五十嵐藍『ローファイ・アフタースクール』マッグガーデン

ローファイ・アフタースクール―五十嵐藍短編集 (BLADE COMICS)

ローファイ・アフタースクール―五十嵐藍短編集 (BLADE COMICS)

鬼灯さん家のアネキ』作者の五十嵐藍の短編集です。
鬼灯さん家のアネキ』は小悪魔的アネキ・ハルが弟の吾朗クンをきわどくからかう4コママンガですが、序盤の家庭内逆セクハラのコメディ要素から一転、「なぜアネキが逆セクハラをするのか」という過去話を挟んだとたんにビターな青春ものに様変わりしたのが印象的でした。
 本作、『ローファイ・アフタースクール』は青春の無気力でアンニュイな部分が詰め込まれた一冊で、まさに「作者のエッセンス」が詰め込まれた短編集です。
 「手をつなぐ」ために悪戦苦闘する女の子を描く<ガールフレンド イン ザスカイ>、いやなもの、いやなこと。深刻ではない心の闇が具現化した<暗黒さん>、さびれた灯台から世界の終末を眺めようとする<神様ごっこ>、電車を巡る3編のお話<ダウンタウントレイン>、アブダクションされたバイト仲間を巡るギャグ小話<はるまげ>、髪フェチな男子が居眠り中の黒ロン女子の髪を愛でる<ekstasis>、秘密のアジトで少女と作るお話<アオ>、そして放課後の男女のダベりを描く<アフタースクールショウ>。
 作者自ら「90年代をイメージした」とありますが、どこか閉塞感に満ちた雰囲気は懐かしさすら感じさせられますし、冬目景の初期作品などの「青春の諦観」をけだるい筆感で巧く描いています。
 どこか懐かしい雰囲気のするビターな青春短編集。層は限られますが、この記事でぴんときた方にはおすすめします。
IGATZ 五十嵐藍web「ローファイ・アフタースクールのこと」