「捏造を見抜く目」を持つのはなかなか難しいことだと思うが、ひとつの例を紹介します

マンションの構造設計を捏造した事件が巷で騒がれていますが、同じ捏造ということでは5年前に、考古学の発掘に関する事件がありました。この事件に関して最近、副島隆彦氏が言及していましたが、それについて少々論じてみたいと思います。

副島隆彦の学問道場http://www.snsi-j.jp/boyaki/diary.cgiから
副島隆彦です。 今日は、2005年11月17日です。
 私は、今から丁度5年前の、2000年11月29日に、この「今日のぼやき」の 91番 で「 旧石器捏造事件と、『日本文明派』の壊滅と、西尾幹二のおわり」という文章を書いている。この「旧石器捏造事件」は、犯行者の名前から「藤村新一事件」とも言うが、日本の考古学界という学者たちの世界が、どれぐらいいい加減な嘘八百の世界であるかを、
国内に広く知らせた。 

あれから丁度、5年が経った。その後、どうなっていたのか。関係者たちは、反省しているのか。 そして、「我が優秀な日本民族が築いた、世界最古の、70万年前にまで遡(さかのぼ)る、日本文明の・・・」と偉そうなことを書いていた人たちは、その後、どういう発言をしているのか。 それを、私は追跡したかった。この5年の歳月の間に、どういうことになったのか、を今回、私は、きわめて優れた、追跡調査の文章に出会った。
それを、以下に転載します。 これで、この5年間の日本考古学(アルケオロジー)の学界の醜い姿の全体像が、概観できた。 以下に、この「旧石器捏造事件」についての辻本武(つじもとたけし)氏http://www.asahi-net.or.jp/~fv2t-tjmt/daihachijuunidaiの追跡調査の文章を載せる。

この事件が発覚する前に、西尾幹二氏の「国民の歴史」が発刊されており、当時小林よしのり氏がこの本を賞賛して紹介しており、私も購入して読みました。西尾氏は、藤村新一が捏造した部分を疑うことなく、それを根拠にして「この日本列島に何十万年前から文明があった」と記述しており、私もその部分を疑うことなくすんなりと読んでいました。

しかし私はたまたま、ここ数年で、現世人類の歴史を独自に研究しました。それを持ってすれば、上記の叙述について「それはちょっとおかしいのではないか」と突っ込みを入れることができたはずです。ところが、たった5年前にはその知識がなかったので、安易に受け入れてしまったわけです。

副島氏が紹介する辻本氏の追跡では、次のように書かれています。

1、旧石器捏造事件 ―節穴の目か―
 今から5年前の2000年11月5日、毎日新聞のスクープ記事により旧石器捏造事件が発覚した。事件は藤村新一という民間研究者が自分で収集した数千年前の縄文時代石器を数万〜数十万年前の地層に埋めて、旧石器時代の遺跡を次々に「発見」したというものである。彼の犯罪的行為は25年間にわたり、180ヶ所以上で遺跡捏造したことが判明した。なかにはその「功績」によって国史跡に指定されたもの(註1)まである。

 彼は厳しく指弾され、家族からも見離され、今は名前を変えて生きているようである。今さら彼を云々する必要はない。それよりも問題なのは、彼の単純なトリックに引っ掛かった周囲の専門家たちである。彼らは大学、文化庁、博物館、教育委員会等々に勤める考古学プロフェショナルなのである。

2、発掘現場では‥ ―見えないものが見えた―
 2000年2月、埼玉県秩父市の小鹿坂遺跡で50万年前の旧石器とともに住居跡が「発見」された。当時は「北京原人よりさらに年代をさかのぼる世界最古の、しかも原人は洞窟で生活していたという定説を覆す人類史上の大発見だ」と大騒ぎだった。この「大発見」には藤村だけでなく、栗島という考古学のプロが関わっていた。

実は私は、「この事件が発覚してからまだ5年しかたっていなかったのか」と感じました。というのも、素人の私がここ数年で研究(本を読んだだけですが)しただけでも、今になればこの事実はおかしいと思えるようになっていたからです。辻本氏が指摘するように、プロの考古学者が当時指摘できなかったのは不思議なことだと思わざるを得ません。

その要点は次のようなことです。

  • 現世人類(ホモ・サピエンス)の登場は、古くても50万年前、新しいとして20万年前である。
  • それはアフリカで出現し、全世界に散っていくのはその後である。
  • それ以前にユーラシア大陸およびインドネシアに存在していた原人やネアンデルタール人の類は、我々の直接の先祖ではない。
  • 日本列島には、これまで、原人・ネアンデルタール人の化石(存在)は発見されていない。
  • よって、70万年も前に、日本人の祖先が日本列島にいるはずはない。

ヒト
出典: フリー百科事典『ウィキペディアWikipedia)』

ヒトとは、狭義にはホモ・サピエンス Homo sapiens を指す。広義にはヒト科ヒト属 (Homo) に属する動物の総称である。より具体的には、現生人とチンパンジーの共通祖先から分岐して以降の現生人に近いグループを指す。これは進化論提唱以降、人間とサルの生物分類学的区別の議論の中から生じた概念である。初期人類の化石の出土がアフリカに集中していることから、人類発祥の地はアフリカであることがほぼ定説となっている。

人類の出アフリカ記
アフリカで誕生したホモ・サピエンスが、十数万年前から世界中に拡散し生存域を拡大していった。この種が現生人類であり、我々の直接の祖先である。

人類拡散の歴史 ミトコンドリアDNAの分析による。単位は年(kは千単位)

このように、素人でも少し調べれば分かることが、たった5年前に専門家が分からなかったということが理解出来ないのです。

以下は私が参考にした文献

はだかの起原―不適者は生きのびる

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イヴの七人の娘たち

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銃・病原菌・鉄〈上巻〉―1万3000年にわたる人類史の謎

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