聖地アニメとして観るガールズ&パンツァーと、アニメによる聖地への経済効果

 シネプレックス水戸で行われたガールズ&パンツァーの一挙上映会に行き、観終わった後に大洗に行って来ました。上映会は夜通しというキツいスケジュールではありましたが最終回が終わった時には拍手が起こるなどなかなか良いものでしたし、とにかく音響に痺れまくりました。そしてその脚で鹿島臨海鉄道に乗り大洗へと行ってきましたが、本当に戦車がいましたね。

  • 聖地としての大洗の使い方

 実は大洗には冬コミ期間中にも行ってまして、その時は祭りなどありませんでしたので素の大洗がどんなものかという感じで回って来ましたが、何もやってない時でも大洗駅売店やリゾートアウトレットにあるあんこう焼きの店には行列が出来ており、普段から大洗に聖地巡礼に行くガルパンファンはかなり多いと観て良いのだろうと思いました。それが先日の大洗春まつり「海楽フェスタ」に繋がったわけですから(ですよね?)なかなかに凄いものがあります。
http://www.oarai-info.jp/event/kairaku-fes.html
 そんなガルパンですが、作中には大洗の街が出てきており街中を戦車が走ったりもしていますが、聖地アニメとして聖地をきちんと描いているかと言われれば決してそんなことはありません。聖グロリアーナとの練習試合の時に出てきた大洗の街は、その場所そのものは確かに大洗の商店街なりアウトレットの前なりに存在していて大洗にある風景ではあるのですが、戦車が走っていった道路の位置関係というか、カットごとの繋がりと街中の位置関係が全然デタラメなんですよね。全部が全部デタラメではないのですが、戦車戦をより映えるものとして見せるために位置関係を改変したような作りになっているといった感じでした。なので戦車であれだけ走ってるからさぞかし広いのだろうと思っていたら、ものの30分も歩けば主要なシーンの場所を網羅出来てしまうといった具合でした。
 他にも、例えば秋山殿が連れてきてくれた戦車道ショップがありますが、あれは確かに大洗の商店街に存在する模型ショップそのまんまです外観も中も市ヶ谷にある「のりもの倶楽部」だそうです。が、あれって学園艦の上にあるんですよね。市街戦をやったり学園艦に乗り込んでいるのは大洗の街です。つまり、学園艦の中にも大洗の街が一部取り入れられていたりしているわけで、再現性を徹底しているわけではないんですよね。
 リアルとの微妙な違いといえば、10話での決勝戦前に戦車を列車で運ぶシーンがあったりもしますが、牽引してる車輌が大洗を通る鹿島臨海鉄道の普通の気動車だったりするんですよね。まあそもそも戦車を貨物列車で運ぶ事自体が無茶だとは思うのですが、おまけに機関車でもなく普通の旅客用の気動車というあたりもリアリティとは程遠いということにもなると思います。ただし一方では、第三セクター鉄道としてはそれなりに珍しい(?)貨物列車の定期運行がある鹿島臨海鉄道でもありますし、それをアニメの中に取り入れているという面白さも同時に表しています。

 そもそも学園艦というファンタジー設定もありますが、北海道とを行き来する大型フェリーの港があるのが大洗という街でもありますから、そうした大洗という街を構成する要素をふんだんに使いつつも、アニメの世界観や展開の中で利用しやすいような形に改変を加えながら取り入れたのがこのガルパンにおける聖地の使い方ではないかと思いますし、聖地を大事にしすぎて腫れ物に触るように使っているようなアニメとはずいぶん異なる部分にもなっているように感じます。

 経済効果について観て行きましょう。「海楽フェスタ」には主催者発表で5万人ほど訪れていたとのことですが、来場者が1人あたり2000円ほど飲み食いしたり何か買った計算であればそれだけで1億円くらいの効果があったことになります。海楽フェスタには地元の飲食店などの屋台が出店していたようですし、会場近くのアウトレットにも流れたでしょうからその分がそのまま地元に落ちたと考えていいでしょう。
 移動手段も立派な経済効果です。自家用車での移動はどうかわかりませんが、鉄道など公共の交通機関の移動であれば経済効果になります。鉄道なら水戸からの鹿島臨海鉄道乗車で運賃分が経済効果となるでしょう。当日限定の記念きっぷが往復乗車券となるありがたい措置でしたが、その往復分の運賃も大洗へのアクセスを支える交通機関に入るとなるとバカにならないでしょう。実態はどうだったかわかりませんが、茨城交通も臨時バスを出していたそうなのでそちらへの効果もありそうです。
 細かく見ていけば、例えばこういうお祭りではなく平時に聖地巡礼した場合だとどうしてもコンビニ等を利用してしまいますが、コンビニだってほとんどは直営店ではなくFC店ですし多くは地元の酒屋さんなど個人商店が転身したり地元の人が経営したり働いていたりするわけですし、コンビニでモノを買うだけでも地元への経済効果となると思います。
 大洗の立地も絶妙ですよね。上野からだと最短で1時間半くらいで行けてしまうわけですが、さすがに1食も食べずに行って帰るわけにもいかないでしょう。大洗には海鮮が美味しいということもありますし、多くの巡礼者が昼食くらいは食べていくことでしょう。さすがに宿泊するほどの距離ではない気がしますが、場所によっては首都圏からだとしても良い距離になるとも思いますし、そうすると宿泊需要も見込める……となるとその分も経済効果として考えられることになります。
 つまるところ、大洗がガルパンとコラボしたからこそ増えたもの全てが経済効果ということになるんですよね。逆に言えばコラボしなければ発生しなかったお金のやり取りが。たくさんの人が訪れたことに加えてお金を落とせる要素があったことで、大きな経済効果を生んだと考えられます。

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 もちろんリスクも無かったわけではないようにも思いますし、実際の街をところどころ改変してアニメで使うという手法(旅館とか壊されてますし)で実際に街を訪れようという人が現れるのかどうかもわからなかったでしょうから結構な賭けだったようにも思いますが、そうしたところを恐れずにコラボしたことが大きな経済効果を生んだのだろうと思っています。大洗という街に祭りを開いたり、海鮮やアウトレットなどの名物や施設が存在するような街だったことも大きかったのでしょうし、アニメでも街全体の色んなところを使っているように恵まれた面もありました。例えばけいおん!の学校のモデルとなった豊郷小学校旧校舎群などは、建物は素晴らしいのですがせっかく聖地巡礼に行ってもお金を落とせる場所がほぼ皆無という、せっかく人が集まっても経済効果として享受しようがないようなパターンもあったりします。それと比較すると経済効果を得やすいモデルであったことも間違いないでしょう。花咲くいろは湯涌温泉氷菓の飛騨高山などもアニメの聖地として人気ですし、宿泊が必ず発生するような場所ということもあり1人あたりの経済効果はかなり高いはずですが、距離や宿泊などの時間や費用面のハードルが高くなり万単位での集客とはなかなかならないようです。大洗は距離や時間面での手軽さも5万人(もちろんガルパン目当ての人ばかりではないのでしょうが)の集客に繋がったと観ていいのでしょう。アニメが大ヒットしたのは当然一番大きな要因なのですけどね。
 実際にどのくらいの経済効果があったのかまでが公表されているのを観たことがないので比較のしようがないですし、ガルパン・大洗が他のアニメの舞台よりも経済効果が大きかったと断言できるものではありませんが、どちらかと言えばニッチな深夜アニメとのコラボで聖地に億単位の経済効果が生まれたことは事実ですし、これからのアニメでも同様のことが起こせるのか、興味深く観て行きたいと思います。