「Once in a blue moon」(52)


※ こちらは「Half moon」という話のオリキャラ(蓮)が中心となった話で未来話です。
  爽風も出ますが、主人公ではないので受け入れられる方以外はゴーバックで。

★「Half moon」は 目次 から。
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47 48 49 50 51 の続きです。
 


☆ 麻美の様子がおかしいと思った爽子はそのことが気になって・・・。風早家の回です。



















・‥…━━━☆ Once in a blue moon 52 ‥…━━━☆




















* *


ー風早家


「ふぅ・・・」


爽子は台所で遅く帰ってきた翔太の夕食の準備をしながら大きなため息をついた。




”『・・・あぁ”っ・・ごめん、違う、私変なのっ・・・』”




あの時の麻美の顔が脳裏に焼き付いて離れない。


(どうしたんだろう・・・麻美ちゃん。やっぱり以前の麻美ちゃんじゃない?)


「どうしたの爽子?珍しいね。ため息なんて」

「あ、ビールでいい?」

「うん。ありがとう」


入浴を済ませた翔太はため息をついている爽子を見て心配そうに言った。


「ゆづは寝た?」

「うん」


翔太は冷蔵庫に手をかけた爽子の後ろに立つと優しく抱きしめた。


「しょっ・・?」

「ちゃんと話して」

「え?」


翔太は爽子の肩に顔を置き、甘えるように肌を擦りつけると有無言わさないかのよう

に爽子の華奢な身体を抱きしめる。


「しょ、翔太くん・・・ビール・・」

「だめ、ちゃんと話すまで離さないよ」


こういう時は引かない翔太を知ってるので、爽子は観念したようにこくんと頷くと、

翔太の手の甲に自分の手を重ねた。いつも自分のことのように爽子の悩みを受け止め

ようとしてくれる翔太が嬉しかった。


「あのね・・・」


* * *


「そっか・・・やっぱ蓮と瀬戸さんしっくりいってないのかな」


翔太は仕事が遅くなっても家で夕食を食べる。付き合いもあるのだがら、食べてきた

ら?と爽子はいつも言うのだが必ずお腹を空かせて帰って来るのだ。

翔太はばくばくっと幸せそうにおかずをつまみながら言った。


「やっぱりって翔太くん何か知ってるの?」


爽子は翔太にビールを注ぎながら言った。


「知ってるわけじゃないけどこの間蓮と飲んだ時、瀬戸さんの様子がおかしいって言

 ってたから」

「そっかぁ・・・蓮さんも気づいてるんだね」

「蓮は鋭いからな。あ、爽子もどーぞ。正月休みぐらい酔ってもいーじゃん」

「私がまだ休みなだけで、翔太くんはお仕事始まってるのに!」

「爽子は休みなんだからいーの」

「で、でもっ変になったら申し訳ないからっ・・」

「そんな爽子が見たい♪」

「/////」


翔太に王子様スマイルで微笑まれて、爽子は真っ赤になった。


「でもさ、俺たちは何もできない。蓮と瀬戸さんが何とかするしかないもんな。実際

 蓮の気持ちは未だに見えないし」

「麻美ちゃんへの?」


翔太がこくんと頷くと、爽子はぎゅっと拳を握りしめて思いを込めるように言った。


「だ・・・大事だと思う。蓮さん、とっても麻美ちゃんのこと大事だと思うのっ」

「爽子・・・。うん、そーだな」


翔太は愛しそうに爽子を見ると、ぽんぽんっと頭を撫でた。そんな翔太に温かい気持

ちになりながらも、爽子は昼間の麻美の様子を思い出し心が痛んだ。泣いているのに

どうにもできない自分。


まさか爽子の存在自身が麻美を苦しめているとは知らずに・・・。


「それからね、ゆづちゃんのことなんだけど・・・私最近思うの」

「何?」


翔太はグラスを置いて、真剣な顔で爽子を見つめた。いつもお互い大事な話をする時

はしっかりと向き合う。


「今までゆづちゃんが喋らないのは特に喋りたくないからだと思っていたの。自分の

