被災地に軍用機を飛ばす行為と患者輸送のために軍用機を飛ばす行為にどれほどの違いがあるのか

一つは「米軍オスプレイ、初の災害対応 実績づくりに疑問の声も(二階堂勇、2016年4月18日20時58分)」の件。
オスプレイでなければ出来ない対応だったわけでもなく、実績作りとしか言いようがありません。
もちろん、実績作りだから駄目だというわけでもありませんが、他に実績のある有用なリソースがあるのにオスプレイを投入したのですからその政治的意図は指摘されて当然でしょうし、災害の政治利用という点で批判されてもやむをえないところでしょうね。
オスプレイを使ってはいけない理由がわからない、と言った意見も見かけましたが、ここで問題なのは他にも使えるリソースがあったんじゃないの、という話で何が何でもオスプレイを使うな、と言う話ではないでしょう。


さて、もう一つは「中国軍機が南沙諸島に着陸、米国防総省は抗議(CNN.co.jp 4月19日(火)9時57分配信 )」の件。
CNNでは「中国側は、具合が悪くなった作業員3人を救出するための人道作戦だったと説明」とだけ報じていますが、作業員3人のうち1人は消化管出血による出血性ショックと重度の貧血ですから「具合が悪くなった」と言った表現が適切かどうか疑問です。ちなみに他の2人は腰椎骨折と盲腸炎の疑い。

重病工人李萬美突發消化道出血,病情特別嚴重,已出現出血性休克和重度貧血。另兩名工人分別為腰椎骨折、疑為輸尿管結石或闌尾炎。

http://www.singpao.com/index.php/sp-news-i/dis-sp-news-i/item/71019-60007%5E201604198t34

「デービス報道官の声明では「中国が民用機ではなく軍用機を使った理由が分からない」と指摘」とのことですが、出血性ショックと重度の貧血を伴う消化管出血であれば緊急措置が必要なのは理解できますし、災害対応でのオスプレイ使用に対すると同様に、南シナ海をパトロールしていた軍用機を“使ってはいけない理由がわからない”とも言えますね。
民用機を使うという他の選択肢もあったかもしれませんし、軍用機を使ったと言う“政治的意図は指摘されて当然”でしょうし、実際指摘されてもいますよね。かといって、アメリカ国防総省の抗議は、“軍用機を使うくらいなら出血性ショックと重度の貧血を伴う消化管出血の患者を見殺しにしろ”と言ってるわけではもちろんないでしょう。

V-22の災害対応にせよ、運-8の急患輸送にせよ、いずれの場合もその政治的意図は批判されるべきであり、同時に批判が人道的対応の否定に直結しないこと、そして軍用機使用そのもには人道的側面も有されていることを踏まえるべきでしょうね。

CNN記事で報じられていない内容について

上述したとおり、輸送された3人の急患の症状はそれぞれ、出血性ショックと重度の貧血を伴う消化管出血、腰椎骨折、尿管結石あるいは盲腸炎の疑いですが、CNN記事では「具合が悪くなった」としか報じられていません。
用いられた軍用機ですが、運-8という輸送機で、これに偵察設備を搭載し南シナ海の哨戒活動を行っていたと報じられています。1974年初飛行の機体ですからYS-11より10年位新しい程度ですね。

官方照片顯示,這次執行任務的軍機是「運-8」巡邏機,該機型本身是運輸機,亦可搭載偵察設備變成巡邏機,留空時間一般在6至10個小時之內。

http://www.singpao.com/index.php/sp-news-i/dis-sp-news-i/item/71019-60007%5E201604198t34

機種についても、特にCNNでは報じられていません。

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