旅するアメリカ

 土曜日は午後から夕方までテニスをしたが、朝からするよりも集中できていいみたいだ。それと来週加盟団体戦に出場するメンバーでの練習は気合?が入る。幸い職場の同好会のチームと対戦しないですみそう。
 テニスから戻ると献本が来ていた。亀井俊介編著『アメリカの旅の文学ーーワンダーの世界を歩く』(昭和堂)でKさんというヘンリー・ミラーを専門とする若い知り合いの研究者が送ってくれた。
 アメリカを旅する文学は、20世紀後半だとケルアックの『路上』、前半だとスタインベックの『怒りの葡萄』や『二十日鼠と人間』がすぐ思い浮かぶ。ここではそれにマーク・トウェイン、D・ソロー、W・アーヴィングなども論じられている。
 僕としてはそこで論じられているロード・ノヴェルに、『イージー・ライダー』、『パリ・テキサス』などのロード・ムーヴィーを付け加えたい。アメリカは様々な人種や文化を持つ人間の存在する世界であると同時に、驚異の、自然に満ち溢れた様々な特色をもつ地方があり、アメリカ人自身もそれを探究したいという願望が常にあるようで、それがロード・ノヴェルやロード・ムーヴィーを生み出す。
さてKさんの担当した『怒りの葡萄』では映画化を見てウディ・ガスリーが書いた「トム・ジョードのバラッド」(トムはヘンリー・フォンダが演じた主人公)が、45年後にスプリング・スティーンの『ゴースト・オブ・トム・ジョード』に引き継がれる。ここまでは知っていたが、レイジ・アゲンスト・ザ・マシーンというラップ・グループが「ゴースト・オブ・トム・ジョード」をカバーしていた事は初耳だった。
 振り返ってみれば9年前にヒップホップ論に取り組んでいた時に『英語青年』に書いていたKさんのコラムがとても参考になり、それがKさんと知りあったきっかけだった。それが今回夏の国際セミナーでヒップホップの社会的正義についてコメントする原稿を書こうとしている時にまた有益な情報をもらったのも何か偶然だけでないものを感じた。