 中で世界が満たされているっていうか。だからいつか世界が広がった時に喋リ出す

 って思ってた・・・でも本当は違うのかなって・・・」

「って言うと?」


爽子は不安そうに視線を泳がせた。翔太はそんな爽子の手をぎゅっと握る。


「もしかして、気持ちを言葉にすることを恐れているんじゃないかって・・・」

「どうしてそう思ったの?」

「最近気づいたのだけれど、ゆづちゃん、突然どこかに行くことがあるの」

「どこかに行くって?」


”うん・・”と頷いて爽子が思い浮かべるように麻美が来た時の事を話した。


「へぇ、瀬戸さんでも途中で2階に行っちゃったの?」

「うん。最近時々あるの。私が・・働き始めてからなのかなって・・」


爽子が働き出して2ヶ月ちょっとの間、結月は両方の親元で過ごすことが多かった。

親元なら慣れているし問題ないと翔太も爽子も思っていた。しかし、今まで四六時中

一緒に居た爽子と離れる時間が増えたことは結月にとってどのような影響があるのか?

正直爽子は不安を感じずにはいられなかった。


今にも泣きそうな爽子を翔太はぎゅっと抱きしめた。そして爽子の頬に手を当てて

優しく語りかけた。


「俺は恐れてるとかじゃないと思う。だって爽子と俺の子だよ?強い子だと思う。

 だけどものすごく繊細なのかなって・・・変化があるのは成長の証拠でしょ?逆に

 爽子が少し距離を置いたことで世界が広がったのかもよ。それに爽子が働くことは

 二人で決めたことでしょ?」


”ん?”とにっこり笑って翔太に涙を拭われると、爽子は気持ちが楽になっていくのを

を感じた。いつも温かく自分を受け止めてくれる翔太に感謝の気持ちが胸いっぱいに

広がる。爽子は自然に笑顔になっていた。


「・・・本当はゆづちゃんは強い子だって思っているの。でも時々不安になって・・・」


こんな爽子を知ったのは結月が生まれてから。誰よりも清らかで強い爽子だが、心の

中ではたくさん悩んだり葛藤したりしている。夫婦になってから心の中を少しずつ見

せてくれるようになった。翔太はそれが嬉しくてたまらないのだ。自分しか知らない

爽子を知れる今が。


「翔太くん・・・ありがとう」

「爽子もいつもありがとう」


二人は嬉しそうにお互いのおでこをくっつけるとぎゅっと抱きしめ合った。


「//////っ・・やべ」

「ど、どうしたの??」


爽子を抱きしめていた翔太は限界とばかりにバッと爽子から離れた。


「これ以上くっついてると押し倒したくなる・・・俺のかけらほどの理性がっ///」

「/////」


そう言って翔太は爽子の唇にキスを一つ落とすと、ニッと笑って”あとでゆっくりね”

と食事の続きを始めた。そんな翔太に結婚してからもドキドキさせられっぱなしだ。

爽子は幸せそうに微笑んだ。


* *


がちゃっ


「うわ・・・寒いっ」


爽子は門のカギを確認しようと外に出た。夜空を見上げると満天の星とくっきりと

きれいな Half moon


”『・・・半分だけ。爽子がいないとずっとハーフムーンなんだ。一緒にいられて

  やっとフルムーンになれるんだよ』”


遠距離だった時に翔太が言った言葉だ。その言葉を胸に遠恋を頑張ってこれた。

今でも思い出すと少しせつない気持ちになる。


「・・麻美ちゃんにとって蓮さんもきっとハーフムーンだよ。どうか二人とも幸せ

 でありますように」


爽子は懇願するように月にそう願った。






「Once in a bleu moon」53 へ

















あとがき↓

爽子と翔太シーンをいっぱい入れるから話が進まないんだろうな。でも二人を書かな
いとやっぱ萌えないのです。そして登場人物が多い分、それぞれの心情を書きたいわ
とか思ってるからいくらでも長くなるのです・・・誰か解決策教えて〜〜!でも二次
だから何でもアリでいいことにして下さい。100話にはならないと思います、ハイ