環境のことを考えながら「ラーメンスープ」をとる

sakunou2005-11-04


たった今、明日以降自給屋で提供するラーメンのスープをとり終えました。正確に言うと、スープをとり終えた上に、そこで使った道具を洗い終えたということです。もったいぶった言い方をしなくとも、単に洗い物をしただけのことかもしれませんが、自給屋ではそこもひとつのポイントなので、まあ聞いて下さい。

今日の昼は、わしズム読者の方の食事の予約があり、夕べから今日の午前中にかけて、その仕込みをし、料理を提供しました。そして、お客さんが帰ってから、ラーメンスープのの仕込みに入ったのですが、まず最初にその重要な材料のひとつである鶏を絞めることから始めます。一度に5羽捌くのですが、捌ききるまで結構な作業工程があるのです。

  • まず、鶏を絞めてつるしておいて、へっついに薪をくべて火をつけ釜にお湯を沸かします。
  • しめた鶏を熱湯につけて、羽をむしります。細かい羽まで丁寧にとるのにそれなりに時間がかかります。
  • 次に足先を切断し、手羽、もも、胸肉、笹身を包丁を使って取り外していきます。
  • その後、使える内臓(レバー・砂肝・ハツなど)を取り分けていきます。
  • その他の不要な内臓(本当は手をかければ食べられるのですが)を取り除くと、鶏ガラがとれます。これがスープの材料のひとつになります。

5羽の鶏を絞めてから捌き終わるまで、最低でも2時間かかります。その鶏ガラを中心に、肉屋で仕入れた豚骨、そして煮干しや昆布などを使ってスープを取り始めます。1時過ぎに鶏を捌きはじめ、スープを取り始めたのが3時半、そしてスープを取り終わったのが夜の9時です。

スープを取り終えた後、使った鍋や道具を洗うのですが、鍋(寸胴など)もひとつではありません。スープの取り方を色々研究し、10年以上かけて今の取り方に独自にたどりついた結果、それぞれの材料の一番いいだしをとるためには、複数の鍋でそれぞれの材料にあった火加減と時間で調理しています。こういうことから洗い物も増えていくのですが、スープに使った鍋や道具を洗う際に、一番問題になるのが油です。

ここで、動物の油(脂)というものについて考えてみます。一般に動植物由来の油は科学的には脂肪酸といわれますが、脂肪酸には飽和脂肪酸不飽和脂肪酸があります。動物の脂は主に飽和脂肪酸であり、その特徴は次のようなものです。

飽和脂肪酸
脂肪酸の一種で、凝固温度が高く、室温でも固形状で、動物性食品に含まれます。取りすぎるとコレステロール中性脂肪が増加し、動脈硬化の原因となります。
飽和指肪酸は、人間の体内では糖質と脂質から合成されますが、陸上動物の指肪に多く含まれます。魚の脂肪にも比較的多いのですが、EPADHAなどの不飽和脂肪酸はそれ以上含みます。飽和脂肪酸には、肉の脂肪に多いパルミチン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、牛乳や乳製品に多い酪酸、やし油に含まれるラウリン酸などがあります。

動脈硬化の原因になる

飽和脂肪酸は凝固温度が高いのが特徴です。牛や豚などの哺乳動物は体温が人間より高いので、動物の体内では脂肪は液状を保ちますが、人間の体内に入ると凝固しやすくなります。脂肪の多い肉を食べた場合、食後数時間たつと固まって血液の粘度を高くします。血液が流れにくくなることで、血液によって細胞に送られる酸素や栄養素の供給がとどこおり、疲労感が生じたり、からだの動きがスムーズにいかなくなったりします。ですから、スポーツや力仕事の前に肉を食べて飽和脂肪酸をとるのは得策ではありません。飽和脂肪酸を日常的に多く摂取していると、血液中にコレステロール中性脂肪がふえることになり、動脈硬化、さらにはより危険な脳や心臓の疾患を招きます。

飽和脂肪酸はとりすぎないこと

日本人の食生活が欧米並みになり、肉や加工食品を多く食べるようになったため、飽和脂肪酸の摂取もふえています。ほとんどの人がこれ以上飽和脂肪酸をとる必要はない、むしろ減らすことを考えたほうがよい状態にあります。特に外食の多い人や肉類の好きな人は要注意です。肉を魚に、また、飽和脂肪酸の多い脂は、オレイン酸やα−リノレン酸の多い油に置きかえるようにしたいものです。動物性の食品をほとんど食べないなどの理由で飽和脂肪酸の摂取が少ない場合がまれにありますが、こうしたケースでは、逆にコレステロールの不足による症状が出ることがあります。

体内での作用


健康生活科学研究所http://www.hlsri.org/index.htmlより

こういった油の特性は、料理屋をしていると実感としてよくわかるのですが、牛肉や豚肉の料理をした後の調理道具や器には、とてもしつこい油がこびりついており、一度洗剤で洗っただけでは落ちない場合がほとんどです。それに比べて鶏の脂は飽和温度が低く、比較的洗いやすく、さらに魚に至っては油のこびりつきがぐっと少なくなります。

自給屋の料理は、野菜や魚が中心なので、普段は洗い物の際に油のこびりつきが気にならないのですが、ラーメン関連の鍋や器の場合は、豚と鶏の脂が入っているので、洗い物の際油のこびりつきが気になります。また、使用する洗剤に関しても、一応環境に配慮したメーカーhttp://www.taiyo-yushi.co.jp/の製品を使っているのですが、この手の洗剤はどうしてもその洗浄能力が低く、汚れが落ちにくいという欠点があります。

性能のいい化学的な洗剤か、環境にいい天然系洗剤か、という選択肢に悩む中で、実はものすごい発見をしました。そのきっかけは「キレート作用」というものです。

・・・ここでネットから「キレート作用」の定義を拾おうとしたのですが、なんと見あたりません。しょうがないので私が過去に読んだ本(どんな本だか忘れたが)の記憶から解説します。私の記憶では、簡単に言うと「食物繊維などが、体内の飽和脂肪酸や有害物質を吸着して体外に排出する作用」ということだったと思います。

ここで先ほどの飽和脂肪酸の解説からイメージすれば、「人間の体温や室温で固まってしまう体内の飽和脂肪酸を、食物繊維が洗い落としてくる」ということですので、それと同じものを食器洗いに応用出来れば・・・という発想になるわけです。

<つづく>