Ropponmatsu Urban Nature

六本松キャンパスの植物たちブログ篇(新)

国道沿い本館正面西側の植樹帯

先日の跡地樹木に関する説明会の折に、中庭の桜のこととあわせて、国道沿いの本館正面西側の植樹帯をまるごと保全していただきたい旨の意見を述べました。ここには在来種の草花がいろいろ生育しています。今回はその植樹帯の紹介をしたいと思います(中庭の桜については前回記事をごらんください)。

六本松跡地正門から入ってすぐ右手と左手に大きな植樹帯があります。どちらもケヤキの大木が目立ちます。
これまで紹介してきている(このブログではまだですが…「いきもの通信」やゆるゆる散歩などで紹介しています)イヌノフグリカンサイタンポポはどちらの植樹帯にも生育しています。
ただ、向かって左手の植樹帯がアメリアサガオなど外来種が目立つのに対して、今回ご紹介する右手の植樹帯は在来種の草花の宝庫になっています。24時間跡地の警備をしている警備員さんの詰所のとなりです。

URの担当の方々に在来種草本の情報を伝えて、URでは主立ったポイントを選んで表土移植をする方針で臨んでいます。私も解体されてしまってなくなるよりは…と思って移植区画の選定作業に立ち会ったりしてきましたが、最近、在来種の「オグルマ」と思われる草を見つけ、区画に分割して移植するよりもなんとかまるごとこの一帯を保全してもらえないかと思うようになりました。

「オグルマ」と思われる草の、花の様子です。


あざやかな花で、はじめは外来種の何かだろうと見過ごしていました。うかつでした。

オグルマは山裾の道端などで見られるという草で、福岡では昔の文献には「やや普通」などと書かれていますが、福岡県のレッドデータブックでは「情報不足」に分類されています。私はこのごろ山野に行かないので(まちなかで精一杯です…)、オグルマが福岡でどの程度見られるのかまったく知りません。

六本松キャンパス(その前は旧制福岡高等学校)は、もともとは「田んぼだった」という話を聞いています。それ以前はおそらく湿地だったのではないかと想像されます。学校建造にあたっては造成をしているはずで、現在構内に生育している在来種の草花はおそらくキャンパス建造後に周囲(南公園〜谷の丘陵部、あるいは平地部)から構内に入ってきたものがかなりあるだろうと思われます。ただ、現在の国道は昔から「太閤道」と呼ばれていた古い道で、こうした道沿いの草花や、田んぼの畦に生えていたような草花が残った可能性もあるのではないかと想像されます。
キャンパスまわりは都市化が進み、構内で見られる在来種の草花の中には近隣ではほとんど見かけないものが多くあります。そうした草花を九大が構内で特別に保護してきたという様子はありません。草刈りなどの緑地管理の合間をぬってこれらの草花は生き残ってきたのでしょう。六本松キャンパスは結果的にいわば在来種の「箱船」のような役割を果たしていたと考えられます。

そんな在来種の、ツルボの花です。ふしぎな雰囲気の花です。構内ではこの植樹帯のみで見られます。

すぐ近くには野菊の仲間、ノコンギクが生えています。ノコンギクは今が花の季節のようです。

また、スズメノヒエという草も生えています。この仲間の草は最近はまちなかで外来種を数多く見かけますが、在来種であるスズメノヒエは都市部では珍しいと思います。ここの他では福岡城址に生育しています。

そしてこの植樹帯の中央部を中心にして、カンサイタンポポが分布しています。


カンサイタンポポは基本的に春しか花が咲かないので、いまの時期は葉(ロゼット)しか見つけることができません。

実はこの植樹帯の外縁部にはセイヨウタンポポが生えていて、春にはカンサイタンポポと肩を並べて咲いています。「ゆるゆる散歩」のときには両者の見分け方を説明するのに重宝しました。

そう言えば、ここには在来種のイヌノフグリも生えていますがその仲間のフラサバソウという外来種も生えていて、両者とてもよく似ています。ときどき間違えているブログや本を見かけるほどです。でもその見分け方も、この植樹帯で実物を見ながら学ぶことができます。

イヌノフグリ

フラサバソウ↓

このほか、この植樹帯にはトウバナ・ツボクサ・ヨモギ・クサイ・ノビルなど、いろいろな在来種の草が生きています。

トウバナ↓

ツボクサ↓


樹木はほとんどが植えられたものです。ケヤキの大木が3本あり、中央にはソテツの古い木があります。

このソテツは、どうも旧鳥飼村役場からここに移植したものらしいです。私も又聞きでしか知りませんが、相当な年齢のようです。

この植樹帯は跡地の外側からも見え、ハナミズキの花が親しまれています。


「あそこにハナミズキがあるの、知っとるね?」と、この取り組みを始めたばかりの頃に近くの方から言われました。毎年楽しみに見ているとのことでした。その方以外にも、このハナミズキをブログで取り上げている近所の方?と思われる方がいらっしゃって、ごらんになっている方は楽しみにしておられる様子です。

実は海紅豆(アメリデイゴ)や、アガパンサスも植えてあります。

アガパンサスの写真はありません、すみません)

イヌマキの木もあり、実生の芽がたくさん出ています。

そして、つつじが春を彩ってくれます。


メインページでは、この一帯を壊さずに残して、そして少年科学文化会館に来ていただいてこの一帯を自然観察林にしていただけたら…という希望を書きました。さきほど書いたように、実際にここは自然観察に使えます。
もし別の事業者がこの土地に入ることになっても、この一帯はまちなかに残る「自然」をとどめた一角だと認識していただいて、中庭あるいは「屋敷林」として生かしていただけたらと思っています。
更地にしてあらたに緑地を作るより、その土地の息吹が感じられる既存の植生を生かしたオーセンティックな「緑」を目指していただきたいと思っています。


九州大学六本松キャンパス跡地 国道沿い本館正面西側の植樹帯