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風雲童話城ブログ

2015-04-08

rieko-k2015-04-08

[][][][][]恋する新選組』外伝 新選組屯所事件簿5 かっこいいのは俺だ!」

※初めての方は、カテゴリーの[嗚呼、花の新選組]↑をクリック。新選組屯所事件簿1からお読みください。

新選組屯所事件簿5

文机に向かって、またも書き物をしている土方歳三

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土方歳三    「青い青い空の向こう 見つめる先のかなたに 光求めてゆくのは誠の道……と」


f:id:rieko-k:20100819123303j:image:left 沖田総司   「土方さん、また発句ですか。どれどれ……」

のぞきこむ総司。



歳    「ふふ、これは発句ではない。作詞だ。ポピュラーソングを作ってもらおうと思ってな」

総司   「作詞? それが?」

歳    「そ、そうだ」

総司   「へえ。誰に曲をつけてもらうんです? まさか、遊郭の嶋原太夫に歌ってもらうんじゃないでしょうね?」

歳    「うん、それはまあ……」

総司   「土方さんと太夫じゃ、色っぽい曲になるんでしょうね」

歳    「いや、かっこいい曲にしてもらう予定だ。それで、出かけてくる!」

総司   「じゃ、わたしもひまだから、お供します」いいつつ、にやにやしている総司。

   そこへ、市中見廻りから、永倉新八原田左之助が帰還。

f:id:rieko-k:20100908122258j:image 新八   「なんだい。沖田君。いやに、にやにやしてるじゃないか」  

総司   「これから、島原へ行くんです。かっこいい新選組の曲を歌ってもらうために」

f:id:rieko-k:20100908115628j:image:left 左之助   「かっこいいだって!? かっこいいといえば、俺だろう!」

なんの自信か、胸をはる左之助。

左之 「新八っつぁん、俺たちも行こうぜっ」

新八  「いや、しかし……おれは、都都逸(どどいつ)ぐれえしか知らねえし」

総司  「いいじゃないですか、都都逸も色っぽい」

左之 「いいねえっ、色っぽいのが最高だ!」

歳   「だからっ、色っぽい歌じゃねえっ。かっこいいのだ!」

 土方の声を聞きつけ、近藤勇が顔を出す。

f:id:rieko-k:20100908124612j:image 近藤勇 「かっこいいだって!? それは、俺のことか?」

歳    「こ、近藤さん、あんたもか……!」

げんなりする土方。

総司   「ふふふ、新選組はみんな、かっこいいのが好きなんですよ。いっそ、藤堂君も、山南さんも呼びますか?」

歳    「勝手にしろっ」

土方は、ぷいっと立ち上がった。


f:id:rieko-k:20100908115628j:image:left左之助   「おい、副長! 待ってくれっ」

f:id:rieko-k:20100908122258j:image新八  「副長、俺も行くぞ!」

総司は、藤堂、山南をさそって出てくる。

原田、永倉が土方の後を追い、近藤、沖田、藤堂、山南も、連れ立ってついていく。

藤堂   「どういうことですか?」

山南   「何の騒ぎです?」

勇    「まあ、みんなで愉快にやろうってことだろう」

新八   「で、どの太夫を呼ぶんだ?」

左之   「そりゃあ 副長におまかせだ。なにせ、ここじゃ、一番モテる」

藤堂   「いや、色街で、一番顔が広いのは局長ですよ。なにせ、花の姉妹をそろって愛人にした人だし……」

新八   「藤堂、うらやましそうだな」

藤堂   「そ、そんなことありませんよ! わたしは嶋原の女に興味はありません!」

新八   「へえ、そうかい。なら、素人の娘がいいってのかい?」

藤堂   「ちがいますって!」

山南   「永倉君、藤堂君は大名家の御落胤だ。女や金やそういう下世話なものに興味はないんだ。この人が惚れたのは、近藤さんだ」

左之   「ってことは……!」

 ハッとする原田左之助

藤堂   「何、ハッとしてるんですか!原田さん!」

左之   「いや、なに、その……」

藤堂   「何言いよどんでるんですよぉっ。妙な考えしないで下さいよっ」

 

とまあ、わいわい嶋原の揚屋に上がった新選組御一行。

呼ばれて来たのは、島原一の太夫、待幸(まゆき)太夫。迎えた土方が太夫に、したためた歌を手渡す。

歳    「これを歌ってほしいんだ」

太夫   「あれ、これには、三味の芸妓と男衆のお囃子が入用でありんす。呼んでもようござんすか?」

歳    「かまわん、何でも呼べ」

というわけで、一堂揃いました。

待幸太夫の歌声をどうぞ!  

