1次予選3日目(その2)
- 59 アレクセイ ペトロフ Alexei PETROV ロシア
Bachはモノクロームな感じで何かもう一工夫ほしいところだったが、Beethovenは和音の響きが深々として充実。全体の起伏のつけ方もうまい(ツボを押さえている)。欲を言えば右手の動きがもう少しクッキリしているとよいか。Lisztは出だしから音色で聴かせるし、ラプソディックな歌い方も堂に入っている。フリスカの細かい音型も非常に繊細で軽やか。、年齢的にみて(29歳)、もう完成されたピアニストという感じである。
- 1 安部 まりあ 日本
Bachはストレートな、ある意味日本人的な音だが安定感があって悪くない。Haydnは昨日のNikoforovとは対照的なやや硬質な音だが、落ち着いたテンポで完成度が高い。こういう演奏もアリと思わせるだけでも成功しているかも。だが最後のChopinは今ひとつで、もう少しリズムにキレというかメリハリがほしいところ。ちょっとのっぺりしている。
- 80 アンナ ウライエワ Anna ULAIEVA ウクライナ
Haydnは抒情的かつメリハリが効いていてこれも完成度が高い。Bachも流麗な弾き方で自然な起伏が感じられる。フーガも音色に非常に神経を使っているのが伝わってくるというか、音色のコントロールがすばらしい。と、ここまではよかったが最後のLisztは(期待の大きさからすると)やや微妙。もう少しアゴーゴクに工夫ができそうな気がするし、和音の響きも輝きのあるものにできると思う。
- 51 峯 麻衣子 日本
Bachはちょっとしたミスはあったが響きがきれいで悪くない。Mozartも曲のツボをよく押さえている。特にトリルは理想的にキマっていた。細かな瑕が多少あったのが惜しい。今回は女性は3曲目が鬼門になっていることが多いが、果たして彼女もその罠にはまっていたか。Chopinは音はきれいだけど音色の変化が少ないし、リズムのキレ、アゴーギクなど表現の面でも少し物足りない。
1次予選3日目(その3)
- 53 ミハイル モロゾフ Mikhail MOROZOV ロシア
彼は前回も出ていて、私は気に入っていたが1次で落ちている。Bach前奏曲は非常にリラックスした雰囲気で、フーガでは一転かなり速いテンポ(一瞬ドキっとしたところもあったが)でメリハリがある。Mozartもいい感じだけどちょっと弾き急ぐ感じのところがあったかも。Chopinも流れが停滞しないのはよいが、ちょっと素っ気ないと思う人がいても不思議ではない。細部の緻密さ、丁寧さがほしいところか。スケールの大きさ、深々とした和音の響きは魅力だけど。。
- 16 ハン ジウォン HAN Ji-Won 韓国
Bachはストレートな音でちょっと工夫無さすぎ。彼もメカニック先行タイプか。Haydnも明るく屈託のない音。もう若々しいで済まされる年齢ではないけれど(25歳)、これはこれでよいのかも。最後のChopinは、この音質(硬質な音色)でバラ4はつらいか、と思ったら果たしてその通り。しかも音質面だけでなく、表現の面でもつらかった(棒弾きとまでは言わないが)。
- 74 鈴木 宏英 日本
Bachは彼もストレートに近い弾き方でやや機械的、というか表情がない。Haydnもインテンポで駆け抜けていく。そして音は硬質のモノクローム。指は回っているけど、音楽性面は?だった。最後のChopinは主題のオクターヴの動きがちょっと重く、昨日のLEE Hanchienの方が好みだった。また全体的に音に繊細さがほしい。ちょっと暴力的である。
- 27 片田 愛理 日本
Bach, Haydn, Chopinともベールがかかったような潤いのある音で、音自体はそれほど悪くないけど、さすがに曲ごとにもう少し変化がほしい気もする。どの曲もそれぞれ感じは出ているが、あまり印象には残らなかった。
1次予選3日目(その4)
