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2016-09-26

国立新美術館「アカデミア美術館所蔵ヴェネツィア・ルネサンスの巨匠たち」展

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 国立新美術館で「アカデミア美術館所蔵ヴェネツィア・ルネサンスの巨匠たち」展を見てきた。ティツィアーノティントレットをはじめとする粒の揃った絵が来ているのだが、私の好みからするとちょっと穏やかな調和を感じさせる絵が多すぎるかも…あと、絵を保護するための空調でとても寒いので、上着を持っていった方が良い。

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2016-09-25

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2016-09-24

人には金がなくてもメシを食い、酒を飲む権利がある〜ブレヒト『マハゴニー市の興亡』

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 白井晃演出マハゴニー市の興亡』をKAATで見てきた。クルト・ヴァイルが音楽をつけたブレヒトの芝居で、山本耕史主演である

 奥行きのある暗くて広い平面にピンクの車とか机、イスなどを入れたセットで、上に横長のスクリーンがあり、ここに文字が出る。右端にナレーターが座っているのだが、このナレーターが途中から芝居に参加する。内容は三人の逃亡者が何もないところに歓楽地を作るところからまりこの街にやって来たアラスカ労働者ジムマホニーを主人公に、ジムが無銭飲食処刑されるまでを描く。かなり単純化された寓話的な展開の芝居である

 『三文オペラ』や『ガリレオの生涯』などに比べると難しい内容だが、私はたいへんに左翼的な芝居だと思った。この芝居におけるマハゴニー資本主義象徴であり、ここでは金が人の命よりもずっと重要だ。人を殺しても金さえ払えば刑罰を免れることができるが、無銭飲食をするのは資本主義の最も重要規律に従わなかったということになるので死刑にされる。これはずいぶん大げさなようだが、今でも持っている財産の額が量刑に影響すると言われていることもあるくらいなので、実は非常に現実的な話であるしかしながら私の解釈ではこの芝居はもっと過激で、単に資本主義が腐敗することを批判しているのではなく、資本主義そのもの、つまり取得すること、土地占有すること、所有することじたいを問うものだと思う。最初にベグビック(中尾ミエ)、ファッティ(古谷一行)、モーゼ(上条恒彦)が車でやってきて土地を「接収」することで悪徳が始まるというのは、舞台アメリカであることを考えるとちょっとネイティヴアメリカン土地勝手に奪う植民地化を思わせるところがあり、そもそも土地私有物と宣言することが全ての元凶として描かれている。そしてお客はヒーローというにはいかにも無様なジムマホニーが死刑にされていく様子を見て可哀想だと思うわけだが、ジム台詞運命からくみ取れるこの芝居のメッセージは、人間には一銭も金がなくても生まれながらにメシを食い酒を飲んで酔っ払う神聖権利があるということだと思う。

 この芝居は、金持ちをさらに豊かにしろとかいうようなムチャクチャなメッセージが書かれたプラカードを抱えたマハゴニー市民デモをする非常に政治的な場面で終わる。これは一見反語のようだが実際は我々はこのプラカードに書かれたとおりのことがまかり通っている社会に生きていると思う。まあ一般ウケはしないかもしれないし、ちょっと三文オペラ』なんかに比べるとそもそも戯曲自体が荒っぽくて完成度が低いとは思うのだが、こういう芝居こそ今の日本必要とされている芝居なんではないかと思った。冷戦はとっくの昔に終わったが、今またブレヒト必要とされている時代になった。

 演出はけっこう気の利いたもので、歌やダンスも笑える。とくに売春宿セックスを模した振付はかなり可笑しかった(ただ、あまり人が入って無くて笑い声がそんなに大きく起きなかったのが残念)。山本耕史ジムマホニーはやたら筋骨隆々いかにもアラスカ帰りのブルーカラーという感じだったし、ジェニー役のマルシアもなかなかよかったと思う。ただ、山本耕史はどっちかというと『三文オペラ』のマックみたいなもっとカリスマを使う役のほうが向いているのではと思うのだが…是非『三文オペラ』をやってほしい。

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2016-09-23

終盤グダグダだが、キュートな映画〜『高慢と偏見とゾンビ』

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 『高慢と偏見とゾンビ』を見た。

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 ジェーン・オースティンの『高慢と偏見』にゾンビものマッシュアップした映画である19世紀初頭のイギリスゾンビ禍が猖獗を極めており、レディの平均的な教養ゾンビと戦う武術が含まれていたという設定で、ベネット姉妹中国で学んだ武道ゾンビと戦う。ベネット家の次女であるエリザベス(リリー・ジェームズ)の勇敢で俊敏な戦いぶりに心を動かされたゾンビハンター、ダーシー(サム・ライリー)だったが、お互いのプライドや見栄が邪魔してなかなか恋が進まず…

 話の展開はかなりグダグダであるシャイちょっとトロいはずのジェーンまで優秀な武道家になっているのはちょっとキャラにあわないだろうとか、武道家のレディ・キャサリンに取り入りたいはずのコリンズ師がエリザベスに「結婚したら戦いはやめて頂けると…」とか言ってくるあたりがちょっと強引だとか、前半からいろいろ細かい綻びはあるのだが、とくに終盤にゾンビとの死闘が始まるとかなり展開がムチャクチャになってくる。レディ・キャサリンの家に突然ベネット姉妹避難することになったりとか、いろいろ力づくで危機解決されたりとか、もうちょっと脚本演出でなんとかなるだろうと思うようなダメなところが多い。

