[muzic][細野晴臣]細野晴臣「はらいそ」2

さて、細野晴臣のはらいそレビュー二回目です。
一回目のレビューからかなり経ちましたが、その間に泰安洋行やらYMOやら聴いてました。
泰安洋行ははらいそより密度が高いな。そして、実はバラバラに感じたはらいそは、泰安洋行より整理され計算されてる感があります。
その理由は細野さんのインタビュー本「THE ENDLESS TALKING」に書いてあり、納得してしまいました。
トロピカル三部作だから暑いのは半ば当たり前だけれど、はらいそは泰安洋行に比べると少々正気。。。というか、作品と創作者の距離がほどよく保たれてる。
どちらが優れてるとか駄目だとかではなくて、作品中の空気感がやはり違うよね。



安里屋ユンタ
安里屋ユンタは、カバーされる沖縄民謡としては定番なんじゃないかな。
坂本龍一もアルバム「Beauty」でカバーしています。
カバーは細野さんが先ですが。
教授の解釈だとボッサよりで憂いを帯びますが、細野さんのカバーは聴きやすい沖縄民謡ですね。
合いの手に女性ボーカルの川田さんを迎えて、4コーラスまでという作りです。
教授のカバーは2コーラスで終わってますが、はらいそのライナーノーツによると俗の替え歌は2コーラスで本土ではポピュラーなのだそう。4コーラスは正調安里屋ユンタの歌詞で、安里屋に生まれついた女の一生を綴ったもので、なんと16コーラスほど延々と続くのだとか。

すごいなー。

歌詞はバリバリの沖縄訛りで、私にはよく解りませんが、16コーラスまで入ってたならアルバムの半分が安里屋ユンタとなってたんでしょうね〜。
本当の安里屋ユンタは今まで聴いたことがないのですが、安心できるコード進行と、やはりベースがいいです。
あと跳ねる感じのドラム、ストリングスの柔らかさが安心感(奇をてらう展開がないという意味で)に繋がるのですかね〜。

自分は沖縄民謡の中でも安里屋ユンタが好きなので色んなカバーを聴いたりしましたが、これは民謡とポップスの要素がうまくミックスされてると思います。
これ以上沖縄民謡に近づけば聴きにくくなるだろうし、ポップスに近づけば民謡の良さが薄れてしまうし。
細野さんは、こういうジャンルの混ぜ方がうまくて、聴きにくい音をすんなりと聴かせてしまう音作りに長けているのだと思います。
ちなみに、安里屋ユンタのこのオケはクラウン時代にとったもので、小林旭に提供するはずの曲だったそうです。


5 フジヤマ・ママ

原曲は女性がフジヤマ・ママとして熱く心意気を語ってる歌です。
ほかにもカバーされてるようですが、細野さんの歌はこれまたイカガワシイですね。
すべての楽器を細野さんが担当しています。
この歌は一見すると普通に口ずさめそうなのですが、リズム感がかなり必要で、油断するとオケにおいてかれます(自分だけかもしれませんが(汗))
全体的に粘って跳ねる感じの曲ですね。ドラムのスネアのロール(?)が鳴ったあと、ハンドクラップでパシッとはじけます。アクセントで頭が重くてオシリではねてるというリズム感。途中ではいるマリンバも気持ちよいソロ。
特筆すべきは細野さんの歌い方でしょう。色んな方にカバーされたフジヤマ・ママですが、この歌い方は細野さんにしかできないと思います。ジャパニーズ・ルンバと同じで、これが曲のイメージを決定的にしてると思うのですが。
歌詞をみるとフジヤマ・ママの語り口として聴くべきなんでしょうが、この声で歌われるとどうも富士山に語りかけられてるよな気がして仕方ないです。。。


はらいそを初めて聴いたときに一番リピートした曲ですね。
最近はウォーリー・ビーズをリピートしがちなんですけど。


明るくて(いかがわしさはあるけど)楽しい曲です。


ファムファタール〜妖婦

これはYMO結成前夜として有名ですね。
ドラムに高橋幸宏、キーボードに坂本龍一が参加しています。
ファムファタールといえばよく「運命の女」と訳されますが、自分のイメージとしてはよくファムファタールをとりあげたグスタフ・クリムトの絵画を思い出します。
クリムトが描いたのは女性に翻弄される男性というより、翻弄しようとする女性そのものなのですが、この歌は翻弄されたいけど不安が拭えない男性の内面を描いてますね。
短調長調をいったりきたりしますが、単に暗いのではなく甘い暗さです。ドラムの音と鳥の声のせいか、密林をさ迷うようなイメージが。
細野さんは「気取ってる」といってましたが、歌い方も奇をてらうほうじゃなくストレートでフジヤマ・ママとは真逆でシリアスなのです。
で、やはりドラムがいいですね。こういうミディアムなテンポの曲は、どうしてもプレイヤーの技量が透けてしまうのですが幸宏さんのプレイは多すぎず少なすぎず、でもゲストなだけあって目立ちすぎずでやはり上手です。
聴いてると、二時間サスペンス劇場のあの妖しい感じがふとよぎりますね。



てなわけで三曲。
次はシャンバラ通信からですねー。
自分で書きたくて書いてるのですが、やはりもっと無責任にやればよかったとちょっと考えることいっぱい。。。
というのは、自分の中の細野さんブームが今はYMO後期のベース部分〜Hosonovaくらいに移行していて、はらいそをジワジワ吸収していた感覚を思い出すのが少し厳しいのでした。
むむ