- 27 片田 愛理 日本
Bach, Haydn, Chopinともベールがかかったような潤いのある音で、音自体はそれほど悪くないけど、さすがに曲ごとにもう少し変化がほしいか。どの曲もそれぞれ感じは出ているが、あまり印象には残らなかった。
- 61 イリヤ ラシュコフスキー Ilya RASHKOVSKIY ロシア
2007年のエリザベート4位、横浜市招待国際ピアノ演奏会にも出ていて実績的には今回の出場者でNo.1か。最初のChopinは細かな表情付けと美音で聴かせる。Bach前奏曲は意外とストレートな音でちょっとテンポが不安定なところもあったが、フーガはうまくコントロールしていた。Schubertは胸に染み入るような柔らかな音色と豊かな歌心を印象付けた。ただ全体的に曲の難度的にはどうなのだろう。そこだけが不安材料である。
- 58 ドミートリ オニシチェンコ Dmitry ONISHCHENKO ウクライナ
前回を含めて浜コンには何回かめかの出場。きっとこのコンクールが好きなんだな。気のせいか前回よりデブ化しているような。Bachはまずまず抜かりないが、Mozartは(流麗ではあるが)解釈的には峯さんの方が好みだった。アクセントとか間とかもう少しあった方がよいように思える。最後のChopinを聴くと、やはり彼にはロマン派が似合うようだ。
- 70 シェン ジウミン SHEN Jiuming 中国
Bachはよく考えていて悪くないし、Beethovenも教科書通りの演奏ではあるが、今回そこまでも出来ていない人もいることを考えるとまずまず。Lisztも右手のメロディーはもう少し美しく歌わせたいところだが、うまく盛り上げていた。
1次予選3日目(その1)
演奏曲目はこちらを参照。
- 86 アルチョム ヤシンスキ− Artem YASYNSKYY ウクライナ
Bach前奏曲はソフトで温かみのあるタッチ主体。音コンあたりだとBachはみんながみんな同じような解釈で統一(?)されている感じがするのに比べるとなかなか新鮮である。Schubertも響きが豊かでダイナミックレンジも大きく骨太な印象。もちろん悪くない。Schumannも昨日のKosmiejakに比べるとアゴーギクや強弱など随所に「濃い」というか表現意欲が見られて面白い。
- 25 エリザヴェ―タ イワノワ Elizaveta IVANOVA ロシア
Bachは、2010年のBachコンクールのディプロマということでちょっと期待したのだが、もう一つパッとしない。フレーズの切れ目が明瞭でない感じである。Beethovenも、昨日の石田君に比べるとらしくなってはいるが、ただメカがもう一つなのか、細かな走句をもう少し1音1音くっきりさせたいところ。Chopinも同様。音がフニャフニャとまでは言わないがやはり速いパッセージなどでクリアに聴こえてこない。
- 22 イン ソヒャン IN So-Hyang 韓国
Bachは非常に優しい音だけど、それ一辺倒ではなく芯の通ったところもあるとよいか。フーガも同様で、どこか弱々しいというか煮え切らない印象を受ける。BeethovenもBachと同じ雰囲気の曲が続くのはどうなのだろう。Chopinもくぐもった(悪く言えば芯のない)音が多く、もう少しヌケのよい輝きにある音がほしいところ。ちなみに経歴の先生の欄を見ると、'95年の日本国際コンクールで2位だったA.Reichertの名前が出ていて、彼ももうそういう年齢なのだなとちょっと感慨に耽ってしまった。。
- 23 犬飼 新之介 日本
彼は前回も出場していて、1次落ちだったが、それほど悪い印象ではなかった。Haydnは提示部にもう少しキレというか曲想が突然変わるとこに瞬発力がほしいところで、1曲目に持ってきた割にはちょっとインパクトが薄いか。Bachは無難と思うがLisztは残念ながら睡魔が襲ってきてあまり覚えていない。。