また学歴コンプレックスを利用した商売を・・・、なんて思ってしまうものではあるけれど、
東大教師が新入生にすすめる本 (文春新書)
編: 文藝春秋
出版社: 文藝春秋
東大教師が新入生にすすめる本〈2〉 (文春新書)
編: 文藝春秋
出版社: 文藝春秋
にざっと目を通してみたら、結構面白い。東大のとある学内報で、新入生向けに毎年4月号に載せているおすすめ書籍企画記事をまとめたもの。この手の○○の十冊、△△の百冊というと、割とジャンルが限られて、歴史的名著中心になってしまうものだけれど、この二冊は、簡単なルールに沿って、何人もの先生が手前勝手に書名を挙げていくかたち。
- 理系の書籍はかなり定番なものばかりだけれど、文系は各ジャンルなかなか目にしない良書あり*1
- いろんな分野の先生が選ぶから、それぞれが挙げる書籍の傾向も随分と変わる
- &冊数の制限がゆるいのも選択肢を自由にしている*2
こんな感じ。
あまりきっちりしてないし、最近の潮流にも色目をつかっているので、いろいろ読むジャンルを広げたい方向けの、最初の一歩二歩にはもってこいと言える。それぞれ短評やら感想やらが書いてあって、「こういう先生でも、こんなメジャーな作品を、“恥ずかしながら”最近読んだんだ」とか、そんなこととかあんなことが、その短評やら感想から伺えることも楽しみの一つに挙げられる。
Amazonレビューを見ると、「自分の先生やお仲間選びすぎ」なんて意見もあって、それはそれでわからいでもないけれど、東大だけでなくって、京大とか、それとか諸外国の名大学の類似の企画もあれば、そんな感じも薄まるとか、逆に党派性が浮き彫りになるならなったで面白くなるのに、なんて思う。
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備忘録も兼ねて、自分が興味をもったものをほんの幾つか挙げてみると、
徒然草抜書 (講談社学術文庫)
著者: 小松英雄
出版社: 講談社
*3
神道の逆襲 (講談社現代新書)
著者: 菅野 覚明
出版社: 講談社
中世を読み解く―古文書入門
著者: 石井 進
出版社: 東京大学出版会
日本人の中東発見―逆遠近法のなかの比較文化史 (中東イスラム世界)
著者: 杉田 英明
出版社: 東京大学出版会
技術屋(エンジニア)の心眼 (平凡社ライブラリー)
著者: E.S. ファーガソン Eugene S. Ferguson
出版社: 平凡社
意思決定と合理性
著者: ハーバート・A. サイモン
出版社: 文眞堂
こんなところ。取り上げた傾向が偏っているけれど、いわゆる古典名品・名研究書以外で、これくらいのレベルと言うか、ランクというか、そんな書名に行き当たるおすすめがまとまったものって、なかなかないよねってこと。これが法律、歴史、経済学、政治学、社会学、精神医学やら心理学等々にそれぞれあるって感じ。*4
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引用しようと思って探したけれど見つけられなかったので、しょうがないから記憶だよりに書いてしまうと、理系の先生が、
小説などを読む時の楽しさ、感覚の違いは、どこがポイントかではなく、万遍なく注意を払わないといけないことだ
なんてことを書いていて、これはなかなかうまい言い方だなと、そう感心した。
*1:あとがきだか、まえがきだか、忘れたけれど、これは力を入れている入れてないでなくって、その学問にとって、書籍と云う形態に意味があるかないかの度合いの差みたいですね。理系の方がスタンダードがより長く定着する傾向がある。
*2:東大教師が新入生にすすめる本 (文春新書)が1994年から2003年で、東大教師が新入生にすすめる本〈2〉 (文春新書)が2004年から2008年。1年あたり大体30人前後の先生が、一人あたり5〜10冊挙げていると言えば、かなりの書名に出会うことは想像に難くないと思う。
*3:2016年某日注:これと『神道の逆襲』はその後に読みました。特に『徒然草抜書』は素晴らしかった。古文だけにとどまらずに参考になる、資料調べから意見形成までの方法論です。お時間あれば、こちらの記事をどうぞ。http://d.hatena.ne.jp/sergejO/20091209/1260342049
*4:経済学にが挙がっているのも面白い。中古で一円だけれど、だからって価値がないと思わずぜひお手にどうぞ。都留氏の弟子筋の伊東先生のこれ↓と合わせて読んでおくと、経済情報を見る眼がかなり変わると思います。 君たちの生きる社会 (ちくま文庫)
著者: 伊東光晴
出版社: 筑摩書房