『17年と13年だけ大発生? 素数ゼミの秘密に迫る!』

吉村仁 著
ソフトバンククリエイティブ・サイエンス・アイ新書
ISBN978-4-7973-4258-1
素数ゼミ(周期ゼミ)の形質進化について書かれた本。
基本的に、かなり初歩から説明されているし、理論的にすっきりと書かれていて、内容もそれなりにあるので、自然科学書として悪くない本だと思う。
興味があるのなら、読んでみても良い本。
記述が分かり難いというか、眠たくなるような箇所は、何ヶ所かある。写真がいっぱいあるのは、蝉の場合、マイナスのような気がしないでもないが、昆虫の写真を気味悪がるような人は、そもそも最初から手を出さないかもしれない。
自然科学書としては、割と良い本だと思う。
興味があるならば、購読しても良い本だろう。
以下メモ。
・日本は、氷河期に氷床に覆われなかったので、昆虫の種類が多い。蝉やコオロギが特色のある鳴き方をするのは、種類が多いので、近縁種と区別する必要があるためである。
・氷河期に氷床に覆われたヨーロッパや北米では、昆虫の種類は少ない。
・北米では、氷河期の間、レフュージアと呼ばれる氷のない小さな地域で、生き物たちが生息していたと考えられる。
・レフュージアでは、小さな場所に少数の個体が生息するために、時期や場所が少しでも外れた個体は、交配相手を見つけにくい。素数ゼミが周期性を持って集団発生するように進化したのは、そのためだろう。
・周期の異なる蝉が同じ年に発生した場合、交配によって雑種が生まれて、周期がずれてしまう。氷河期の過酷な環境の下では、雑種の発生による個体数の減少は絶滅に直結する可能性が高い。素数ゼミの発生周期が素数であるのは、素数であることによって他の周期との最小公倍数が大きく、他の周期を持つ蝉との同時発生が少なかったからだと考えられよう。