先週NHK−BS2の深夜映画で、名匠ポール・マザースキー監督『ハリーとトント』(1974年)を久しぶりに観ることができた。老人ハリー&雄猫トントのロードムービー。小津安二郎監督『東京物語』が下敷きになっているという。ハリーが笠智衆で、猫のトントが東山千栄子という役どころですね。 東京物語と同じようにハリーとトントは長男、長女、次男のところを転々として、ニューヨークから西海岸までのアメリカ横断の旅を続ける。'74年頃というと、オイルショックでアメリカも不況の時代。登場する様々な人物や風俗、風景が懐かしい。さらっと明るくてしかも奥が深い。 当時この映画については、イラストをある雑誌のために描いたり、映画評を書いたこともあるので愛着がある。ぼくにも飼い猫がいたから、さらに好きな映画だったのかもしれない。ハリー役のアート・カーニーはアカデミー主演男優賞をとった。いま調べたところ、ついに5月DVD化されるようです。嬉しいな。小津ファンの方にも必見映画!
久しぶりにトントをTVで見られた次の日、買い物から帰ったら、島のアトリエの前に、トントと同じようなオレンジ色のトラちゃんが座っていたんで、一瞬デジャ・ビュかというほどビックリしてしまった。島のトントは、近所(といっても1kmは離れた所)に住むお年寄りが餌をあげている、野良猫連中のうちのメス猫一匹。たまに道で見かけるので呼んでみると、すぐに林の中へ逃げ込んでしまうのに、何故かその日は向こうから鳴きながらそばに寄って来た。腹をすかしているのかと食べ物を与えたらよく食う。それにしても変にヒトなつっこいので怪しんでいたが、どうやらこれはサカリがついているということらしい。食べ終わっても、家の外にいて、いつまでも切ない声で鳴き続けている。満月の深夜にいたっても、ブルーの月明かりの下で時々鳴いている。いくら鳴かれても困るよね。猫がサカリのつく今頃、俳句で「猫の戀」は、やっぱり二月の季語でありました。 写真は、昼間アトリエに侵入してきて我が物顔にノシ歩く、雌猫トント。
猫 の 戀 隈 な く 月 の 照 つ て を り 万太郎
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