海の中道大橋での事故について

まずは、亡くなられた子供達の冥福と、ご両親の回復をお祈りいたします。
さて、いくつかニュースを見ていて気になったことを。状況としては加害者のクラウンが被害者のランドクルーザーに後ろから追突して転落したそうですが、いくつかの不運が重なって最悪の結果に至ったように思います。歩道と車道の間にガードレールがあったら。橋の欄干が歩行者用の弱い防護柵でなくもっと強いものであれば。事故が起きた車線が反対側であったら。被害者の車がRV車でなくもっと車高の低いものであれば。いまさら仮定の話を連ねてもしょうがないですが、何か一つでも違っていたら生存確率は高まるものですし、やりきれないですね。もちろん、はしご酒で猛スピードを出していた加害者の行動は論外ですけど。加害者の父親が水上消防団の一員として被害者の救助にあたっていたことは、なんとも皮肉な話です。
それから橋の防護柵について市の管理責任を問う声がありますが、景観のために歩道と車道と間のガードレールを設置しなかったことや最外縁部の柵が歩行者用だったことは、国が定めた基準に従ってのことのようです。土木関連の公共事業についてはコスト削減を求める社会的圧力が非常に強まっていますから、担当者を責めるのはちょっと酷な気もしますね。実情に合わない規格を早急に改めるのが適当だと思います。
あと、公務員が事件を起こすとすぐに所属の機関や自治体を批判する声が高まり、さらにその批判に対する疑念の声も出るのがいつもの光景ですよね。これは地方公務員法29条「懲戒」や、33条「信用失墜行為の禁止」に基づくものだと思います。

第29条〔懲戒〕
職員が左の各号の一に該当する場合においては,これに対し懲戒処分として戒告,減給,停職又は免職の処分をすることができる。
一 この法律若しくは第57条に規定する特例を定めた法律又はこれに基く条例,地方公共団体の規則若しくは地方公共団体の機関の定める規程に違反した場合
二 職務上の義務に違反し,又は職務を怠つた場合
三 全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあつた場合

第33条〔信用失墜行為の禁止〕
職員は,その職の信用を傷つけ,又は職員の職全体の不名誉となるような行為をしてはならない。

公務員はそれだけ厳しい倫理を社会から要請されているということでしょう。個人的には、それだけの厳しさを求めるならそれに見合った待遇で報いなければ、人材の質的低下は避けられないと思うのですが。単純に責任を重くして罰則を厳しくしただけでは、事故の発生を抑えられるものでもないでしょう。厳罰化しさえすれば悲劇はなくなると考えるのは、あまりに単純すぎるとは思います。
もう一度言いますけど、ハシゴ酒で車を運転した加害者が一番悪い。それだけはガチ。
(追記)
飲酒運転の厳罰化について。1999年に東名高速で起きた飲酒運転事故を受けて、危険運転致死傷罪が新たに設けられました。従来は、交通事故を起こすと大半は業務上過失致死傷罪で処理され、これは最高で懲役5年の刑が科されるものでしたが、刑が軽すぎるとの批判に応えて法改正が行われ、最高で懲役20年が科されるようになりました。
さて、飲酒運転により人身事故を起こすと、普通の事故よりも重い罪になることを加害者は知っています。だからそういった事故が起きた場合、事故後に介抱したり救急車を呼んだりせず、逃げ延びようとする者が出ます。悪質なケースでは、その後に大量に飲酒し、事故時は素面だったが事故後に飲酒したかのように証拠隠滅を図ろうとする者もいるとのこと。さて、もしこれが素面での事故であれば、加害者は逃走しなかったかもしれません。過失による軽い罪だけは覚悟した上で、人道的に処置を行い、そのおかげで被害者が生存できた可能性もあります。つまり、ただの過失事故と飲酒による過失事故では刑罰に大きな差があるため、死ななくてよい被害者が死んでしまったというケースを想定できるわけです。
しょせん可能性を重ねての推論ではあるけれど、事故や犯罪が起きるにつけてとにかく厳罰化によって防げると主張する輩にも、そのような可能性を念頭において議論してもらいたいと思います。