 とはいえ、アホっぽくて展開もグダグダであるにもかかわらず、ところどころなんとも言えないキュートな魅力があるので私はけっこう気に入った。史実でも精神疾患で苦しんでいたジョージ三世が残虐なゾンビとの戦いでショックを受けて心労で狂ったという設定になっているあたりはクスリとしてしまうし、リリー・ジェームズ演じるエリザベスが魅力的で、ベネット家の姉妹が陣を組んでゾンビと戦うところは見ていて楽しい(もうちょっと殺陣に凝ってもいいと思うが)。終盤の戦闘ではエリザベスがダーシーと対等に助け合いながら戦っており、エリザベスがカッコよくダーシーの命を救うところもあって、見せ場がきちんとある。脇役もけっこう達者で、とくにだいたい初老のご婦人にしたりすることが多いレディ・キャサリン役をなんと『ゲーム・オブ・スローンズ』のサーセイ王妃ことリナ・ヘディが演じており、アイパッチをつけて武装したセクシー武闘派中年美女で見た目がカッコいい(中身はレディ・キャサリンなんで、いつも大仰でプライド高い変人で見ていて笑えるが)。レディ・キャサリンエリザベスがダーシーのことで戦いながら不覚にも互いを尊敬しはじめてしまうあたりは相当にむちゃくちゃだがちょっと百合風味でなんか可愛らしいところがある(この場面をはじめ、いくつか女性同士が戦闘などについて話すところがあるのでベクデルテストクリアする)。コリンズ師をマット・スミスが楽しそうに演じているところもはまり役だ。

 と、いうことで、話の展開のグダグダっぷりに耐えられればけっこうオススメである

 追加:念のために書いておくが、ジェーン・オースティン18世紀末〜19世紀初頭に著作した作家で、時代区分でいうと「ジョージアン」(ジョージという名前の王がいた時代、1714年から1830年頃まで)あるいはその下位区分であるリージェンシー」(摂政時代18世紀から1830年代半ばくらいまで)の小説家である映画も当然、その時代を背景にしている。「ヴィクトリアン」はヴィクトリア女王の治世(1837年以降)を指すのでもっと後だし、「中世はいつ頃を終わりにするか議論があるがまあ1500年くらいまでであるオースティンを「ヴィクトリアン」とか「中世」の作家言ってはいけない

  

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2016-09-22

ゴールデン・イヤーズ、そして『イヴの総て』~『ヤング・アダルト・ニューヨーク』(ネタバレあり)

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 『フランシス・ハ』の監督ノア・バームバックの新作『ヤング・アダルト・ニューヨーク』を見てきた。

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 ニューヨークに住んでいる中年夫婦スランプに陥っているドキュメンタリー映画監督ジョシュ(ベン・スティラー)とプロデューサーのコーネリア(ナオミ・ワッツ)は、ひょんなことからジョシュファンだというドキュメンタリー監督志望の若いジェイミー(アダムドライヴァー)と妻であるアイス職人ダービー(アマンダ・サイフリッド)に出会う。クリエイティヴで魅力的なジェイミーとダービーにすっかり夢中になるジョシュとコーネリアだったが… 

 これ、ネタバレしてしまうと『イヴの総て』の男性である面白いことをするためなら他人を平気で踏み台にする、21世紀イヴハリントンをアダムドライヴァーが演じており、はっきり言って『フォース覚醒』のカイロ・レンよりずっとちゃんと悪役悪役している。別に親を殺したりするわけじゃないが、ナチュラルに人を騙したり利用したりして、しかも法は破らず切り抜けていく狡猾さがある。一方でナイーヴなところがあるジョシュ欠点容赦なく描かれており、最後は主役の夫婦が成長して終わるので少し『イヴの総て』より明るいユーモアがある。

 ノア・バームバックらしく音楽センスがとても良く、『フランシス・ハ』同様デヴィッド・ボウイの曲をとても上手に使っている。最初最後の場面では赤ん坊をバックに「ゴールデン・イヤーズ」が流れるのだが、これがとても気が利いている。また、『フランシス・ハ』を引き継いで女性の会話をかなり上手に撮っていると思う。この手の映画だとジョシュジェイミーばかりに焦点があたってへたすりゃベン・スティラー無双みたいなことになりかねないのだが、本作ではコーネリアやダービーがちゃんと奥行きのある人物として描かれていて(ベクデルテストパスする会話が何度もある)、とくにコーネリアはナオミ・ワッツ中年女性としては若々しすぎる美しさがとても良い方向に働き、知的大人の女性のはずなのになんかちょっとガキっぽいところが…みたいな欠点と魅力に満ちたキャラになっている。子持ちの中年夫婦をあまり理想化していないところも良く、不育症らしいコーネリアとジョシュに対して「子どもができれば大人になる」みたいなことを言っちゃうあたりはかなり無神経だなと思う一方、終盤でどうやら育児疲れでボロボロらしくてなかなか他人に気が回ってないみたいだということもわかって描き方に深みがある。

 

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