D

左之   「なんだよ、沖田ばっかり、いい役廻りじゃねえか!」

総司   「そんなことありませんよ。この歌には、隠れ主役がいるそうですから」

左之   「誰だよ、それ」

新八   「左之さん、おめえじゃねえことは確かだ」

藤堂   「なら、土方さんでしょう。いい男だし」

左之   「ハッ……そうかっ、やっぱり……藤堂は……!」

藤堂   「だからっ、何のハッなんですかぁっ」

山南   「いや、新選組の主役といえば、近藤さんでしょう、やっぱり」

勇    「いやいや、山南君……」と、まんざらでもない近藤勇

そこで、ニヤリとした土方歳三

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歳    「新選組の主役はな、俺たちじゃねえ。新選組ファンの可愛い歴女たちだ。俺ぁ、その可愛い女の気持ちを歌にしたのさ」

(つづく)

恋する新選組(1) (角川つばさ文庫) 恋する新選組(2) (角川つばさ文庫) 恋する新選組(3) (角川つばさ文庫)

2012-12-07

rieko-k2012-12-07

[][][][][]恋する新選組』外伝 新選組屯所事件簿4

※初めての方は、カテゴリーの[嗚呼、花の新選組]↑をクリック。新選組屯所事件簿1からお読みください。

新選組屯所事件簿4

文机に向かって書き物をしている土方歳三

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土方歳三    「しれば迷い しなけれは迷わぬ 恋の道……と」


