まて慌てるな これは孔明の罠だ 泉昌之『食の軍師』
- 作者: 泉昌之
- 出版社/メーカー: 日本文芸社
- 発売日: 2011/01/08
- メディア: コミック
- 購入: 8人 クリック: 93回
- この商品を含むブログ (43件) を見る
本作『食の軍師』もまた、「ひとりめし」ものですが、「読むとおなかがすいてくる」前述の2作品とはやや毛色が異なります。
主人公・本郷は、いつもトレンチコートに身を包み、さまざまな食べ物を「通っぽく」食べようと腐心するなんともトホホな男。
「寿司は光物から入るのはキザ、かといってイカなど付け焼刃に思われる」とか、「トンカツはまず右から二つ目を塩とレモンで食す」とか、笑ってしまうぐらいのこだわりをみせます。
そして、彼の行く先々で表れる「力石」という男の「通な」食べ方(といっても本人は自覚してませんが)に刺激され、いつも暴走し失敗してしまう・・・というマンガです。
『孤独のグルメ』や『花のズボラ飯』と同じく、こだわりの「独り言」を楽しむ漫画なのですが、なにせ表現がオーバーで、しかも「一人相撲」の度が激しいです。
食に限らず、誰しも「こだわり」は持っていると思いますが、『食の軍師』ではその「こだわり」を過剰に、そしてペーソスあふれる「笑い」に転化しています。
なんとなくですが、「過剰な薀蓄によるトホホ」という意味で、中島徹『玄人のひとりごと』を思い起こさせます。
主人公・本郷は自身の食べ方を「戦国の戦い方」に見立て、自らを「軍師」諸葛孔明に模します。
「蜀の軍師」=「食の軍師」・・・って、うまいこと言ったつもりかぁーっ!
これがまた、横山三国志のコラを思い出させ、二重三重に笑ってしまいます。
「ひとり飯」と「過剰な薀蓄」、「通っぽく見られたがる男のトホホさ」、そして「三国志」。
これらがまるで一つの料理のようにうまく絡み合い、なんともいえない面白さを醸しだしています。
思わず真似したくなり、頭の中で「ジャーンジャーンジャーン」と効果音を入れたくなる、そんな奇妙な味わいを持った一冊でした。
- 作者: 久住昌之,谷口ジロー
- 出版社/メーカー: 扶桑社
- 発売日: 2008/04/22
- メディア: コミック
- 購入: 59人 クリック: 1,251回
- この商品を含むブログ (445件) を見る
- 作者: 久住昌之,水沢悦子
- 出版社/メーカー: 秋田書店
- 発売日: 2010/12/20
- メディア: コミック
- 購入: 39人 クリック: 3,013回
- この商品を含むブログ (263件) を見る
- 作者: 中島徹
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 1991/11/01
- メディア: コミック
- 購入: 1人 クリック: 12回
- この商品を含むブログ (16件) を見る