「Half moon」(30)

社会人の二人の物語。オリキャラ祭り。オリキャラ紹介⇒(1)をご覧ください。
遠恋になって待ちに待った2回目の再会を果たす二人・・・。
こちらはHalf moon         10 11 12 13 14 15 16 17  18  19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 の続きです。
それではどうぞ↓

















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「今度の七夕祭り、彼女来るんだろ?」

「あ・・・うん」


風早と蓮は休憩中、職場のカフェスペースでコーヒーを飲んでいた。時々、ここで一緒に

なることがあった。


「一応皆に言われているから誘うけど、一緒に行く?」


蓮はいかにも無理しないでいいという感じで言った。仙台七夕祭りは3日間ある。そのうち、

一日を一緒に行かないかということだった。蓮達は毎年七夕祭りを一緒に出掛けていた。

今年は光平も帰ってるし、皆、風早と一緒に行きたがっていた。


「うん、そうだね。彼女に聞いてみるね」

「おっ?珍しい」


そう言って蓮が笑うと風早は不思議そうな顔でなに?と聞き返した。


「いや、彼女を見せるのが嫌かと思ってさ」


蓮がからかうように言うと、風早は少し照れたような顔をして言った。


「まぁ・・・・そうなんだけど、こんなじゃだめかなと思って」


じっとこっちを見ている蓮をちらっと見て、言葉を続けた。


「彼女をがんじがらめにしたくないんだ。自分のちっぽけな欲でさ。それにこんな

 俺じゃ、いつか彼女に飽きられるんじゃないかって・・・不安なんだ」


蓮は彼女に会った時のことを思い浮かべた。


(どう考えても風早のことすげー好きそうだったけど??)


「離れてるからこそ、余計に気をつけてるつもり」


そう言って、風早は恥ずかしそうに笑った。そんな風早の姿に蓮は微笑ましく笑った。


「なんだよ〜っ笑うなよっ////」

「いやっ、ごめん。まぁ、頑張れって言ったらいいのかなって」

「バカにしてるだろ〜〜〜蓮!!」

「してないよ。ただ、社内でもモテモテの風早くんがそんな悩みを持ってるなんて

 皆知らねーだろなって。」

「やっぱ、ばかにしてるじゃん〜」


わははは〜〜〜!


「そういえば、この間、秋山さんに居酒屋で会ったよ。職場の飲み会だったみたい」

「沙穂?そ〜なんだ。」

「久々に会った。元気そうだった。最近忙しそうだったもんな」

「ふぅ〜ん」

「?」


黙り込んだ蓮に少し違和感を感じながらも、風早は紙コップのコーヒーをぐいっと

飲みほした。



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光平が仙台に来て、しばらくした頃、二人が待ちに待った、再会の日がやってきた。

爽子は今回、夏休み休暇を兼ねて、10日間の滞在することになっている。北海道に

いる頃でもこんなに一緒に過ごしたことはなかった。風早は改めて認めてもらった爽子

の両親に感謝した。滞在の間に、仙台七夕祭りがあった。初めての七夕祭りに、二人は

胸を躍らせていた。




そして、当日――――

風早は、前回のように空港でそわそわしながら爽子がゲートから出てくるのを待っていた。


「あ・・・・!」


爽子の姿を見つけると、風早は心臓が大きくとび跳ねた。それと同時に”え・・・・?”

と声を上げた。

風早の目に飛び込んできたのは、爽子の隣で親しそうに話す男。


「あっ!」


爽子が風早に気付いて、嬉しそうに頬を染めた。そしてぱたぱたっ風早の方に走ってきた。


「風早くん!!」

「爽子・・・。こちらは?」


なぜか、風早のところまで爽子とその男はやってきた。サラリーマン風の男は30代ぐらい

で余裕の笑みを浮かべていた。


(なんだコイツ?)