f:id:rieko-k:20100819123303j:image:left 沖田総司   「土方さん、また発句ですか。どれどれ……」

のぞきこむ総司。あわてて隠す土方。



歳    「こ、これは、歌ではない。事件簿だ」

総司   「事件簿? これが? じゃ、この『春雨や 客を返して 客に行』というのは?」

歳    「そ、それも事件簿だ」

総司   「へえ。どんな事件なんです?」

にやにやしてたずねる総司。

歳    「うん、それはまあ……つまり、監察部の山崎君からの報告だ。そんなわけで、俺は出かけてくる」

総司   「じゃ、この『しれば迷い しなけれは迷わぬ 恋の道』ってのは?」

歳    「それはだ、犯人が恋に迷っていたんだな。恋をしなければ迷うことはなかったし、事件を起こすこともなかったということだ」

総司   「なるほどねえ…」いいつつ、まだにやにやしている。

   そこへ、市中見廻りから、永倉新八が帰還。

f:id:rieko-k:20100908122258j:image 新八   「なんだい。沖田君。いやに、にやにやしてるじゃないか」  

総司   「それが、大事件なんです」

歳    「お、おい、総司……!」

新八   「大事件だって? 殺しかっ!?」

f:id:rieko-k:20100908115628j:image:left永倉新八の大声を聞きつけて、槍をかついだ原田左之助が駆け込んでくる。

 原田佐之助 「殺しだとぉ〜 犯人は誰だ! 俺にまかせろっ。引っ捕まえてやるぜ!」



歳    「ゴ、ゴホン……ご苦労、永倉君、原田君。ま、まあ、市中見回りで腹が減ったろう。飯でも食ってこい。タクワンを分けてやってもいいぞ」

左之  「へ!? 土方さんのタクワン、食っても怒らないのか」

新八   「どういう風の吹き回しだ? タクワンは土方さんの命の次に大事なんじゃなかったのか?」

歳    「つべこべいうなっ。さっさと食ってこいっ」

左之  「そ、そうかい? せっかくのお言葉だ。新八っつぁん、まずは腹ごしらえだ」

 原田は永倉をさそって台所へ去る。 

歳    「総司、いいかげんにしろ」

くすくす笑っている総司を、土方はにらみつける。

総司   「ふふふ、でも、どうします。原田さんと永倉さんは腹ごしらえをしたら、また事件解決に出張ってきますよ。土方さんの事件簿はどう決着をつけるつもりですか?」

歳    「この事件は俺がかたをつける」

土方は書き物をふところにねじ込んで立ち上がった。


f:id:rieko-k:20100908115628j:image:left左之   「おい、沖田君。副長はどこへ行ったんだ!?」

タクワン飯をかっ食らいながら駆けてくる原田。

f:id:rieko-k:20100908122258j:image新八  「左之さん、俺も行くぞ!」

酒どっくりをぶら下げた永倉もやってくる。

総司   「しょうがないな。じゃ、ついていきますか」

三人は連れ立って、土方の後をつけていく。

左之    「あ、土方さん……嶋原へ入っていったぞ。事件は嶋原か?」

新八   「まさか、嶋原の太夫が殺されたとかじゃないだろうな」

総司   「角屋に入っていくようですね」

新八   「佐之さん。どうする?」

左之   「そりゃあ、ここまで来て帰る手はないだろう。俺たちも上がろうぜ」

新八   「しかし、ここは嶋原きっての揚屋角屋だぞ。持ち合わせが……」ふところを探る永倉。

総司   「それなら、少しは持ってます。これで、お二人は待機してください」

総司はふところの財布を二人に手渡す。

左之   「ありがてえっ。しかし、沖田君はどうするんだ?」

総司   「土方さんがどこの座敷にあがるか、こっそり見てきます」と、原田、永倉と分かれて、土方が上がっていく角屋の二階へ向かう。

土方が青貝の間の前を通り過ぎたとき、部屋から、すーっと出てきた武士がいた。

刀の柄に手をかけている。

一瞬、身構える総司。

(土方さんを斬ろうとしているのか……!?)

