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2008-09-23

太陽系の本当の大きさ/『人類が知っていることすべての短い歴史』ビル・ブライソン

 3150円という値段は安い。639ページもある類い稀なポピュラーサイエンスだ。持ち歩くには不便極まりないので、トイレに置いておくのが正しい。便座の上で科学史を学べば、いっぱしの理系になれるというもの。私なんぞは、その日に読んだ内容を次々と色々な人々にしゃべりまくった。「昔から知ってました」という顔つきで。相手の瞳は敬意で染められ、「小野博士……」と呼びたくなる気持ちを抑えているようでもあった。


 すぐ気づくのは、今までに見た太陽系の地図がどれも恐ろしく縮尺を無視して描かれていることだ。学校にある地図ではおおむね、惑星と惑星が近所付き合いのできそうな間隔で並んでいるように見える――外側にある巨星が互いに影を落とし合っているようなイラスト画を見かけることさえ少なくない――が、これは同一紙面にすべてを収めるためにどうしても必要な、騙し絵なのだ。海王星は実際には木星のちょっと先にあるわけではなく、木星のはるか彼方――地球から木星までの距離の約5倍、木星から離れたところ――にあって、あまりの遠さに、木星が得る太陽光の3パーセント分しか海王星には日が当たらないほどだ。

 こんなに拡散していては、現実問題として太陽系を一定の縮尺率で描くのは無理だ。たとえ教科書の端に幾重にも折りたたんだ紙を貼り付けても、長い長いポスター用紙を使っても、正確な縮尺率とはかけ離れたものにしかならない。地球の直系が豌豆豆(えんどうまめ)くらいになる縮尺で太陽系を作図すると、木星は300メートル先、冥王星は2.4キロ先になる(しかも大きさはバクテリア程度だから、どのみち見ることができない)。同じ縮尺率を用いた場合、太陽系にいちばん近い恒星プロキシマ・ケンタウリに至っては、ほぼ1万6000キロの彼方だ。全体の縮尺率を上げて、木星が文末のピリオド、冥王星がせいぜい分子のサイズになるように縮めたとしても、冥王星はまだ10メートル以上向こうになる。

 というわけで、太陽系はまったくもって、とてつもなく広い。わたしたちが冥王星にたどり着くころには、太陽から遠く離れすぎて、あの暖かで、肌を小麦色に焼き、活気をもたらす麗しいお日様は、ピンの頭ほどのサイズになっている。ちょっと大きめの明るい星といったところだ。


【『人類が知っていることすべての短い歴史』ビル・ブライソン/楡井浩一訳(NHK出版、2006年)】


 これ凄いよね。ゲゲッ、そんなに大きかったのかよ。じゃあ、宇宙人なんか来られるわけねーだろーよ、ってな具合。地球がえんどう豆ってことは、東京は塵(ちり)程度の大きさで、その中で生きている私に至っては存在しないも同然だよ。宇宙の大きさは、あくせく生きることの馬鹿馬鹿しさを教えてくれる。


 しかしながら実際は、えんどう豆の上で戦争を行い、貧困が拡大され、自然が破壊されている。私が神様だったら、踏み潰しているかも知れない。「そんな小さな世界で争っていてどうするのだ」と。


「我々はえんどう豆の住人に過ぎない」――ウム、素晴らしい思想だ。早速、これを広めることにしよう。私は今日から「えんどう豆教」の教祖だ。来れ、信者よ!

人類が知っていることすべての短い歴史(上) (新潮文庫) 人類が知っていることすべての短い歴史(下) (新潮文庫)

里奈子里奈子 2008/09/23 14:02 >私が神様だったら、踏み潰しているかも知れない

いや、踏み潰していることでしょう!きっと!!

sessendosessendo 2008/09/23 14:25 早速、信者が一人現れたようだ。別に構わないよ、額(ぬか)づいても(笑)。

細かい話かもですが細かい話かもですが 2016/01/16 23:29 原書を確かめてないのですが・・・
>地球の直系が豌豆豆(えんどうまめ)くらいになる縮尺で太陽系を作図すると、木星は300メートル先、冥王星は2.4キロ先になる(しかも大きさはバクテリア程度だから、どのみち見ることができない)。

 地球の直径の6分の1程度だそうなので
地球=えんどう豆とすると、冥王星がバクテリアの大きさだというのは
ちょっと間違いでは?
 参考までに、最新の観測による冥王星と地球の大きさ比較
http://www.astroarts.co.jp/news/2015/07/14pluto/index-j.shtml

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