筒井康隆「ヨッパ谷への降下 自選ファンタジー傑作集」
- 作者: 筒井康隆
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2005/12/22
- メディア: 文庫
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中国の故事の体裁をとって語られる夢の世界を自在に操り解釈する導師の話「法子と雲海」が一番面白かった。核戦争を目前に世界が逆戻りをすることを願う科学者が勢い余って高校時代まで時間をさかのぼり、そうこうするうちにすっかり遡ったことを忘れてしまう「秒読み」も、つぎつぎと脱臼して行くかのような展開が絶妙。「あのふたり様子が変」はタイトルは面白いが上滑りし続けるだけの展開は冗長。一時期の小林恭二氏の作品を思い出した。「家」は椎名誠の小説から文章の面白さをとりさったような味わい。当然面白くない。「ヨッパ谷への降下」はまるで文学作品のよう。こういうのつまらないんだよなー。でも、全体としてはさすが筒井康隆氏、各所で絶賛されるだけのことはある力強い作品集でした。これで税別476円はお得。新潮文庫さん、ありがとう!しかし、巻末の河合隼雄の「解説」は、不愉快を通り越して不気味ですらある。ノリの悪い文章で悪しき啓蒙主義の具体的見本例のような、おぞましい文字の連なりを見せられると、ああ、これが日本の教育をダメにしているのだなあとしみじみ実感することができる。「読書感想文」の悪い例として読むにはなかなかためになります。