と、室内から、「おい、いーちゃん。やめとけ」という声。

とっさに、総司は土方を斬ろうとしている侍の肩を、ポンとたたいた。

f:id:rieko-k:20100819123303j:image:left総司   「岡田さんじゃありませんか。奇遇だなあ」

ぎょっとして振り向いたのは、岡田以蔵であった。

「おお、沖田さんやないかえ」と、室内から声。

見ると、日に焼けた侍が白い歯を見せて笑っていた。

総司   「あ、坂本さん! お久しぶりです。江戸以来ですねえ」

龍馬   「まったく、懐かしいのう。まあ、一杯やっちくれ。ほれ、いーちゃんもこっちきぃや」

以蔵   「けんど、りょうちゃん。確かに、さっき通っていったのは、新選組の土方じゃき……」

龍馬   「じゃから、ここは嶋原じゃ。勤王も佐幕もない。皆、美しいおなごと遊んで飲んで、楽しゅうやるところぜよ。そんな場所で刀を抜くなんぞ、野暮じゃ。やめとけ」

以蔵   「りょうちゃん! そうはいうが、こいつも新選組の沖田じゃろうが!」

総司   「いいじゃありませんか、岡田さん。そうかたいことはいわずに」

以蔵   「な、なんじゃとっ。き、きさまっ……」

龍馬   「いーちゃん。まあ、飲め。殺し合うのはいつでもできる」

そういう龍馬は総司に酒をそそいでいる。

総司   「いやあ、京の酒はまろやかだなあ」

龍馬   「肴もなかなかいけるぜよ」

総司   「ほんとだ、この湯葉巻き、うまいなあ」

龍馬   「これもうまいぜよ。蕪蒸しじゃ」

以蔵そっちのけで飲んだり食ったりする二人。

以蔵   「俺の分を食うな、沖田!」

総司、くすくす笑って、「おかわりを頼んで、岡田さんも一緒にやりましょう」

やがて、遊郭の明かりが灯って、嶋原は夜のしじまに……

すっかり出来上がってしまった龍馬、総司、以蔵は、二軒目に行こうと角屋を出る。

と、こちらも一階で出来上がってしまった永倉と原田が「沖田君!二軒目なら付き合うぜ」と出てくる。

f:id:rieko-k:20100908115628j:image:left左之   「ところで、こいつらは誰だ?」


総司   「あ、江戸以来の朋友ですよ。りょうちゃんといーちゃん」

f:id:rieko-k:20100908122258j:image新八   「しかし、土方さんはどうした?」

総司   「二階の奥へ上がったきりですから、また、モテているんでしょうよ」

左之   「そうか、副長は腹立つほどモテるからなあ」

新八   「殺しの件はどうなったんだ?」

左之   「もういいじゃねえか、俺たちも酔っぱらったことだし」

以蔵   「そうじゃそうじゃ。酔っぱらったら、殺すも殺されるもない!」

龍馬   「おっ、いーちゃん。わかってきたな」

総司   「行こうぜ、二軒目!」

とまあ、酔っぱらい軍団は二軒目へなだれこむ。


それを困ったように見送ったのは、監察部の山崎丞である。

山崎   「はて、どうしたものか。これを副長に報告するかどうか……」

と、そこへ土方が女連れで出てくる。

f:id:rieko-k:20100819122858j:image:left土方   「どうした、山崎君」



山崎   「あ、いや。それがそのう……」

土方   「空を見ろ」

「は?」と、空を見上げる山崎。空には満月が青く煌々とかがやいていた。

土方   「一句、浮かばんかね?」

山崎   「は、いや……わたしはその方面は……」

土方   「春の月 客を返して 客に行……だ」

山崎   「はあ……?」

土方   「総司ら(やつら)は、かえったようだな」

山崎   「はい。ご存知でしたか。しかし、沖田先生がたは、土佐の坂本、岡田と……」

土方   「しれば迷い しなけれは迷わぬ 恋の道……今夜は迷うのに、いい月だ」

山崎   「は?」

土方   「こういう夜もあっていいだろう。な、山崎君」

そのまま、女の肩を抱いて楼閣へ向かう土方。

それを見送りつつ、山崎……

「なるほど、今夜の月は、女ゴロシが迷う月か……」



(つづく)



恋組ファンの子たちに約束した『恋する新選組』外伝。ようやっと更新しました。お目汚しですが…

ちなみに、本文に出てくる歌「しれば迷い しなけれは迷わぬ 恋の道」「春雨や 客を返して 客に行」は、本物の歳さまが遺した歌です。しかめっ面して、可愛い歌をよむのが得意な歳さま(ラヴ♥)。

※ブログ中の新選組キャラ絵は『恋する新選組』(絵/朝未さん)シリーズのギャグパターンですが、外伝は本編に関係ありません。

2012-11-26

rieko-k2012-11-26

[][][][][]恋する新選組』外伝

久しぶりに【嗚呼、花の新選組新選組屯所事件簿4」 を書こうかと思って、たまたま、これまでの外伝を見直したら、霧ちゃんのコメントを見逃していたことが発覚! 霧ちゃん、ごめんね〜

今頃、気づいてレスしましたが、なんと一年も経っているので、6年生だった霧ちゃんも中学生だね。

それで、あの頃が懐かしくなりました。

あの頃、よく来てくれた子たち、東城夕陽ちゃん、小楽ちゃん、如月ちゃん、笑ちゃん(翔くん)、ひろままさん、まゆこさん、佐那さん、AKIKOさん、円香ちゃん、ヒナちゃん、蓮ちゃん、麗蘭ちゃん、ピクトちゃん、しゃおちゃん、スプリングフラワーちゃん、suigyoちゃん、佳苗ちゃん、せなちゃん、Kちゃん、紫音ちゃん、天海ちゃん、じんさくちゃん、桃ちゃん、しょうちゃん、紅蓮ちゃん、海ちゃん、りィ☆ちゃん、さくらさん、ゆめちゃん、きょちぞーさん、沙世姫ちゃん、バオーさん、ゆうさん……まだまだ数えきれない皆、元気かな? もう大人になってしまった人もいるよね?

