名人

 囲碁の話。本因坊秀哉という名人の引退碁を追いながら、終局から1年ちょっと後の名人の死を繋げて、その終わりに立ち合う。
 囲碁アミーゴというサイト (http://www.igoamigo.com/) に書かれていて知った。
 冒頭から終局と名人の死があり、死体から名人の人となりを書き起こしてゆき、一方の対局者である大竹七段は、その内弟子を含む家族から書き起こしている。しかし碁盤の上では大竹七段の粘りというか苦悩のようなものが中心で、それは消費時間の差が反映されてもいるのかもしれない。名人が描かれるのは、主に対局の姿勢やその周辺での紛糾を通してで、結局は両対局者ともに客観的に描かれている。しかし、碁は進み、名人の体は弱まってゆく。

名人が私になつかしい人となったのは、その時の姿などが私の心にしみたせいもあるだろう。(59ページ)

というのが読んでいて追体験させられる。
 解説は山本健吉。昭和37年9月のもの。