPRのためやって来る.そして,書店でのサイン会でセリーヌと出会う.偶然ではないのだろう.女はジェシーのパリの滞在を知ってきたのだろう.そして,2人は,男がその日のニューヨークに帰る飛行機の時間まで,夕暮れのパリの街(パリの夏の夕方は明るい)を歩きながら,会話を続ける.約束したウイーンでの再開はどうなったのか?2人の私生活は?2人の世界観は?2人の恋愛観は?次々と比較的聞き取りやすい英語で,会話は進展してゆく.ラブコメでもない新鮮な恋愛映画。環境保全のNGOで活動するリベラル派のセリーヌジェシーネオコンでないことに安堵するところなど、思わず苦笑いしてしまう。パリの街並み、カフェ、公園など景観を見ていても飽きない。ほっとするお薦めの恋愛映画か。さらに続編と言うともべき映画が、ジュリーデルビー主演・脚本・監督の「パリ、恋人たちの2日間」(The two days in Paris)。これも2つの国の男女の価値観の違いが面白い。まあ、ドタバタラブコメか。


 

映画 愛を読む人

 昨年夏に見た映画.2009年に観た映画でベストの作品だと思う.1955年 戦争の傷跡が残るドイツ、ドレスデンを舞台に15歳の少年とミヒャエルと21歳年上の女性ハンナとの愛を描いた映画。(ベストセラー小説「The reader (朗読者)」を映画化したもの。主演のハンナを演ずるのは「タイタニック」でデカプリオと共演した当時可愛いだけの女優だったイギリス女優ケイト・ウインシュレット。ジュード・ローと共演した「ホリデイ」でいい女優になったなあと思っていた.彼女はこの作品でアカデミー主演女優賞を獲得。彼女がここまで大女優として成長しているとは思わなかった。この役ははじめ,ニコールキッドマンが予定されていたという.しかし,彼女の妊娠で,ケイトに変更されたらしい.ふとしたことからハンナと知り合った少年は、一夏彼女のアパートに通い、彼女に古典小説を朗読する。そのとき少年は気づかなかったが、ハンナは文字を読めなかったのだ.彼女は識字症だったのだろう。そして、ハンナは何も言わず少年から去ってしまう。少年はその後、ハイデルベルク大学法学部に進み、法律の実習でナチス親衛隊員によるユダヤ人殺害に関する裁判の見学に行く。そこで見た被告はあのハンナの姿であった。彼女はユダヤ人を火災の際、家に閉じ込め、殺害した罪に問われていた。彼女が殺害を指示した文書を書いたとされ、殺害の中心的な人物であるとされたのだ。しかし、彼女は字が読めないし、書くこともできなかった。しかし,彼女はこの罪を受け入れ、終身刑となる。大学生となっていた少年は無実であることに気づく。そして20数年の時が流れ、少年はおそらく著名な弁護士になり、刑期を終えて釈放されるハンナを迎えに行く。釈放後の仕事や住まいも用意する。しかし、彼女は釈放直前に、刑務所の自室で自殺する。戦争を背景にした不条理そのものを描いた映画。戦争の傷跡残る街並み、そして2人の抜群の演技がさえる。ドイツ語で演技すればよかったでは,と思う.しかし,ケイト・ウインシュレット渾身の演技だ.考えさせることの多い映画だ。
スケッチは、秋の神戸元町海岸通を描いたもの。映画館から徒歩約10分。震災後もかつての港町の雰囲気を残した建築物が残る。