そう、あの頃は、コメントが100どころか200越え、300越えまであって、もう掲示板化していたことも思い出しました。

まだ、ここを見てくれてる子はいるかなあ〜 先生やお母さんも見て下さっていたけど、お元気かな?

みんな、どうしてるかな〜って、思いにふけっていたら時間がなくなってしまいました。

外伝更新は、またこんどね♪

代わりに、これまでの外伝をリンクしておきます。

『恋する新選組』外伝 「嗚呼、花の新選組」龍馬伝の噂で妄想中

『恋する新選組』外伝 「嗚呼、花の新選組」新選組屯所事件簿2

『恋する新選組』外伝 「嗚呼、花の新選組」新選組屯所事件簿3

 

2011-04-23

rieko-k2011-04-23

[][][][]恋する新選組』外伝

「嗚呼、花の新選組新選組屯所事件簿3

初めての方は新選組屯所事件簿1からお読みください。↑カテゴリーの[嗚呼、花の新選組]をクリックすれば出てきます。



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土方歳三 「斬れ」


f:id:rieko-k:20100908115628j:image:left 原田佐之助 「よっしゃーっ! で、だれを?」




歳   「むろん、新選組に潜入している密偵だ。君に斬れるか?」

佐   「おうっ」

歳   「楠小十郎だが」

佐   「えっ」

歳   「……確か、君は小十郎と親しかったな。一緒に、野良犬を飼っていたようだが」

佐   「そ、そうなんだ。あいつ、犬好きで……。よく、飯や魚をかすめ取ってくれ……いや、残してくれたんだ」

歳   「ほう……で、斬れるのか斬れないのか」

佐   「斬れるさっ。任せとけ!」

 強がって去る原田。それを見送る土方。

 原田とすれ違って、沖田総司がやってくる。


f:id:rieko-k:20100819123303j:image:left 沖田総司  「どうしたんですか、原田さん。ようすが変でしたけど」



歳   「はりきっていたか?」

総司  「いえ、しょげてたみたいですけど」

歳   「やっぱり、そうか。やむをえん。総司、お前、検分してこい」

総司  「何をですか?」

歳   「原田が密偵を斬れるかどうか。斬れなければ、お前が斬れ」

総司  「ま、まさか、原田さんを! 斬るんですか!?」

歳   「ばか、斬るのは楠小十郎だ」

総司  「楠君といえば、ああ、長州の密偵だとか。山崎さんがいってましたね」

歳   「どうやら、桂小五郎の手の者らしい」

総司  「ひどいな。長州の桂さんというのは、あんな若い人を密偵に使ってるんですか。楠君は、まだ前髪の少年ですよ」

歳   「誰であろうと、密偵は斬るしかない。行け」

 冷たく言い放つ土方。しぶしぶ立ち上がる総司。

  

 場面変わって、ここは屯所裏。野良犬の親子に飯をやる、楠小十郎。まだ前髪の美少年である。

 そこへ、原田佐之助。

   

