インフル万能ワクチン開発に期待 

インフル万能ワクチン開発に期待 新型患者から抗体発見
米国のシカゴ大とエモリー大などの研究チームが、2009年に流行した新型の豚インフルエンザにかかったが回復した患者が広い範囲のインフルを予防できる抗体を持っていることを突き止めた。
ウイルスの変異によらず効く「万能ワクチン」の開発につながる可能性がある発見で、10日発行の米専門誌ジャーナル・オブ・エクスペリメンタル・メディスンに発表した。

チームは、新型インフルのワクチンを開発するため、21〜45歳の患者9人の血液から抗体の遺伝子を特定。
その遺伝子から86種類の抗体を作り、ハツカネズミに各種のインフルのウイルスを与えて反応を確かめた。

その結果、5種類の抗体では、過去10年ほどの間に流行したすべてのH1N1型ウイルスに対して予防効果があった。
また、「スペイン風邪」を起こした型や、毒性が強いH5N1型(鳥インフル)にも効果があった。

インフルのウイルスの型は、表面に突き出る棒のようなたんぱく質の形状で決まるが、今回見つかった抗体は、変異しやすい先端部ではなく、あまり変化しない「軸」の部分に反応しやすく、広範囲のウイルスに効くらしい。

チームのパトリック・ウィルソン博士は取材に「すべてのウイルスに反応するわけではないが、万能ワクチンができそうだ」と答えた。

季節性インフルに感染すると、体内に抗体ができるが、別の型が流行すると予防効果は期待できず、次の流行期に広がる型を予想して製造されるワクチンを接種する必要がある。
「万能ワクチン」ができれば、抗体の効き目が残っている間は新たな接種の必要がなくなって副反応のリスクが減るほか、製造コストの低減などが期待される。


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田代真人・国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センター長の話 
軸に作用する抗体があることは以前から分かっていた。
万能ワクチンを作るという方向性を支える一つの要素にはなるが、実現には、形状が複雑な最近の季節性インフルに効くか、ワクチン自体がアレルギー反応を起こさないかなど、課題が多く時間がかかるだろう。

出典 asahi.com 2011.1.11                     
版権 朝日新聞社