アッパレ、ヤタロー

oshikun2010-04-04

 六義園に桜見物。といってもこの庭園の桜は意外と少ない。
 ただひとつシダレザクラの巨木が、千両役者ととして多くのごひいきすじを集めている。さらに3月末のNHKの9時のニュースで、人気の堀潤キャスターがその番組で最後の中継を、ここで行なったのだから、効果は抜群だ。
 少し遅い午後だったけれど、駒込駅からすぐの染井門にも、入場券を求める列ができていた。そして案の定、しだれざくらのまわりはその花の数ほどの人の数、というほどではないにしても、枝の数程度にはいるだろうか。
 たしかにそのタレ具合は美しい。正門から眺めるのが基本で、その左右に広がるシンメトリーの妙は、年季の浅い桜にはとても太刀打ちできない佳麗さである。
 しかしよく見るといたいたしさも感じる。長く伸びた枝は下から柱で支えないと折れてしまうようで、その柱の多さに驚くし、桜の裏側、つまり池側にはもう伸びる枝がないので、造形の美しさも、眺める方向が限られているのだ。
 なにもこの千両役者だけに集客の労を掛けなくても、庭園自体にこそ散策する価値があるのに、と桜に釣られたきた自分を省みずに、思うのだった。
 この庭園はかの柳澤吉保が造り、明治期にあの岩崎弥太郎が買ったのだという。まさにNHK大河ドラマの庭である。すぐに石坂浩二香川照之の顔が浮かんでしまう。しかし香川、じゃなかった岩崎家に買われたからこそ、現在も細切れにされずに残されたのだろう。岩崎家は1936年に当時の東京市にこの庭園を寄付している。
 庭園全体は大きな池を囲むように造られていて、今ある小路もほぼ当時のままのようだ。複雑に入り組んだその道は一周ではとても回りきれず、風景をさらに愛でたいと思えば、何周もしなくてはならない。一周半してから、心泉亭でお茶を飲むと、東の空から陽が射してきて、木々が朱色に染まっていく。
 さらにもう一周してから、シダレザクラの前でベンチを確保する。ライトアップは5時半からだという。それを待っていると、桜の背が夕焼けに彩られて、やがて照明が灯るが、まだ陽の光の方が勝っている。しかしどんどんと寒くなって、ツレがぶるぶると震えだす。
 そんなこんなで、ライトが作り出す幽玄な夜の桜を楽しみたかったのだが、まだ陽のあるうちに退散することにした。それは先日テレビでも見たことだし。六義園の千両役者のシダレザクラ。残念ながらの曇天で、その佳麗さも表現できていない。
★こちらはシダレザクラとは池を挟んで反対側にある吹き上げ茶屋近くの古木。
★庭園の中で一番高い、藤代峠から見下ろす。向こうの右側に小さく見えるのが、あのシダレザクラ
★夕刻になって東の雲間から陽が射して、シダレザクラ近くのコケがまばゆく光り出した。
★太陽を背にしたシダレザクラの枝先。