小   「あ、原田先生。こいつら、ぺろりと食べましたよ。今日の魚はうまかったからなあ」

佐   「あ、うん。そうか…」

小   「どうかなさいましたか?」

佐   「いや…その、おめえ、死にたくねえだろうなあ」

小   「えっ」

 びくりと後ずさりをする小十郎。

佐   「なんで、密偵などになった……」

 刀に手をかけた原田を見て、小十郎はぎょうてんする。

小   「ま、待って下さいっ、原田先生! わたしは密偵などではっ…」

佐   「だまれっ」

 怒鳴りつけた原田の顔に、小十郎は凍りつく。

佐   「嘘をつくな。おれにまで、嘘をつくんじゃねえっ」

小   「うっうっ、た、助けて下さい……原田先生」泣きだす小十郎。

佐   「かわいそうだが、そうはいかねえんだよ」

 キャンキャン

 原田の殺気に子犬たちが吠え、母犬は小十郎の前に出て、小さく唸った。

佐   「なんだよ、おめえら。小十郎をかばうのかよ。おれだって、握り飯をやったろう」

 グルルルルッ、ワンワン キャンキャン

 野良犬の母子は吠え続ける

佐   「どけ。おれは人は斬れても、犬は斬れねえんだ。頼むからそこをどいてくれ」

小   「た、頼みます、原田先生。密偵はやめて、田舎へ帰ります! ですから…」

佐   「そうはいかねえっといったろう!」

 地を蹴った原田の白刃が舞った。

小   「ぎゃあっ」

 倒れる小十郎。

 それを見下ろして、刀をおさめる佐之助。

佐   「土方さん、そこにいるんだろう。俺がやれるのはここまでだ、後は勝手にしてくれ」

 振り向きもせず去っていく原田。だが、姿を現したのは沖田であった。

総司  「よしよし、怖がらなくていいぞ。この人は死んでない。峰打ちだ」

 総司は、おびえる野良犬たちの頭をなでた。


 その深夜。

 意識を取り戻した楠小十郎は、長州屋敷へ駆けていた。

小   (原田さんには悪いが、わたしが逃げ込む場所は、桂さんの所しかないんだ……!)

 屋敷の扉をたたこうとした時、灯篭のかげから人影が……

人影  「ここへ来てはいけないな」

小   「あっ」

 小十郎がとんで逃げようとしたせつな、闇に白光がはしった。

小   「わあっ」

 血しぶきがとんで、小十郎はどっと倒れた。

人影  「悪いが、右腕の筋を斬らせてもらった。これで、君はもう剣を使えない」

小   「あなたは、沖田先生……!」

総司  「今夜、新選組から君の噂を流した。君はすべてを白状して死んだとね。長州屋敷に入れば、裏切り者として殺されるだけだ。それとも、今ここで、斬って捨てようか。わたしは、原田さんと違って、君を斬るのに迷いはないが…」

 と、小十郎は脱兎のごとく逃げた。

 それをのんびり見送った沖田は、しずかに刀をおさめた。

  

歳   「ぶわっかもん! 副長助勤が二人もそろって、逃がしただとっ」

佐   「誠に面目ない」

総司  「土方さん、どうか、切腹だけはご勘弁を」

歳   「罪は重いぞ」

 二人をねめつける土方。

歳   「罰として、原田はこれから十日間の飯炊きだ。総司、おめえは風呂炊きだ」

佐&総司 「ええーっ」

歳   「いっとくが、この罰は小十郎を逃がした罰ではない。副長を煙(けむ)に巻いた罰だ。二人して、せいぜい煙に巻かれやがれ!」

佐&総司 「ははーっ」



翌朝。

永倉  「おはよう! さあ、めしだめしだ〜」

籐堂  「おはようございます。いいお天気だなあ。あれ、どうしたんですか、斉藤さん」

斉藤  「いや、昨日の風呂が熱すぎて、ゆっくり湯につかれなかったんだ。うう、ちょっと、肩がこって…」

 そこへ、ほっぺたに飯粒をつけ、でかくなった腹をたたきながら出てくる原田佐之助。

佐   「今日も元気だ!ご飯がうまいっ!!」

籐堂  「ええーっ! なんで、原田さんが…」

 全員、だっと台所へ駆け込む。

 その前にひろがった惨状は……



この後は恋組ファンには見えているかと。

というわけで、まさかのだじゃれオチ……すまぬ。ほんのお遊びなので、本格的な物語は拙著をお読み下され。

※ブログ中の新選組キャラ絵は『恋する新選組』(絵/朝未さん)シリーズのギャグパターンです。

恋組ファン・リクエストの「嗚呼、花の新選組新選組屯所事件簿3です。

ようやっと、更新しました〜

その前に、角川つばさ文庫『恋する新選組3』のファンページも、ぜひご覧くださいまし。

恋する新選組(1) (角川つばさ文庫) 恋する新選組(2) (角川つばさ文庫) 恋する新選組(3) (角川つばさ文庫) 月下花伝―時の橋を駆けて 花天新選組―君よいつの日か会おう

