未完原作作品をアニメ化するリスク

貯まっていたアニメも何とか3月が終わりました。これから徐々に新番組に手をつけていきますが、とりあえず終了番組に関して考えたことを書いていきたいと思います。とは言っても個別の作品について感想を書いていく気力もないし、そういうスタイルではなくしてしまったので全体論的な話を中心にいくつか行きたいと思います。

この春終了した作品の中で面白いと思えた作品はいくつかあるんですが、その中のひとつが『NANA』だったりします。世の女性を中心に大人気となっている原作マンガがあり、実写映画もヒットしたと言っていいでしょう。そんなヒットするだけの土壌が十分にある作品であるだけに、アニメも面白くて当然というのも当然なのかもしれません。もうちょっとアニオタ的視点で言えば浅香守生監督の『CCさくら』→『ちょびっツ』→『ガンスリ』と続いた人気原作モノの良さの生かし方とか、演出陣に面白いメンツが揃っていたのでその部分での面白さがあったとか、キャストの上手さが光ったとか、誉めどころの多い作品だったと思います。あるいは挑戦的だった放送枠についての論評という切り口もあるかもしれませんが*1、今回は違う視点から行きたいと思います。

ご存じのように『NANA』は原作未完の作品です。過去においても現在進行中においても、そしておそらく未来においても原作が未完の作品がアニメ化されることはよくあることでしょう。特にこれだけアニメの数が増えてしまっている昨今、人気があれば未完だろうが何だろうがアニメ化してしまおうという流れが少なからずあるかもしれません。ましてやアニメではなく実写ドラマや映画においてもマンガ原作の作品が増えていることを考えると、作品の取り合いみたいな状況が水面下ではあるのかもしれません。
ところが原作未完の作品をアニメ化(実写ドラマや映画も含めてですが以下同様)することに対するリスクみたいなものってあまり考えられていないのかなと思うことがあります。どんなリスクがあるのかというと、それは言うまでもなく「原作が完結していないこと」です。一部例外はありますが、作品全体のオチを誰も知らないという事態が発生しがちです。

そういう作品群の中で『NANA』は成功した部類に入るのではないかと思います。放送終了間際、妙にファーストシーズンであることを強調してアニメ続編の可能性を匂わせましたが*2、それはそれとして「アニメはアニメとして」のオチをつけられていたような気がします。ナナが最後どうなってしまっていたのかを伏せて娘ができたハチとブラストの再会だけを描くっていう方法が、謎は残しているとは思いますがまとめ方としてそんなに悪くはなかったように思います。
過去の原作未完アニメ化作品での成功例というと、『NANA』と同じく浅香監督の『CCさくら』や『鋼の錬金術師』なんかが記憶に新しいところでしょうか。『CCさくら』にしろ『ハガレン』にしろ原作者との打合せがかなりあったらしいとの噂を耳にします。結果として『CCさくら』の場合は同時完結というギミックを生み出しましたし、『ハガレン』の場合は「アニメはアニメとして独自の結末」を強く描き出したと評価されているように思います。今回、『NANA』の最終回を見ていると似たような交渉があったか、そこまで行かなくても制作スタッフ側の原作に対する理解と愛があったのではないかと感じてしまいます。

一方で原作が未完のままアニメ化されて、少なくともアニメの結末においては失敗だったと感じてしまうアニメも過去にはあります。ここ数年での筆頭は『犬夜叉』でしょうか。現在放送中の作品の中では『名探偵コナン』『ワンピース』なんかにも同じ危惧を抱いています。これらの作品の共通項は原作の連載開始当初から比較的明確なゴールが見えていることに他なりません。『犬夜叉』の場合は犬夜叉×かごめ×桔梗の関係にオチがつくはずですし、『コナン』の場合は黒の組織との決着がついてコナンが新一に戻るなら蘭とどうなるかというのが結末になるでしょう。『ワンピース』の場合も、グランドラインを制覇してワンピースを手にするのがゴールになるでしょう。
そしてもうひとつの共通点として、出版社の都合で連載が延命化されているというのもあります。その流れの中で一番力を持っているのが、原作者でもアニメ制作側でもなく編集者が握ってしまうという事態に陥ります。この前提が揃ってしまうと、アニメはアニメで独自の結末を見出すという方法すら絶望的になります。極論してしまうと、原作者ですら話の方向性を見失ってしまうという事態にも発展しかねません。*3
他にも『ベルセルク』や『ジパング』のようなぶった切りになってしまった作品もあります。これらの作品の場合は、話が複雑になりすぎて誰がどうやっても結末を想像できないという抜本的な問題があるかもしれませんが。

さらに一方で原作の結末が見えてからアニメ化された作品は、比較的気持ちいい終わり方をします。近年の好例は『うえきの法則』でしょうか。この春終わった作品では『武装錬金』も挙げていいかもしれません*4。引き続いていますが、『DEATH NOTE』にも同様の期待をしています。
ただし個人的な思い入れもありますが、『夢使い』のように原作と全く関係ない展開のまま終わってしまう作品もあるので一概には言えない部分もあります。

原作ファンにとってもアニメで知った人にとっても幸せで納得のいく終わり方をすることが必要だと思ってやみませんが、未完の作品をアニメ化するリスクってどの程度考えられているものなんでしょうか。アニメの本数が増えていく中で、連載中でも何でも人気のある作品をアニメ化してしまうという風潮が少なからずあるような気がしますが*5、結末がまだ無いことに対するリスクとか、それをヘッジするための原作者との良好な関係みたいなものがもっと意識されてもいいんじゃないかなと思います。
あるいは未完のマンガをアニメ化することに対するリスクヘッジとして、結末が存在しているゲームをアニメ化する例が増えてるという見方もできるかもしれませんが、それはまた別の話でしょう。ゲームはゲームでストーリーが一本にはなりにくいという大きなリスクがあるわけですから。

*1:そういや後番組はアニメじゃなくなってるのね

*2:一応、今のところ『コードギアス』みたいな続編の確定情報は無いはず。あれはあれで「あのね商法」みたいになってるが

*3:ドラゴンボール』とか『幽遊白書』とか。『スラムダンク』はまだ幸せな終わり方をできた気がするけど。あれ、ジャンプばっかだな?

*4:終盤駆け足だった気もするけど

*5:電撃系とか多い気がしますが、それはそれで独自のビジネスモデル化してるしねぇ