庄内は天国(3)土門拳記念館の建築

土門拳の写真については多くの人が語りに語ってきたと思いますので、ここでは割愛。強いていうならば私は人物ポートレートシリーズが大好きです。


酒田市で生まれた土門拳が、作品の全てを寄贈し、それらを展示する写真美術館を作ろうと建てられましたのが土門拳記念館。1983年に建設されました。そんな土門拳記念館ですが、足を踏み入れた瞬間、あれ、この建築、なんかいい。という不思議な感覚に襲われたのです。


ちょっと写真で振り返って見たいと思います。


記念館は新たに作られた公園のなかの拳湖の辺りに建っております。



直線的なコンクリートおよび花崗岩、ガラス、そしてスチールのみで作られた建築。奇をてらう、有機的なおどろおどろしい建築をやって有名になる人はたくさんいますが、この建築はとても静かであり、上品。



真鍮の取っ手はだいぶ年季が入ってきています。



こじんまりしつつ、ただならぬ銅板。




展示室はシンメトリー構造。写真の展示には大変使いやすく、美しい。



第2展示室への廊下。湖へ下りながら、光が増えてゆく、さりげない演出。



左側には中庭。なんかほのぼのした彫刻の周りに水が流れています。



第二展示室の休憩所。もはやここがメインなんじゃないかというくらいの演出。



ソファの配置、山と桜のぞむ景色。計算し尽くされてます。


この辺でもうああ、この建築は相当なヤツがやったな、と思い、検索してみると
谷口吉生


どおりで。
このブログでも絶賛した法隆寺宝物殿や、葛西臨海水族館などを手がけた建築家の作品でした。
全てに一本筋が通っているなと。まさに作家性のある建築家です。



視聴覚室。竹が好きだった土門拳のために作ったような庭を望む演出です。
これは現代の縁側なんでしょうね。そしてどこまでも、空調機すらも綺麗に配置されています。



スチールの処理などとにかく細かい。奇を衒わず、面倒そうなことをきちんとやる建築。




大きすぎる余裕ではなく、かといって窮屈さは全くなく、ちょうど良い塩梅の大きさで、ずっと大切にできる建築。事実今年で築35年になるというに、全く昨日建てられたかのような綺麗さで存在しています。



調べてみれば「中庭の彫刻「土門さん」はイサム・ノグチ作、エントランスホールの銘板と開館時のポスター、チケットは亀倉雄策がデザイン、視聴覚室前の庭園と中庭は勅使河原宏による作庭である。」
マジか。どおりでただならぬと思いました・・・


建築のよさは自分で好きなところを現場に行って見つけられるところですね。絵画にはない面白さがあると思います。今回は全然前知識なく見られたこともよかったなと思います。


というわけで、写真の展示ももちろん、建築もものすごく楽しめる土門拳記念館。
将来50年、100年経っていたら重文とかそういうレベルになるのではないかな、と。お勧めです。


そして今回確実に好きな作風だと実感したので、他の谷口吉生作品も巡って見たいですね。