2010-09-08

rieko-k2010-09-08

[][][][][]恋する新選組』外伝 新選組屯所事件簿2

※初めての方は、新選組屯所事件簿1からお読みください。

新選組屯所事件簿2

新選組局長室にて

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土方歳三 「どういうことか、聞かせてもらおうか」


f:id:rieko-k:20100908115628j:image:left 原田佐之助 「どういうことって、その、まあ、なんだ。ちょっと、食い過ぎて…」


f:id:rieko-k:20100819123303j:image:left 沖田総司  「あれ? このシーン、なんか既視感(デジャ・ブ)が…!?」




歳   「飯櫃(めしびつ)がからっぽだ」

佐   「あ、いや、これはなんだ、その、新八っつあんが食ったんだ。」

歳   「永倉が? では、酒樽も空っぽだが、これも永倉君が呑んだのかね?」

佐   「うん、それがそうなんだ。まあ、かんべんしてやってくれ、なあ、土方さん! たかが飯や酒だ…」

   そこへ、市中見廻りから、永倉新八が帰還。

f:id:rieko-k:20100908122258j:image 新八   「いやあ、今日は台風が来ているそうだ。涼しくて助かったよ。」

   

歳   「ご苦労、永倉君。ところで、君は、市中見廻りだというのに、飯はともかく、大酒まで呑んだのかね?」

新八  「は? 何の話だ?」

歳   「原田君。こそこそ、どこへ行く」

佐   「あ、いや、ちょっと、厠(かわや)まで…」

歳   「ぶっわかっもん! 毎食茶碗に五杯、三度の飯プラスおやつで、まだ足りんのかっ!」

佐   「うっへ…」

総司  「ますます、既視感が…!」

新八  「なんだ、佐之さん。また、飯を食い過ぎたのか。」

歳   「酒もだ。樽を空けた」

新八  「なんだって!? そりゃあ、ひでえ。見廻りの後のかけつけ一杯、きゅうっとやるのを楽しみ帰ってきたのに」

佐   (こそこそ……)

歳   「原田君。ところで、君のふところがふくらんでいるが、それは何だね?」

佐   「あ、これはその……食いすぎたんで腹がでっかくなっちまって。あははは」

 そこへ、近藤勇、ごきげんで帰還。

f:id:rieko-k:20100908124612j:image 近藤勇 「いやあ、ただいま。会津のお方からみやげをもらった。うまい地酒だそうだ。ついでに、料理屋で肴をみつくろってきた。みんなで呑もう!」

佐   「近藤局長! あんたは命の恩人だっ」(涙ぐむ佐之助)

勇   「なんだ、何かあったのか?」

歳   「ふんっ」

勇   「総司、何があったんだ?」

総司  「いや、既視感が……」

歳   「そういや、近藤さん。守護職屋敷に行っただけにしては、帰りが遅いな」

勇   「ぎくっ…いや、それはその…ちょっと寄り道を……」

歳   「ほう、白粉くさい寄り道かね」

勇   「ぎくっぎくっ……そ、総司ぃ、助けてくれぃ…」

総司  「土方さん。なんか、イライラしてませんか。そういえば、土方さんに、島原から天紅のついた色っぽい恋文がどっさり来てましたが、あれ、どうしました?」

歳   「むむっ……あんなものは捨てた」

総司  「へえ、そうですか。でも、小島の義兄さんのところへ、何かがどさっと届いたとか。親戚で廻して面白がったらしいですよ。土方さんの俳句もそえられていたとか……報国の心わするゝ婦人かな…」

歳   「坊や、お前は相当人が悪いな」

総司  「はい。最近、土方さんに似てきたようで…」

歳   「なら、ついて来い。おれは急に報国の心を忘れたくなった」

総司  「ええっ!?」

歳   「おれに似てきたんだろう?なら、来い。今度こそ、いい女を紹介してやる」

総司  「いえ、結構です! わたしはべつに……!」

歳   「いいから来い。こいつらに付き合ってたんじゃイライラが増す」

総司  「いえ、わたしは結構です。イライラしてませんからっ。近藤先生! 助けて下さいよぉ〜」

勇   「すまん、総司。だが、もうそろそろ、いい頃だ。行って来い!」

総司  「そんなぁーーーっ」(ずるずる)