「どうも、君が彼女の彼氏さん?」

「はぁ・・・?」

「あのね、風早くん!飛行機でお隣になって、仙台の七夕祭りのことを色々教えてもらって。

 あっ荷物ありがとうございました!」

「いえいえ、楽しかったですよ。よかったらまた連絡ください。さっき渡した名刺に

 プライベートなのも書いておいたから」

「えっと、あの・・・」


男は、戸惑っている爽子にウィンクして、手を振った。爽子は頭を丁寧に下げ、男を見送った後、

すぐに風早の方を見て、必死で頭を下げた。


「ご、ごめんね。風早くん。出口は同じだったから断れなくて・・・・」

「・・・・・・」


風早はくるっと爽子に背を向けて、手で顔を覆った。そんな風早に爽子はショックが隠し

きれなかった。


「か、風早くん・・・・」

「ごめん・・・見ないどいて。俺、今すごい顔してるから」


そう言って、なかなかこちらを向いてくれない風早に、爽子は悲しくなって、言葉を失った。

すごく楽しみにしていた再会がこんな形になったことを。そしてそれは自分の所為だと・・・。


ハッとして振り向いた風早は爽子の姿を見て、茫然となった。爽子は風早を真っ直ぐ見て、

必死で涙を堪えていた。


「違うっ。違うんだ!爽子は悪くないんだ。俺の修行が全然足りないだけで・・・」

「しゅ・・修行?」

「爽子に悪い虫がつくのは仕方ないのに・・・・」

「?」


爽子は涙を流しながらきょとんとなった。目の前で悶々としながらぶつぶつ言っている

風早を不思議そうに見ている。

風早はすくっと立ち上がり、爽子の方に身体を向け、じっと見つめて言った。


「だって・・・こんなにかわいいんだもん」

「え・・・・//////」


触れたくて触れたくて・・・ずっと夢に見た爽子が前にいる。会う度にきれいになっていく。

風早はそっと爽子抱き寄せた。


「かぜ・・・っ///」

「ごめん・・・また泣かせちゃったな」


いきなりの風早の香に爽子は激しい胸の動悸を感じた。それと共にずっと満たされなかった

心がすーっと満たされていくのを感じた。


「怒ってない・・・?」

「怒ってる。」

「えっ!」


風早の言葉に青くなった爽子は、怖々風早を見上げた。すると風早は哀しい顔で小さなため息を

漏らして言った。


「自分自身にね・・・・。」

「風早・・くん?」

「爽子が俺だけを見てくれてるって分かってるのに、どうしてこんなに余裕ないんだろって」


時々情けなくなる・・・っと風早は苦笑いをして言った。すると、爽子はそっと、風早の背中に

手を回して、ぎゅっと抱きしめた。そして、コテンと頭を風早の胸に預けた。


「ちょっ・・・爽/////」

「・・好き・・・風早くん大好き」

「////////」


風早は爽子の行動や言葉に思いっきり頬を染めた。


(やっべ〜〜かわいすぎるっ)


「爽子・・・。」


そして、吸い込まれるように爽子の顎に手を掛け、顔を近づけていく。


「うわぁ〜〜〜チュ―するぞ!!」

「すっげ〜〜〜!!」

「!!!」


二人は、背後の声にはっとした。二人の世界だったことに気付き、周囲を見回すと、それとなく

見ている人々と、何人かの小学生が興味津津に眺めていた。


「あっ///////」


爽子は恥ずかしくなって、手で顔を覆った。風早も、耳まで真っ赤にしながら、爽子の手をぐい

っと引っ張って、その場を逃げるように去って行った。

風早は、しばらく歩いた後、そっと後ろの爽子を恥ずかしそうに振り返った。


「俺も・・・大好きだから。」

「///////」


二人はふっとお互い笑いあった。二人の甘い夏休みは始まったばかり・・・・。








あとがき↓

仙台七夕祭りは今日までですね。On Time にお話を書こうと思ったのですが、ちょっと
無理でしたね。このお話も長くなってきました。まだまだ続くので、ほんと読むほうが飽きて
きますよね・・・。まぁぼちぼちお付き合いください。いつもありがとうございます。

Half moon 31