    総司悪夢のデジャ・ブの夜。屯所の軒下で。

佐   「ほれ、食え。おめえは子沢山だからよう、握り飯、でっかいの持ってきたやったぞ。」

    野良犬の母子に、握り飯をやる佐之助。

佐   「感謝しろよ。おめえらの恩人は沖田総司ってえ、一番隊組長だ。市中見廻りのときゃあ、かみつくんじゃねえぞ」



(念のため、越水はヒマではありません)

※ブログ中の新選組キャラ絵は『恋する新選組』(絵/朝未さん)シリーズのギャグパターンです。

2010-08-19

rieko-k2010-08-19

[][][][][]龍馬伝の噂で妄想中

NHK大河で、新選組の近藤さんが、こともあろうに、龍馬さまの恋人お龍さんに手を出し、龍馬さまから刀の柄で一撃され、のびる……という事件があったと聞き(このところ、同ドラマの新選組の扱いが寂しすぎて観ていなかった…)、仰天してしまいました。

コメントに書いたことですが、まず、近藤さんって、お龍さんタイプは好みじゃないと思います。

近藤さんの好みは、従順で、あでやかな島原の太夫みたいな女性ですから(奥さんにする場合は別だけど)。お龍さんのような、鉄火肌でしっかり者の女性はむしろ苦手だったのでは?

それに、実戦は、どう考えても近藤さんの方が強かったはずです。近藤さんは物凄い歴戦の剣士だし、龍馬さまは平和主義で(そこが素敵なんだけど)、あんまり剣は抜いてませんから。

そしたら、如月ちゃんが、これは士道不覚悟になってしまう〜って、書き込みを。

まったくだ。鬼の副長に知れたら、近藤さんだって、せ、切腹では!?

と、思ったら、妄想が加速してしまいました。

◆「嗚呼、花の新選組」事件簿1

新選組局長室にて

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土方歳三 「どういうことか、聞かせてもらおうか」


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近藤勇 「どういうことって、その、まあ、なんだ。ちょっと、呑み過ぎて…」


歳   「女がいたそうだな」

勇   「ぎくっ…あ、いや、あれはなんだ。坂本龍馬の女だ。ちょっと、取り調べを…」

歳   「何の取り調べだ」

勇   「うん、それがなんだ。まあ、なに、大したことでは…」

歳   「ぶっわかっもん! 三人も女がいてまだ足りんのかっ!」

勇   「うっへ…」

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  と、そこへ、のんきな顔の沖田総司が登場。

総司  「いやあ、今日は暑いなあ。38度ですってよ。あれ、近藤先生、土方さん、どうかしたんですか?」


歳   「おめえにゃ、関係ねえ。坊やは、あっち行ってろ」

総司  「むっ。どうせ、わたしは坊やでしょうよ。そんなこというなら、いいこと教えてあげませんからね」

勇   「いいこと? いいことってなんだ?」

総司  「それがねえ。島原に、新顔の太夫がお披露目されたそうですよ。若い隊士たちが騒いでました」

勇   「なに、いい女か!?」

歳   「むむむっ……(怒りを増幅中)」

総司  「とんでもなくいい女らしいですよ。なんでも、土佐の坂本と長州の高杉が、太夫をめぐって張り合ってるっていいますからね。」

勇   「なにっ、坂本が! よーし、今度こそっ…!」

歳   「おほん、近藤さん。あんたは士道不覚悟で、謹慎!だ。総司、ついてこい。その女に会いに行く」

勇   「ええーっ」

そうくるか、歳さん!

って、妄想中、突っ込んでいた私です。(念のため、越水はヒマではありません)

※ブログ中の新選組キャラ絵は『恋する新選組』(絵/朝未さん)シリーズのギャグパターンです。